D-Arthur (アーサー)構想 パート1 2005.1.29
製品化されている国内トイガンに於いて、S&W社の「M29 44MAG」とルガー社の「レッドホーク 44MAG」はトイガン・リボルバーとしては最大口径の銃であった。それら大口径リボルバーをベースにした「最大級のカスタム・リボルバー」という位置づけで製作されたのが「M29シーザー」と「レッドホーク・カイザー」だった。どちらも最上級カスタム・リボルバーとして単に大口径というだけでなく、最上級という言葉に相応しい構造と特質を兼ね備えたBisonの持てる技術の全てを注ぎ込んだまさにBisonを代表するカスタムである。
しかし今日、その44口径を上回る大口径リボルバーがトイガン製品として出現した。S&W社製M500である。
そもそも大口径の44マグ・リボルバーは日本人の手のサイズには大きすぎる。日本人にはM19のようなKフレームがジャストなサイズであると意義を唱える私は永きに渡りKフレームにこだわってきた。しかしお客様のニーズにお答えするべくM29カスタムを手がけていく内に大口径リボルバーでもフレーム形状をいじってやれば違和感なく日本人の手のサイズにフィットするという事を学んだ。それを教えてくれたのがシーザー&カイザーであった。今回発売されるM500も実際に手にとれば、それは明らかに日本人には大きすぎるリボルバーである事は一目瞭然だが、それは同時に「料理する楽しみ」を私に与えてくれる格好の素材であり「早く釣り上げてくれよ」とM500がつぶやいている様にさえ私には見えてくる。
「M29シーザー」はPPCカスタムの流れを組むブレイク・カスタムとして、また「カイザー」はマッド・マックスに出てくるソードオフ・ショットガンを思わせるシルエットで個性を演出した。さて、こいつはどんなカスタムに仕上げようか・・・。
シーザーとカイザーの個性を受け継ぎながらも独自な個性で自分の存在をしっかりとアピールするカスタム。その答えがこれだ。M500をベースとした新しいBison・カスタム・リボルバー「D-Arthur」。そのフォルムをまずご覧下さい。
D-Arthur 10.5インチ
若き日のスティ-ブ・マックイーン演じる主人公ランダルの愛用銃「ランダル・カスタム」(ウインチャスター銃のバレルとストックを切り詰めた銃)を彷彿(ほうふつ)とさせる風貌は、ベースのM500のグリップラインを全く無視して設計され、その実現にはインナーフレームの加工までも要求される。更にグリップラインだけでなくシリンダー以外のM500のノーマルラインは一切残さない。また、リヤサイトにはカイザーでは残念ながら見送った「タンジェント・サイト」を今回是非に採用したいとも思っている。
10.5インチのロングバレルで、このカスタムの大きな特徴はブレイクではない「キック・アップ」という他に例をみない方式でリロードを行う所にある。そのアクションはアウターバレルの中に納まっているブルバレル(丸バレル)ごとシリンダーが前方に移動すると同時に、上方向にシリンダーが跳ね上がるといったもので、それがゆえにフレームトップは存在しないし発射バレルも通常より下の位置にセットされるマテバのような下段発射構造が用いられる。
なぜブレイクにしないのかと疑問に思う人もいると思うが、それはこのカスタムのコンセプトがブレイク以外の所にあるからだ。
キックアップ・シリンダー
「カイザー」には構想の段階で3つのコンセプトがあった。1つ目はライフル・スコープを装着しスナイパーとしても使えるダブル・バレルモデル。2つ目はオープン・フレームのブレイク・オープンモデル。そして最後にロケット・ランチャーを装着可能なランチャーモデル。その内、2つ目までは既にモデルアップする事が出来た。しかし3つ目の構想はランチャーの重量を考えるとブレイクモデルには強度的に問題が生じる。かと言ってスイングアウト方式のダブル・バレルモデルだとヨークの逃げがどうしても側面のデザインを壊してしまう。またどちらのモデルにしてもカイザーの基本スタイルではランチャーが大きすぎて違和感が出てしまい、シルエットを無視して強引に付けようと思えばそれは可能なのだが、私的にどうしてもそれは許す事が出来ずこの3つ目の構想は取り残されていた。
しかしタナカからレッドホークシリンダーよりも遥かにデカい50口径の「M500」が出ることになった。その写真を見た私は、これをベースにすれば残された構想をクリヤする事が出来るのでは・・・。シリンダーがデカい分、全体のシルエットもカイザーよりも一回り大きくなるであろうそれは、違和感なくランチャーを装着出来るのではないだろうか・・・そんなことを考えた。
そう、この「D-Arthur」はカイザーの残された3つ目の構想を実現する事こそが最大の課題であり、ブレイクでは無くキックアップ方式なる物を用いているのもその為である。シリンダー部のみのブレイクの様なそれは、ランチャーを装着出来る十分な強度とスペースをフレームからバレル部分にかけて残している。また、シリンダーは上に跳ね上がる為、サイドのデザインを邪魔することも無い。「ランチャーを装着出来るリボルバー」、それこそがArthurにつけられたD(危険思考)の意味するところである。
ランチャー装着に於いては、標準で付いているアンダーバレルを外し、ランチャー装着用のバレルアンダーに交換する訳だが、イラストを見てお解かりの様に、ランチャーを装着するとかなりトップヘビーとなる。フレームトップをカットする分、トリガーガード廻りでしっかりとフレーム硬度を高めてやる必要があり、ウインチェスター銃のようなトリガーガードは、まるっきし伊達なデザインではなく、そういった強度を十分に考えた上でのデザイン設計として取り入れている。このウインチェスター風トリガーガードは、デザイン面に於いても新しい感覚と古い感覚とを旨く融合し、シリンダー銃の持っているノスタルジックな独特な雰囲気を存分に引き出してくれている。とは言ってもランチャー装着時は流石にその雰囲気も損なわれる訳だが、それはそれで、その変貌ぶりが面白いのではないだろうか。
ロケット・ランチャー装着
ロケット・ランチャーは今まで私が扱った事が無いアイテムで、それをリボルバーにどの様に装着させるかが今回私に課せられる大きな課題であり、上の装着イラストは叩き台のような物で実際には形として整形していく段階で最もベストなデザイン設計を見つけ出していく作業になるだろう。このランチャー装着を考えなければ、下のイラストの様な6.5インチ(もしくは8.5インチ) ブレイク・モデルも「B-Arthur」のネーミングでバリエーションとして造ってみたいと思う。今までに造ったブレイク2丁(M29・シーザー&ブレイク・カイザー)よりも更に均整のとれた個性をしっかりと主張したブレイク・カスタムになりそうな感じがする。
6.5インチ ブレイク・モデル 「B-Arthur」



