渡邉理佐 × 小林由依
社会人パロ
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理 )ただいま
返してくれる人は誰もいないこの家
寂しいなんて思わない
むしろ安心する
面倒な大学の人付き合いも、授業も忘れて
やっと休める一人の時間
…なのに最近は、
あなたの柔軟剤の香りが部屋に残っていて
私の時間を乱していく
だから私は煙草を吸う
タバコ臭さで気を紛らわせたくて、、
でも、匂いだけじゃない、
由 )理佐ー?
あーけーて!
ほら来た
インターホンも押さず、
あなたは毎日ドアを叩く
理 ) …開いてる
由 )鍵閉めないと危ないよ?
誰か入ってきちゃうかもだし
お邪魔しますの一言も言わず
余計な心配をしながらあなたはドスドスと入ってくる
理 ) 何しに来たの?
由 ) 何しにって…
理由なく来ちゃダメなの?
理 )うん、ダメ、
あなたに近くにいられたくない
好きだから…
それに、あなたが私に気があるのも気づいてるよ
でも、私は由依に見合う人じゃないから…
あなたにはもっといい人がいる
私の気持ちは知らなくていい
なのに、そう決めたのに、
こんなに毎日押しかけられたら耐えられなくなりそうで、
由 )じゃあ…今日はドラマとご飯のため、かな
昨日のやつ録り忘れちゃって…理佐録画してるよね?
理 )うん、まぁ…
無邪気に笑うあなたの顔は
本当に綺麗で、可愛くて、
本当は帰らせようと思っていたのに
ついつい甘くなってしまう
由 )テレビ借りるねー
私が返事をするのを待たず
由依は勝手にテレビをつけて
床に座り込むと夢中でドラマを見始める
由 )一緒に見ようよ
ここ座って、と言わんばかりに
振り向いて隣の床を叩かれるけれど
理 )いや、いい…
あなたの隣には、座りたくない
…というか、座れない
理 )…床硬いしソファ座れば?
自分の家なのに妙に居心地が悪くなって
私はキッチンへ向かって煙草に火をつける
換気扇に向かって吐き出した煙は
細く立ち上ってすぐに吸い込まれていく
でも匂いだけは
私に絡まって居座り続ける
やっと、いつもの私の家…
由 )あ、また吸ってる
いつの間にかゲームを置いてこっちに来た由依が
私の周りをちょろちょろ動き回る
由 ) そんなに美味しい?
理 )美味しくは…ないよ
由 )じゃあなんで吸ってるの?
あなたの香りをかき消したいから
理 )…なんとなく
由 )…もーらいっ
理 )あ、ちょっと、
止めようと手を伸ばす暇もなく咥えていた煙草を奪われて
あなたはなんの躊躇いもなくそのまま煙草に口をつける
由 )ん…吸えばいいの?
不慣れな由依は手間取っていて
その隙にその手から煙草を奪い取る
理 )由依はダメ…
あなたはこんな物に染まらなくていい
由依が口をつけた煙草を吸い直すことはできなくて
仕方なく灰皿に押し付ける
由 )なんで私はダメなの
理 )うーん…
由依には必要ないから
でも、なにより、
理 )由依、いい匂いだから
こんなの吸ったらもったいない
私はあなたの匂いが好きだから。
1番近くに感じたくなくて、
でも1番近くに感じていたい
そんな香り
由 )理佐だって、
理 )いーの、私は
これが落ち着くから
由依のことを考えなくて済むから
由 )じゃあ、私も吸う
拗ねたような顔で主張されて
理 )なんでよ
由 )だってこの柔軟剤、
理佐が好きって言ってくれたから
ずっと使ってるんだもん
理 )……
昔、そんなこと言ったかもな
由 )でも今は煙草の匂いが好きなんでしょ?
じゃあ私もその匂いになる
理 )何言ってんの
冗談はいいよ、ほら、1本あげるから
臆病な私は逃げてしまう
あなたの思いに応えるのも、
はっきりと拒絶するのも、
どっちもできなくて
由 )…違うし
もう…理佐は鈍いんだから…
なんだか、嫌な予感がする
由 )だから、好きなの!
理佐が好き
なんで気づいてくれないの!
頬を染めた由依が唇を噛んで俯く
気づいてた、ずっと…
でも、
理 )由依は、私じゃなくていいよ
もっといい人いっぱいいるから…
由 )理佐がいいの…!
理 )そんなことない
大学で周り見てみなよ、素敵な人ばっかりだから
特にあなたの周りには、ね
素敵な人には素敵な人が寄ってくるから…
由 )私にとっては理佐が1番なの
理 )いや、
由 )じゃあいいもん
理佐が付き合ってくれるまで
私、誰とも付き合わないからね
…それは困る
私のせいで由依がそんなことになるのは不本意だ
さっきまで恥ずかしそうにしていた由依は
今や弄ぶように私を見据えていて
由 )理佐はいいの?
私が一生独り身でも
理 )あんまりよくない…かも
由 )私は理佐が好きなのになー、
理佐はどうなんだろうな
白々しい声で問いかけられて
やっと覚悟を決める
理 )私も、好き…由依のこと…
由 )…気づいてたよ
やっと言ってくれた
ふふ、と小さく微笑むと
由依は嬉しそうに言葉を続ける
由 )じゃあ、付き合ってくれるの?
理 )うん、私でいいなら…お願いします
もう…やっとだよ、なんて声を上げて
由依はキッチンから走り出て行く
向かった先はリビングで
いそいそとテレビに向かうと先程の続きを見始める
こんな時まで無邪気なところが愛おしい
もう躊躇う必要もなくて
今度こそ由依の隣に座ろうと私も後に続く
理 )あ…
…その前に、ゴミ箱に残りの煙草を箱ごと捨てる
これはもういらないから
私の部屋はあなたの香りでいっぱいになればいい。
もう二度と吸わなくていいことを願って
いい香りのあなたの元へ向かった
私が煙草を吸う理由も、辞める理由も、あなただけ。
fin