渡邉理佐 × 小林由依
大学生パロ






由依side





目の前にある大量のジョッキに
飛び交う品のないコール

こういう場所嫌いなのに…


友達に誘われて来た他大学のインカレ
何サークルに行くのか尋ねても
頑なに教えてくれなくて違和感はあった


でもどうしてもと言われて
仕方なく着いてきてあげたけど、
来てみれば案の定飲みサーで


最悪。
大人数は好きじゃない
第一、ついこの間二十歳になったばかりの私たちに
いきなりこんなサークルは背伸びしすぎ、、だと思う


誘ってきた当の本人は、
このサークルに入っている
バイト先の先輩がお目当てらしく
飄々と周りに馴染んで私の隣から消えて行った


なら私のこと連れてこなくてもよかったじゃん、
心の中で悪態をついても
来ちゃった事実は変えられない


知り合いがいなくて上手く馴染めない中
勧められるままお酒を飲む


気づけば年上っぽい男の人に囲まれて
どんどんお酒を渡される
今にも肩が触れそうな距離感がすごく不快


もう既に少し気持ち悪いような気もするけど
めいっぱい飲んだこともない私は
自分のキャパも分からないし、

場を盛り下げないために
次から次へと渡されるお酒を精一杯処理する


苦しくなってきてペースを落とすと
見計らったように目の前の男がコールを始める


もう無理
帰りたい
でも頼れる人もいないから
こんな所二度と来るもんかと誓って
涙目でグラスを持ち上げる


理「だめだめ、
   かわいい子いじめないの」

隣の卓から女の人が歩いてきて私のグラスを奪うと
その人は通路に立ったまま残りを一気に飲み干した

その飲みっぷりに歓声があがる

理「名前なんて言うの?」

由「小林由依、です、」

理「初めて聞いた…インカレの子?」

由「はい、」

理「勧められても断っていいんだよ?」

そう私に笑いかけると
その人は元いた席に戻ってしまった


あまりにあっという間でお礼も言えなくて
ただその後ろ姿を目で追う

綺麗な長めのショートボブに
女性にしては少し高めの背
鋭く光るピアスと対照的に優しそうな目
そして整いすぎた顔

部外者から見ても
明らかに纏う空気が違うのが分かる

今の騒ぎのせいで
目の前の男の人たちから守ろうと近づいてきてくれた
優しそうな内部生らしき女の人に尋ねてみる


由「あの人って、、」

女「あー、あれはね、」

親切に教えてもらったことによると、
あの人は理佐さんという名前で1つ上の3年生
お酒も強いし、優しいし、ガードも固いしで
このサークルの高嶺の花的な存在らしい


由「理佐さん、、」

優しくされたせいか酔いのせいか
理佐さんのことがやけに気になってしまって
元々男の人たちに興味のない私は
横目で理佐さんの様子を伺う

ただ卓の盛り上がりは衰えていなくて
相変わらず勧められるままお酒を飲み続けた





意識が危うくなってきた頃
お開きの空気が流れて
私たちはダラダラと店を出た

冷たい外の空気が心地よくて
少し気分が和らぐ

深く息を吸い込んでいると
理佐さんが寄ってきて

理「二次会行かないで帰るんだよ」
  「絶対行っちゃダメだからね」

と周りに気づかれないように耳打ちしてきて


由「はい」

なんて、朧気に頷いた気がした
















由「ん……」

理「起きた?」

優しい声に目を開くと
そこは二次会の会場であろう居酒屋
もう帰ろうとしたところまで覚えているけれど
そこからの記憶はない

それに、どうやら
理佐さんの肩にもたれて眠ってしまっていたようだった

申し訳ない反面、
理佐さんに近付けたことに嬉しくなる

でも、やっぱり申し訳なくて

由「肩、ごめんなさい」

理「ううん、大丈夫
   それよりさ、来ちゃダメって言ったじゃん」

由「あ…」

理「酔い潰れて運ばれちゃってたよ」

由「ごめんなさい…」

理佐さんの悲しそうな顔を目の前に
とりあえず謝ることしか出来ない

なんとなく気まずくなって周りを見渡してみる

暗い店内
先程よりも人数が減って距離も近い
男の人たちは品定めするように視線を動かしては
こそこそと内輪で話している

嫌な雰囲気、、

理佐さんはこれを知ってたから
帰らせようとしてくれていたのかも

でも、酔ってそれを踏みにじっちゃった


ふと、視界の端に私を誘った友達を見つけた
その横には男の人がいて
手を引かれながら店から出て行った

よく見ると少しづつ店を抜け出すペアがいて
ボーッとしていた私の目の前にも
1つ前のお店で隣の席だった人が躙り寄って来る

嫌だ。
こんな空気に呑まれてたまるかと
膝に置いた手をギュッと固く握った


理「ほら、こんなところ来ない方がいいでしょ?」

由「えっ…?」

突然の優しい声
気づけば隣に座っていた理佐さんとの距離が詰まっていて
そのまま耳元でそっと囁かれる

理「抜け出すよ」

由「…っ」

返事をする間も与えられず
手を引かれて2人でお店から走り出た


私の左手を包む少し冷たくて大きな手が嬉しくて
回らない足で必死に着いていく


しばらくして、開けた公園に着くと
理佐さんは私の手を離してベンチに座らせると
どこかへ歩き出す


由「あ、あの、」

理「水買ってくるだけだから、大人しくしてて」

由「…はい」

言われた通り行儀良くベンチに座っていると
ペットボトルを持った理佐さんが戻ってきて


理「顔赤っ…
   まあ、いっぱい飲んでたしね」

苦笑いしながら水を渡してくれた

一気に半分程中身を煽れば
お水飲めてえらいね、なんて髪を撫でてくるから
子供扱いされてるみたいで気に食わなくて
そっぽを向いて続きを飲む


理「由依ちゃんは何回生?」

理佐さんは隣に座り込んできて
私の顔を覗き込むように尋ねる


由「2回生です」

理「じゃあ一個下か」

理「さっき言い忘れてたけど、
   私、渡邉理佐っていうの。3回生。」

由「理佐さん、、」

名前はさっき聞いちゃったけど
別にそれを伝えることもなく
初見のように振る舞う


理「もう酔い覚めた?」

由「はい、だいぶ、、
   ありがとうございました」

理「よかった、
   由依ちゃんは今日一人で来たの?」

由「いや、友達と来たんですけど、帰っちゃって」

理「そっか、、
   もう終電ないけど、一人で帰れる?」

由「ぁ、、」

どうしてもと頼まれて引き摺られてきたから
住んでいるエリアからはかなり離れていて
タクシーで帰ろうにもそんなにお金に余裕がない

言い淀んでいる私を見て
理佐さんは目尻で小さく笑うと


理「私の家近くだからおいでよ」

なんて優しく誘ってくれる
好意に甘えたいけど
ほんのちょっと申し訳なくて


由「でも、」

理「あ、安心して?
   手出そうとかそういうのじゃないから」

由「いや、」

別にそういう心配はしてないのに
理佐さんは急に慌てふためいて


理「ほんとに違うから大丈夫だよ?
   あ、でも、タイプじゃないとか
   そういう訳じゃなくて、」

理「とにかく、何もしないから!」

さっきまで完璧に見えた理佐さんの
意外な焦り様が可愛くて


由「理佐さんにだったら何されてもいいです」

理「え、?」


つい口に出してしまった

ほんのちょっとの期待と
ほんのちょっとの後悔が揺れる

でもこのまま今日を越えたら
きっと理佐さんと会うことはもうなくなっちゃうから、
酔いのせいにして、言葉を続ける


由「好きになっちゃいました、理佐さんのこと」


恥ずかしくて理佐さんの顔を見れない
もし振られたら奮発してタクシーで帰ろう
そう心の中で決意した時

理「私も、、」

理「私も、由依ちゃんが可愛くて」

理「なんか守ってあげたいな、って思ったの」

理「守ってあげたいというか、
  取られたくないというか、、」

思いもよらない言葉が聞こえてきて
思わず理佐さんの方を向く

理「私も好きだよ、由依ちゃんのこと」

そう言った理佐さんと目が合って
顔が熱を持ち始める

由「付き合って、、欲しいです」

理「いいよ、よろしくお願いします」

そのまま体を引き寄せられて
優しく抱きしめられる

理「顔、赤いね」

由「酔いのせいです」

恥ずかしくて、誤魔化すように呟いて
理佐さんの腕の中から逃げ出そうともがく

でも華奢な割にすごい力で捕まえられていて
結局顔を隠そうと俯いたまま
理佐さんに大人しく抱きしめられる

しばらくそうしていたけれど
公園の横を通る車の音で私たちは我に返って

理「じゃあ帰ろっか」

由「、、はい」

手を引かれるまま
理佐さんの家へ向かう

ここまで走ってきた時とは違ってちゃんと恋人繋ぎで、
夜の気温で冷めきったはずの手もどこか暖かい

理「明日起きてさ、
   告白も酔ってたから覚えてないです、
   とか言わないでよね」

いたずらっぽく微笑む理佐さんに

由「忘れちゃってるかもですね、」

なんて返しながら、
夜の街を2人で1歩ずつ歩いた






fin