渡邉理佐 × 小林由依
学生パロ
理 )はぁ…
夜10時過ぎ、1人ぼっちの塾の帰り道
街灯がついているとはいえ辺りは暗くて
足早に家へと向かう
まぁ、どうせ帰っても1人なんだけど…
ポツリと雨粒のようなものを感じた頃
ちょうど自宅のマンションに着いた
理 )よかった…
傘持ってなかったし。
そのままエントランスに入ろうとしたのに
…ん?
エントランスの前、ちょっとだけ屋根のあるスペースに
見慣れたジャージを着た女の子が1人
私と同じ学校なんだろう
なにか手に持っていると思えばタバコで
耳にはピアスも光っている
こういうのは関わらない方がいいと思いながらも
このマンションで見かけたことのない顔で
思わず声をかけてしまった
理 )ねぇ、君
由 )ん?
理 )同じ学校だよね
家、ここなの?
由 )学校…?あー、
いや、別に…
私のブレザーの校章に気づいたのか曖昧に頷くと
面倒臭そうにチラッと視線を向けられる
こんな対応なら話しかけなきゃ良かった
雨だから困ってるのかもって心配してあげたのに
理 )誰か待ってるの?
急に話しかけてごめん
返事はない
一言でも返してくれればいいのに、感じ悪い
だから背を向けて帰ろうとしたのに
由 )誰も待ってない
理 )え?
意外な返事が来て
また君の方を振り向いてしまう
由 )だから、ただの雨宿り
改めてよく見ればジャージの色は一つ下の学年色で
鋭く見えた目も寂しさのような、
悲しみのような絶妙な色を含んでいたから
そっか、と突き放す訳にもいかなくて
理 )待ってて、私家ここで傘貸せるから
それで帰りな
由 )いらない
理 )え?
由 )別に早く帰る理由もないし
雨止むまでここいる
理 )寒いよ…風邪引いちゃう
風向きが変わって
この短い屋根では雨を凌ぎ切れない
第一、ブレザーを着ても肌寒いこの気温に
薄着のこの子が耐えられるとは思わない
由 )大丈夫、慣れてるから
理 )お母さんとか、心配しちゃうよ
由 )それも平気、どうせまだいないし
私が帰ってなくても気づかないよ
そう言うとその子は自嘲気味に笑って
私から視線を背けた
そのままタバコに火をつけようとするから
理 )だめ、身体に悪いよ
お節介かな、と思いながらもなんとか宥める
由 )あなたに関係なくない?
たしかに、関係ない
そもそも最初は無視して通り過ぎようとしていたのに
何故だかこの子が気になってしまった
さっきからの話も気になるし
帰っても親がいないのは私と同じ
放っておけなかった
だからこの子の問いかけは聞こえないふりをして、
理 )私も親帰ってこないんだけどさ
家、来る?
雨止むまで入れてあげるよ
由 )…どうしてもって言うんなら
由 )お邪魔します
聞こえるか聞こえないかギリギリの声で呟いて
君は履き潰されたスニーカーを揃えて入ってきた
意外と丁寧じゃん
理 )夜ご飯は?
由 )もう食べた
理 )そっか
ソファでもどこでもいいから座ってて
ぼんやりと立ち尽くしてた君をソファに誘導して
私はキッチンに向かう
でも私だけというのも悪いような気がして
あの子の分もスープを温める
食卓に持って行って勧めれば
案外あっさり受け入れてくれた
由 )いただきます
ちゃんと手を合わせて食べ始める君
明るいところで見ると顔も整っていて
思わずまじまじと見つめる
由 )何?
態度に似合わず華奢な身体と白い肌
耳に響く声も尖りきれていなくてどこか心地良い
理 )いや、なんも。
ねぇ、名前教えてよ
由 )小林由依
理 )由依ちゃんか、
馴れ馴れしい、と小声で吐き捨てて
由依ちゃんはスープをすする
理 )私は渡邉理佐、2年生
制服だけだと学年が分からなかったかな
と思って補足したのに
由 )別に聞いてないけど
タメ口なのは変わらないらしい
年齢の問題じゃないのか
それから、しつこく話しかけていたら
ポツポツと話してくれた
由依ちゃんの親は仕事で帰ってこない日が多く
そもそもそんなに愛されてない、と
私と一緒
話してみるとそんなに悪い子じゃなさそうで
ほんの少しだけ零してくれた笑顔は優しかった
食べ終わっても雨は止む気配がなく
もし止んだとしてももう外に出るには遅すぎる時間
理 )明日休みだし泊まっていけば?
もう外出れないでしょ
由 )今からでも帰れるけど
理 )危ないよ、暗いし
由 )そんなに言うなら
渋々といった感じで由依ちゃんが頷いて
私は久しぶりに人の気配がする家で眠った
朝が来て、由依ちゃんはすぐに帰って行った
一夜限りの変な出来事はこれで終わり
学年が違うからもう関わることもない
そう思ってたのに…