アメリカと宗教
![]() | アメリカと宗教―保守化と政治化のゆくえ (中公新書) 堀内 一史 中央公論新社 2010-10 売り上げランキング : 20352 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
著者がこのテーマで執筆依頼を受けたのが2007年4月だったらしい。つまり順当にいけばブッシュ政権の総括として宗教右派の問題を浮かび上がらせることができたのだろうが、例によって雑事で多忙を極める大学教授にあっては宗教色が薄れたオバマ政権中期までずれこんでしまった耀だ。ただ、大学の講義ノートに基づいているとのことで、状況の変化には対処してきたと見える。麗澤大学一筋の著者だが、このモラロジー研究所っていうのも宗教だよね。で、宗教右派というのが当時のキーワードであって、その線は変わらないものの、宗教左派という勢力にも着目している。保守派=キリスト教右派、リベラル=キリスト教左派という構図は必ずしも当てはまらないのだが、保守もリベラルも多数派はプロテスタントである以上、宗教右派があるなら宗教左派があって然るべきであろう。イスラエルを支持するか否か、イラク戦争を支持するか否かといったところで、両者の違いが顕著なのだそうだが、この辺はユダヤ教徒も一枚岩ではない。
★★
犯罪者の自伝を読む
![]() | 犯罪者の自伝を読む ピエール・リヴィエールから永山則夫まで (平凡社新書) 小倉 孝誠 平凡社 2010-09-16 売り上げランキング : 131551 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
平凡社新書は上野俊哉の「思想家の自伝を読む」とセットにしているのかな。上野はカルスタだが、こちらの著者は仏文の人らしく。材料はフランスに偏っている。最後の永山則夫は本当に取って付けた感じだが、それも実際は佐川一政の方が記述は多い。永山と佐川の自伝は殺人犯自身による自伝的小説ということで、世界的にも稀有なケースなのだろうが、永山が死刑を処された一方で、佐川が無罪放免というのも、その犯した事実と照らし合わせても納得がいかない部分はある。犯行現場が日本でない以上、フランスの司法判断に日本は同調するより外ないのだが、フランスで佐川以上に騒がれたのが、ルイ・アルチュセールよる妻殺害か。これも佐川同様免訴となったらしいが、日本ではこうした著名人による殺人はほとんど例がないな。芸能人だと克美しげるとか野球だと元ロッテのエースなどがいるが、学術、政治界だと小者レベルはいるのだろうが、全国区は知らん。猟奇的殺人を犯して自伝を書けば、ベストセラー作家になえるという認識を持つ輩が出てきたら困るのだが。
★★
ルポ貧困大国アメリカⅡ
![]() | ルポ 貧困大国アメリカ II (岩波新書) 堤 未果 岩波書店 2010-01-21 売り上げランキング : 3006 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
年末になってようやく読むのもなんだけど、前作よりはすっきりした印象。岩波新書で同タイトルのルポ第2弾で出した人ってそういないかと思うが、扶桑社新書からも出すは、PHPからはコミック版とまあ節操がないというか。これも湯浅ナントカ並の貧困ビジネスか。冷泉の批判書を先に読んでしまったけど、アマゾンは信者が巣食っているのか、堤のは絶賛一色、冷泉は批判一色だった。別に岩波とか反米とか或いは川田龍平とかと関係なく、堤の仕事に意義を感じている人が多いんだな。結局、ルポなんてものは初めに結論ありきで、如何様にも書ける訳で、堤みたいに、アメリカ人は皆、貧困で学資ローンに追われているとも書けるし、冷泉みたいに、アメリカの奨学金は多種多様だから、多くは学位をとれば返済可能とも書ける訳だ。実際、日本でも育英会の奨学金返済を抱えている人は相当数に上る訳で、それがアメリカみたいに金融屋に債権が売られるなんてことはないにしても、返済不能に陥っている人が膨大だから日本は貧困大国かというとそれもまた違和感があろう。何百万も借金できる人が貧困というのは世界の常識とは言えないし、スーパーのレジ打ちでも職があって、大学も出て自家用車もあるとなると、貧困でもいいからアメリカを目指そうという世界の人が多くなるのも当たり前。
★★
イチローVS松井秀喜
![]() | イチローvs松井秀喜~相容れぬ2人の生き様~ (小学館101新書) 古内 義明 小学館 2010-04-01 売り上げランキング : 338116 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
この二人は仲が良くないということ自体知らなかったのだが、年齢も一つしか違わないのか。タイプが違うからライバル関係にはならないのだろうが、イチローの安打記録はアメリカでは大して話題になっていないみたいだし、腐っても人気球団にいた松井の方がアメリカでは名が売れているのかな。そもそも同じ日本人というだけで、他チームの選手と仲良く付き合うものなのだろうか。日本だったら東京などでゲームが重なることもあろうが、アメリカで同じ街に来るというのは対戦する時ぐらいではないのかな。対戦チームの選手と試合後に食事に行ったりしたら、ファンから変な目でで見られそうだが、デーゲームならまだしも、ナイターだと試合終わって、風呂入って、着替えてなんてしていたら、すぐ午前様になりそうな感じ。日本だとそこから食事して飲みに行くことは普通にあるみたいだけど、アメリカだとどうだろう。ステロイドでも打っていたら、オールで遊べそうだけど。
★
革命とナショナリズム
![]() | 革命とナショナリズム――1925-1945〈シリーズ 中国近現代史 3〉 (岩波新書) 石川 禎浩 岩波書店 2010-10-21 売り上げランキング : 15048 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
岩波新書の「シリーズ 中国近現代史」第3巻。川島真の第2巻より早く出た。こういうのは時系列で読みたい読者が多いかと思うが、執筆陣の中で群を抜く忙しい人だから仕方が無いか。ブログを見るとほとんど毎週海外出張みたいな感じだし。授業はどうしてんだろう。ということで、一気に日中戦争の時代まで進んでしまうのだが、一番「歴史認識」が問われるこの巻の著者だけが読んだことが無い人だった。著書は岩波の「中国共産党成立史」一冊か。たぶん「正しい歴史認識」の人なのだろう。もちろん、盧溝橋は中国側の発砲とかにはしていないし、南京大虐殺もしかkりあるのだけど、不毛な数字論争には触れず、南京占領を担った部隊が精鋭ではない程度の低い連中の寄せ集めだったとしているのは珍しい。まるでソ連の満洲侵攻と同じ理屈なのだが、当時の日本軍でそんな兵隊ヤクザみたいな部隊があったのか。たしかにグーニャンがどうのこうのとか言ってる奴も松岡環のシナリオ通りに証言する奴も兵隊としての資質は疑うものがあるのだが、中国みたいに兵隊への褒美が占領地での狼藉の許可なんていう習慣はなかったろう。あれは文化程度の低い連中のやったこととするのは何か中国的な感じもするのだが。関係ないけど、この本の陳独秀の写真は黒人にしか見えないのだが、こんな顔の人だったかな。
★★
中国の地下経済
![]() | 中国の地下経済 (文春新書) 富坂 聰 文藝春秋 2010-09 売り上げランキング : 9103 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
中国ものライターも最近は競争が激しくなって、より専門テーマが細分化する傾向にあるが、地下経済ものはこの著者が得意としているもの。とは言っても別に麻薬とか人身売買の話ではなく、実は真っ当なビジネスにみえるものも、そのほとんどが地下経済と繋がっている。中国で無数にある私営企業、商店、レストラン、これらは一体どこから資金調達をして設立されたのであろうか。外貨持ち出しが制限される中、どうやって銀座でブランドものあさりができるのだろうか。そのからくりに地下銀行が関わっていることは常識なのだが、それは日本でイメージするところの闇金とか町金とかとは様相が違う。銀行が果たしていない役割を地下銀行が補っている訳だ。その意味では国営、官営、外資以外はみな地下経済とも言えるのだが、資金の流れを当局が把握できない以上、税金が収められることもない。高級タバコが、貨幣として流通しているということが記述されているのだ、現代アートに付く天文学的値段やビンテージ茶葉、希少な切手などもその流れに組み込まれている。そして銀座で買われたブランド品も例外ではないのだが、こうしたパチンコ型市場は表の統計には現れてこないから、中国の実体経済は表向き統計より大きいのかもしれないし、或いは小さいという可能性もある。労働人口の多くがインフォーマルセクターに属していることが「第3世界」の条件なら、中国は現在も第3世界であると言えなくはない。ただ、インフォーマルセクターで得られた資金が投資として海外に流出する割合が大きいことは、第3世界の例外でも第一世界の例外でもある。
★★★
NYビジネスマンはみんな日本人のマネをしている
![]() | NYビジネスマンはみんな日本人のマネをしている (講談社プラスアルファ新書) マックス 桐島 講談社 2010-09-22 売り上げランキング : 66675 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
ハリウッドに続いて今度はNYビジネスマンか。デュランなんとかはもう3冊目を出したみたいだし、こういう在外日本人の国粋ものは売れるとまではいかなくとも手堅いのかねえ。まあ+@新書でも在英の日本人が出したイギリス礼賛日本人蔑視の分は1冊で終わった感じだから、昔と違って、上から目線の日本批判よりも、日本礼賛の方が売れる様だ。「国家の品格」がその嚆矢ではないのだが、新書は何か1冊当たると、雨後のタケノコの如く各社揃い踏みだから、当分はこの手のものが出回ることになるのだろう。まあ外人とか在外日本人なんて連中が日本の日本人に優越感を持っていられる時代は過ぎたということで、地上の楽園だとか、ハエ一匹いないとかアメリカンドリームだとか、ゆりかごから墓場までなんてものが実際は丸でウソだったり、大したことがないものだってことが分かってしまったので、その牙城は北欧に多少残っているくらいだろう。北欧信者もそのうち瓦解するかとは思うけど。この日本人有数のハリウッド・プロデューサーがどんなもんなのか知らんし、そもそも日本人のハリウッド・プロデューサーが何人いるのか分からんのだが、フランクだのスコットだのローズだのといった自分の知人がこう言ってたなんてものを根拠にしていては、どんな仮説も定説になってしまうんじゃないかな。日本人はみんな韓国人のマネをしているとか、コンゴ人はみんな中国人に夢中とか。まあそういうストーリーを作って、関係所管からカネを引き出すのがハリウッド・プロデューサーの仕事なんだろうけど。
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ルポ電子書籍大国アメリカ
![]() | ルポ 電子書籍大国アメリカ (アスキー新書) 大原 ケイ アスキー・メディアワークス 2010-09-09 売り上げランキング : 13431 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
これも新書の定石通りのタイトルパクリだが、「ルポ」からパクってるんだから大したもんだ。貧困大国が電子書籍大国に化けた訳だが、米国在住の業界人である著者は賛成派というかアメリカでは、もはや賛成反対を言っている時代ではない様だ。アスキーもその社質から言えば、電子に入れ替わるのが筋なんだろうが、日本ではその試みが一度失敗に終わっているだけに、各社様子見のところはあるだろう。集英社などは新書でグーグルに戦いを挑んだ人の本を出したりしているのだが、グーグルなり、アマゾンなり、アップルなりが標準化を握ることに対する抜き差しがたい不信感もその背景にある様だ。村上龍がその尖兵となるべく、記者会見した矢先に案の定、中国人が勝手に村上春樹の海賊版を勝手に出展して利益を得ていたことが分かり、アップルのこととはいえ、勝手に出展することがないと啓蒙して歩いていたグーグル日本法人は大慌てだろうが、たとえアップルとアマゾンが対策を講じたとしても、中国のサイトでやられたら、誰も手出しは出来ない訳で、事実、中国とか韓国は音楽、映画のダウンロードがほぼ野放しである以上、電子書籍も同じ道を辿ると見るのが妥当な線だろう。対抗策として劉暁波の本をどんどん放流するしかないか。
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北の後継者キム・ジョンウン
![]() | 北の後継者キムジョンウン (中公新書ラクレ) 藤本 健二 中央公論新社 2010-10 売り上げランキング : 30703 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
出すとは思っていたけど、早いな。さすがに聞き書きの新書はタイムリーだけど、あらかじめ予定原稿を作っていたのかもしれない。この人もフジサンケイとの契約が切れたのか日テレ系に移籍したけど、今回も中公だからグループか。公安の謝礼と印税で暮らしていると前に書いていたけど、それで続いているのかな。店でも出して、金王朝宮廷料理コースとかやれば、結構流行そうだけど、さすがにそうしたら総連も黙っていないか。ただ、生活の為に本は出して、テレビにも出るけど、それ以上の行為は自粛している感じもする。あの変装だからバラエティ向きであるし、テリー伊藤辺りから声もかかっているんだろうが、料理人気質からなのか、将軍に対する敬愛は未だ続いていて、必要以上に貶めることは慎んでいる風に思える。日本唯一の北朝鮮現役軍人亡命者だった男は色々と問題を起こした挙句、テリー主宰の金正日そっくりさん大会の審査員などもしたのだが。結局、何かの事件で捕まって自殺という最期を迎えた。将来、日本と北の国交が樹立され、総書記となったジョンウンと著者が再会する日が来るかどうか分からんが、韓国人が日本の右翼団体の構成員になることが不思議でない様に、日本人が朝鮮労働党員幹部になっていてもおかしくはないと思う。ヤクザの世界もそうだろうが、そこに居場所を与えてやれば、忠誠を尽くすのが人間の性というものだろう。
★★
ショパン
![]() | ショパン――花束の中に隠された大砲 (岩波ジュニア新書) 崔 善愛 岩波書店 2010-09-18 売り上げランキング : 21224 Amazonで詳しく見る by G-Tools |
この著者の本は前にも読んだのだが、指紋押捺拒否の音楽学生である自分や戦後に留学生として来日した父親をショパンに準えるというのが異様な感じがした。岩波はそうは思わなかった様で、ジュニア新書のショパン評伝を頼んだみたいだが、フランス人の父親の下にポーランドに生まれたショパンがポーランドの愛国者となったのに対し、日本で韓国人(在日ではなく留学生)の父親の下に生まれ育った著者は韓国の愛国者かも知らんが、日本は憎悪の対象だからショパンとは全く逆ではないか。父親が日本統治時代に生まれ朝鮮戦争で苦労したのは確かだとしても、1950年代になって来日した父親はショパンの様に故国を失った訳ではないどころか、独立した故国を捨て「侵略者」の下に亡命していて、名前を韓国読みしなかったとNHKを訴える宣教師ではフランスに帰化したショパンとは全く逆ではないか。ポーランド人がショパンを愛している証左として、ショパンがショパニスキーという名前だったら良いのにと言っているとしているのだが、韓国語など知らない日本人に韓国読みで名前を呼ぶことを強要するお父さんとはえらい違いではないか。大体、ポーランドが歴史上、一方的に蹂躙され続けた国だと考えること自体が間違っているのだが、それは一度も他国を侵略したことがない国とか言っておきながら、対馬征伐だの九州征伐だのを誇ったり、ベトナムに対しては健忘症になっている著者の祖国に準えているのかな。
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