今回は尻尾アームの試作第1号からの試作第2号への改善内容を紹介します。

 

試作第1号では3つ改善したい点がありました。

 

改善点1: アームが短くて操作が重い

アームが短いと操作に力が必要になります。適当に長さを決めた結果、短すぎたのです。長くすると体積が増えて3Dプリントのコストが上がるため、短くして節約を図ったのですが、その結果、操作が固くなってしまいました。そこで、小学校で習ったテコの原理を思い出し、支点、力点、作用点について考えます。

 

支点: トレモロを止めているネジの位置。トレモロプレートが楔形状で当たっている部分が支点となります。

 

力点: 通常のアームの場合、アームを持つところが力点です。シンクロナイズドトレモロでアームを使わずにサドルを止めているネジの頭をグイッと引っ張ってアームダウンする技「サドル調整ネジ頭アーミング」の場合、ネジの頭が力点になります。

 

作用点: ここではサドルに弦が乗っている位置を作用点とします。アームダウンすると、作用点が上がり、弦高が上がります。これにより、チョーキング時の音がサチりにくくなる効果もあります。シンクロナイズドトレモロをベタ付けにするかフローティングにするかで弦高調整が変わります(特に指板Rがきつい場合)。

 

ちなみに、作用点にかかる弦の張力は以下のサイトで確認できます。

 09-42の弦の太さで約38.3kg、10-46で約46.5kg、08-38で約31.7kgの張力があります。10-46は08-38に比べて約1.5倍の張力が強いです。アーム操作の力も弦の張力に比例すると考えられます。自分は09-42を使っていますが、10-46にすると操作がさらに重くなると思います。
 アームダウンでは弦の張力が小さくなり音程が下がります。サドルが高いと音程の下がり方が大きくなると思います。スタインバーガーのトランストレムは和音を保ったままアームダウンできるらしいですが、これは何かしらの仕組みで張力の低下を各弦毎に調整可能にしているのでしょう。
 
話が少し逸れましたが、アーム操作の重さは支点から力点までの距離に反比例します。距離が3倍になれば、操作時の重さが1/3になるのです。
 

支点から力点までの距離は以下の通りです。

  • 通常のアーム:約150mm
  • サドル調整ネジ頭アーミング:約32mm
  • 試作第1号:約67mm

「サドル調整ネジ頭アーミング」は通常のアームに対して4.7倍重く、演奏中に利用するにはかなりの力と微妙なコントロールが必要です。尻尾アームでは「サドル調整ネジ頭アーミング」の半分くらいの力ですが、実際に使ってみるともう少し軽い方が良いと感じました。

 

改善点2: 穴の軸がプレートに対して垂直でない

 尻尾アームはトレモロブロックにΦ5mm(または、ユニファイネジのNo.10-32)のネジで取り付けます。当初、ネジの穴はトレモロプレートと垂直だと考えていましたが、実際には約10度傾いていました。

 

試作第1号はヤスリを使って穴を斜めに広げて装着しました。試作第2号以降は穴の軸を初めから斜めにしました。

 

改善点3: 見た目がかっこ悪い

 試作第1号は角ばったデザインでした。この形では優美なストラトキャスターのボディには似合いません。

 

 さて、これらの改善点を踏まえて、試作第2号を作成しました!支点から力点までの距離を延ばし、取り付け穴を斜めに設計、そして曲線的な形状も取り入れました。また、舟形ジャックの丸みを考慮しながらデザインを調整しました。

 しかし、試作第2号もまだしっくりきません。使いにくさが残り、納得のいくものにはなりませんでした。次回は、この試作第2号で見つけた新たな改善点についてご紹介しますので、お楽しみに!