ある港町で
大きな豪華客船が完成し
その船長を選ぶために
7人の選りすぐりの船乗りが集められました
どれも経験を豊富に積み
知識と技量を兼ね備えた者達
誰を船長としても
申し分ありません
しかし、船長とするのは一人
そこで、その豪華客船を作った
船会社の社長が彼らを集め
それぞれに同じ質問をしました
「君達の中から
この豪華客船の船長を選ぶにあたって
一つ質問をさせて欲しい
今、君達はこの豪華客船の船長とする
この豪華客船は今、氷河の中を進んでおり
誤って氷山にぶつかり
船体に大きな穴をあけてしまった
かつてのタイタニック号の様にね
このままでは船は沈んでしまう
しかし、この船には乗客の半分の人数だけの
ボートしかない
つまり残り半分は冷たい海で泳がなくてはいけない
救助が来るまでは5時間以上かかる
しかし、この冷たい海では
1時間ともたないだろう
この船には多くの乗客と
君の家族と恋人
君の部下や仲間
そしてこの国の大統領
そして社長である私が乗っている
さて、君が船長なら誰をボートに乗せる」
船乗りたちはお互いに顔を見合わせて
それぞれ意見を述べました
ある者は家族と恋人は乗せると言いました
家族や恋人を失っては
その先、生きていても意味がないからというのです
またある者は自分の部下や仲間だと言いました
部下や仲間がいなければ
もしも助けが来なかった場合
頼れるものが少なくなるからです
大統領と答えたものは
自分の家族や恋人、仲間など
そういったものを捨ててでも
守らないといけないもっと大きなものがあり
それがこの国だと答えました
乗客だと答えたものは
それが船長の義務だからと答えました
「つまりボートに乗せない者は
犠牲になるということだね」
社長がそう皆に問うと
彼らは互いに
「それは仕方がないことだと思います」とか
「何かを選ぶ時、犠牲はつきものです」とか
「どういった犠牲を払えるかが船長の役割だと思います」と
それらしい答えを述べました
そして社長が
「では、その次に乗せるのは誰だ」と問うと
誰もが社長をボートに乗せるという
答えを選びました
この問題で社長を外せば
受かるはずがない
そう考えたからです
しかし、ある男だけは
最後まで何も言わず黙っていました
社長が不思議そうに彼に意見を求めると
彼は一呼吸おいた後
落ち着いた様子で
社長の目を見て答えました
「私は皆を乗せます」
他の船乗りたちはそれを聞いて笑い
社長も彼の真剣なまなざしを見て
「面白い」と言いました
半分の人数しか乗れないのに
どうやって皆をボートに乗せるというのだ
皆がそう思ったからです
社長がその疑問を彼に問うと
彼は真っすぐに社長の目を見て答えました
「ボートは半分の人数分しかありません
だから残り半分の人達には
冷たい海で泳いでもらいます」
それを聞いて誰かが
「助けが来るのは5時間後で
冷たい海だと1時間ももたないと言われただろう」
と言って笑いながら横やりを入れました
それに対して彼は真っすぐに見た社長の目をそらさず
力強く答えました
「そうですね
だから
30分毎に交代してもらいます
ボートに乗っている人と
泳いでいる人を30分ごとに交代して
それを5時間続けるのです」
他の船乗り達は皆
それを聞いて笑いました
「いいかい
問題は誰を選ぶかということなんだ
そういう方法は実際やるかもしれないが
ここでは誰を犠牲にできるかという
君の船長としての
覚悟を聞いているんじゃないのか
皆を乗せて、出来る限り交代するなんてことは
『当たり前』なんだよ」
他の船乗りがそう言うと
彼は毅然として付け加えました
「当り前の事だけれども
それが出来る人は少ない
皆が少しだけ我慢をすれば
皆が助かるという当たり前のことが出来ず
ついつい探してしまうのは
誰を犠牲にするかということばかりで
分かち合うということや
譲り合うということを忘れてしまう
違いますか
そんな当たり前のことが
こんな緊迫していない状態ですら思い浮かばないなら
実際、船が沈んだ時にできるはずがない
誰かを犠牲にしなければいけないという状況の中で
誰を犠牲にするかを選ぶことよりも
どうすれば
誰も犠牲にしなくてもいい方法を考えることができるのかを
考える方が大事なのではないでしょうか
誰を犠牲にしたって
結局は自分に都合のいい
言い訳をするだけで
犠牲にしたことには変わりないのです
船長として求められるのは
誰かを犠牲にして
その責任を負う覚悟よりも
誰も犠牲にしない方法を作り出せる力だと思います
だから私は皆をボートに乗せ
皆に泳いでもらいます
泳げない人はボートにつかまってでも
泳いでもらいます」
社長が彼の目を見て
「それが君の家族や恋人でもか
彼らにも泳がせるのか
例え泳げないとしても
ボートにつかまらせてでも
泳がせるのか」と問うと
彼は毅然として
「もちろんです
それが私の船長としての覚悟です」と
力強く答えました
そして社長が笑いながら
「それが社長の私でもか」と尋ねた時もまた
彼は変わらず、しかし少し笑って
「もちろんです」と答えました
そしてそれを聞いて
社長も大きな声で笑いました
そして彼を船長として
その船は出港しました
Mr.Children「HERO」
あるところに
いつも重い荷物を背負っているゾウがいました
それは見るからに重そうで
どうして、そんなものを背負っているのかを
仲間のゾウが尋ねても
彼は仕事だからというだけで
それ以上は答えませんでした
その昔、彼の背中にまだ
その重い荷物がなかった頃
彼は力持ちのゾウとして
仲間から認められていました
そして、ある日
その彼の前に一匹のネズミが現れて
彼に言いました
「君の力と僕の頭脳を使って仕事をしないかい」
それはたくさんの荷物を運んで
お金を稼ぐというものでした
ゾウが重い荷物を背負い
世界中の道を知るネズミが
道案内をするというものでした
腕に自信のあったゾウは
快くそれを引き受け
彼らは仕事をしながら世界中を周りました
しかし、彼らの仕事が順調に進みだした頃
彼らの欲もまた大きくなり
それに伴い彼らの仕事も増えて行きました
それはつまりゾウが運ぶ荷物が増えることを意味し
もちろん、ネズミも荷物を運びましたが
ゾウが運ぶ分とは比較にならないほど少なく
ゾウの負担は増す一方でした
そのことに対して
不満を抱き始めたゾウはやがて
ネズミに対して文句を言いだしました
「君が運ぶ荷物の量と
僕が運ぶ荷物の量は圧倒的に違う
正直、この仕事は僕の力で成り立っているようなものだ
君はただ僕の背中に乗って
道案内をするだけでいい
荷物を持ってくれると言ったって
それは僕にとって何の助けにもならないほどの
些細な量しか君は持てない
にも関わらず、君と僕の取り分は一緒だ
それはあんまりじゃないか」
そのゾウの言葉をネズミは
下を向いて黙って聞いていました
そして不満が募り募ったゾウは
ネズミと別れ
一人で仕事をすることにしました
これで儲けを分けなくてもいい
仕事をしている内に
道も大体覚えたし
困ることはない
ゾウはそう考え
毎日、休むことなく
あくせく、荷物を運びました
そんな、ある日
ゾウは力持ちのゴリラと一緒に仕事をすることになり
今までの倍の荷物を運ぶことになりました
しかし、相手は
自分以上に怪力のゴリラ
荷物が倍になったところで
困るどころかむしろ
頼れる仲間との仕事で
かつ儲けも倍になり
ゾウにとってはこれ以上ない嬉しい仕事でした
そして2人は荷物を運び始めましたが
目的地まで後少しというところで
急にゴリラがゾウに話しかけました
「この仕事でゾウの君と俺がもらう賃金は同じだ
しかし、どちらが多く荷物を運んでいるかと言えば
それは怪力を持つゴリラの俺の方だ
それを君はどう思う」
ゾウはそれを聞かれて
驚いて答えました
「・・・それは仕方のないことだと思う」
ゴリラはそれを聞いて「冗談だ」と言って笑い
ゾウもそれを見てホッとしました
しかし、その後
ゴリラは笑顔でゾウの方を見て言いました
「でもな、俺達の仕事には
何の意味があるんだろうなと
俺は時々考える
毎日毎日、重い荷物を運んで
確かにそれでいい賃金がもらえ
いい餌が食べられるし
いい暮らしも出来る
でも、それだけなんだ
いい暮らしが出来るというのは
それが出来ない人に比べれば確かに
いいことなんだ
でもそれだけなんだ
分かるか
俺は確かに
いい暮らしがしたいと思ってこの仕事を始めた
でも、毎日毎日重い荷物を運んで
身を削る内に
違うものを求める様になったんだ
それは
自分を認めてくれるものさ
自分の力を認めてくれる者
自分の力を必要としてくれる者
そういうものを俺は求めているんだ
そうでなければ俺はこのまま
重い荷物を運び続けて終わってしまう
そしてそこには何の意味もない様に
俺は感じるんだ
でも、ほんの少しでも
俺の力を認めてくれる人がいたり
俺の力を必要としてくれる人がいてくれたら
俺もこの世界に必要だったのかなと思える気がするんだ
だから今、俺が君と同じ賃金で
君より重い荷物を持つことは
意味があるんじゃないかなと思うんだ
確かに辛いことだが
その苦しさの中に
俺が探していた答えがあるんじゃないかなと思うんだ」
ゴリラはそう話終えると
目的地の街まで何も言わず
ただひたすら重い荷物を背負って
ゾウの前を歩き続けました
そして、目的地まで着くと
ゾウと同じ分だけの賃金をもらい
笑顔で去って行きました
ゾウはその手に乗った
ゴリラと同じ分だけの賃金を見て
今までの事を思い出していました
そしてそれを握りしめると
昔、一緒に仕事をした
ネズミの家まで行くことにしました
ゾウがネズミの家を訪ねると
彼の仲間がゾウを出迎え
そしてゾウに言いました
「残念だけど、彼は亡くなったよ」
ゾウはそれを聞いて驚愕しました
仲間のネズミは下を向いたまま
驚きを隠せないゾウに言いました
「彼は昔から頭が良くて
その頭を使えば楽に仕事が出来たのに
その楽というやつを嫌って
体を使って仕事をすることを望んだんだ
そうして荷物運びの仕事を始めたらしいんだが
自分は力がないから
一緒に仕事をしていた仲間に迷惑だと言って
仕事を辞めたらしいんだ
でも重い荷物を運び続けた影響で
体を壊したらしく
仕事を辞めてすぐに亡くなったよ
彼はとても頑張り屋でね
聞いた話だといつも
自分の体の倍近くある荷物を運んでいたらしい
彼はよく言っていたんだ
どれだけ荷物が運べるかよりも
どれだけ偉業が成し遂げられるかよりも
どれだけ
自分にとって
重い荷物を運べるか
それが大事なんじゃないかなって
そうすれば、それを見た
他の重い荷物を運んでいる人が
自分の頑張りを見て
自分も頑張ろうと思ってくれるんじゃないかって
例え自分が運ぶ荷物が
他の人が運ぶ荷物よりも小さいものであっても
自分が運べる分を超えて
背負う時
そこに自分の苦しみとともに
誰かの苦しみも背負う事が出来るんじゃいかなと思う、と
自分の苦しみを見た誰かが
同時にそれと闘う自分の姿を見て
少しは苦しみを減らしてくれるんじゃないかって
似たような苦しみを
自分が背負う事が出来るんじゃないかって
彼はお金を稼ぎたかったのではなく
そういう自分の信念を守りたかったんだろう
だから彼は無理をしたんだろうな」
仲間のネズミがそう話している間
ゾウは彼の話を聞きながら
半分、上の空で
ネズミとの思い出を振り返っていました
確かにネズミはいつも何も言わず
むしろ自分を褒めたり気遣ったりしてくれていました
そんなネズミに対して
自分は彼が運ぶ荷物の大きさしか見ておらず
同時に彼が背負った苦しみをそっちのけにして
彼に文句ばかり言い
そして彼と別れ
ゴリラが言う
自分の力を認めてくれる者
あるいは自分の力を必要としてくれる者も失ったのでした
そしてゾウがそれに気づいた時
すでに自分を必要としてくれた
ネズミはいませんでした
それを知り
ゾウは手のひらに乗ったコインを握りしめ
大泣きしました
悔しくて悔しくて
大きな大きな
滝の様な涙を流して泣き続けました
一体、こんなものが何になるんだろう
コインと引き換えに
自分が手に入れたものはなんだろう
自分がそればかりを考え
その結果失ってしまったものは何だろう
ゾウがその答えを知った時
すでにその答えはこの世界にはありませんでした
それからというもの
ゾウはいつも大きな荷物を背負って歩く様になりました
誰よりも重い荷物を背負い
誰よりも苦しい道を進み
仲間のゾウにその理由を聞かれても
「それが仕事だから」と答えるだけでした
butterfly cune
いつも重い荷物を背負っているゾウがいました
それは見るからに重そうで
どうして、そんなものを背負っているのかを
仲間のゾウが尋ねても
彼は仕事だからというだけで
それ以上は答えませんでした
その昔、彼の背中にまだ
その重い荷物がなかった頃
彼は力持ちのゾウとして
仲間から認められていました
そして、ある日
その彼の前に一匹のネズミが現れて
彼に言いました
「君の力と僕の頭脳を使って仕事をしないかい」
それはたくさんの荷物を運んで
お金を稼ぐというものでした
ゾウが重い荷物を背負い
世界中の道を知るネズミが
道案内をするというものでした
腕に自信のあったゾウは
快くそれを引き受け
彼らは仕事をしながら世界中を周りました
しかし、彼らの仕事が順調に進みだした頃
彼らの欲もまた大きくなり
それに伴い彼らの仕事も増えて行きました
それはつまりゾウが運ぶ荷物が増えることを意味し
もちろん、ネズミも荷物を運びましたが
ゾウが運ぶ分とは比較にならないほど少なく
ゾウの負担は増す一方でした
そのことに対して
不満を抱き始めたゾウはやがて
ネズミに対して文句を言いだしました
「君が運ぶ荷物の量と
僕が運ぶ荷物の量は圧倒的に違う
正直、この仕事は僕の力で成り立っているようなものだ
君はただ僕の背中に乗って
道案内をするだけでいい
荷物を持ってくれると言ったって
それは僕にとって何の助けにもならないほどの
些細な量しか君は持てない
にも関わらず、君と僕の取り分は一緒だ
それはあんまりじゃないか」
そのゾウの言葉をネズミは
下を向いて黙って聞いていました
そして不満が募り募ったゾウは
ネズミと別れ
一人で仕事をすることにしました
これで儲けを分けなくてもいい
仕事をしている内に
道も大体覚えたし
困ることはない
ゾウはそう考え
毎日、休むことなく
あくせく、荷物を運びました
そんな、ある日
ゾウは力持ちのゴリラと一緒に仕事をすることになり
今までの倍の荷物を運ぶことになりました
しかし、相手は
自分以上に怪力のゴリラ
荷物が倍になったところで
困るどころかむしろ
頼れる仲間との仕事で
かつ儲けも倍になり
ゾウにとってはこれ以上ない嬉しい仕事でした
そして2人は荷物を運び始めましたが
目的地まで後少しというところで
急にゴリラがゾウに話しかけました
「この仕事でゾウの君と俺がもらう賃金は同じだ
しかし、どちらが多く荷物を運んでいるかと言えば
それは怪力を持つゴリラの俺の方だ
それを君はどう思う」
ゾウはそれを聞かれて
驚いて答えました
「・・・それは仕方のないことだと思う」
ゴリラはそれを聞いて「冗談だ」と言って笑い
ゾウもそれを見てホッとしました
しかし、その後
ゴリラは笑顔でゾウの方を見て言いました
「でもな、俺達の仕事には
何の意味があるんだろうなと
俺は時々考える
毎日毎日、重い荷物を運んで
確かにそれでいい賃金がもらえ
いい餌が食べられるし
いい暮らしも出来る
でも、それだけなんだ
いい暮らしが出来るというのは
それが出来ない人に比べれば確かに
いいことなんだ
でもそれだけなんだ
分かるか
俺は確かに
いい暮らしがしたいと思ってこの仕事を始めた
でも、毎日毎日重い荷物を運んで
身を削る内に
違うものを求める様になったんだ
それは
自分を認めてくれるものさ
自分の力を認めてくれる者
自分の力を必要としてくれる者
そういうものを俺は求めているんだ
そうでなければ俺はこのまま
重い荷物を運び続けて終わってしまう
そしてそこには何の意味もない様に
俺は感じるんだ
でも、ほんの少しでも
俺の力を認めてくれる人がいたり
俺の力を必要としてくれる人がいてくれたら
俺もこの世界に必要だったのかなと思える気がするんだ
だから今、俺が君と同じ賃金で
君より重い荷物を持つことは
意味があるんじゃないかなと思うんだ
確かに辛いことだが
その苦しさの中に
俺が探していた答えがあるんじゃないかなと思うんだ」
ゴリラはそう話終えると
目的地の街まで何も言わず
ただひたすら重い荷物を背負って
ゾウの前を歩き続けました
そして、目的地まで着くと
ゾウと同じ分だけの賃金をもらい
笑顔で去って行きました
ゾウはその手に乗った
ゴリラと同じ分だけの賃金を見て
今までの事を思い出していました
そしてそれを握りしめると
昔、一緒に仕事をした
ネズミの家まで行くことにしました
ゾウがネズミの家を訪ねると
彼の仲間がゾウを出迎え
そしてゾウに言いました
「残念だけど、彼は亡くなったよ」
ゾウはそれを聞いて驚愕しました
仲間のネズミは下を向いたまま
驚きを隠せないゾウに言いました
「彼は昔から頭が良くて
その頭を使えば楽に仕事が出来たのに
その楽というやつを嫌って
体を使って仕事をすることを望んだんだ
そうして荷物運びの仕事を始めたらしいんだが
自分は力がないから
一緒に仕事をしていた仲間に迷惑だと言って
仕事を辞めたらしいんだ
でも重い荷物を運び続けた影響で
体を壊したらしく
仕事を辞めてすぐに亡くなったよ
彼はとても頑張り屋でね
聞いた話だといつも
自分の体の倍近くある荷物を運んでいたらしい
彼はよく言っていたんだ
どれだけ荷物が運べるかよりも
どれだけ偉業が成し遂げられるかよりも
どれだけ
自分にとって
重い荷物を運べるか
それが大事なんじゃないかなって
そうすれば、それを見た
他の重い荷物を運んでいる人が
自分の頑張りを見て
自分も頑張ろうと思ってくれるんじゃないかって
例え自分が運ぶ荷物が
他の人が運ぶ荷物よりも小さいものであっても
自分が運べる分を超えて
背負う時
そこに自分の苦しみとともに
誰かの苦しみも背負う事が出来るんじゃいかなと思う、と
自分の苦しみを見た誰かが
同時にそれと闘う自分の姿を見て
少しは苦しみを減らしてくれるんじゃないかって
似たような苦しみを
自分が背負う事が出来るんじゃないかって
彼はお金を稼ぎたかったのではなく
そういう自分の信念を守りたかったんだろう
だから彼は無理をしたんだろうな」
仲間のネズミがそう話している間
ゾウは彼の話を聞きながら
半分、上の空で
ネズミとの思い出を振り返っていました
確かにネズミはいつも何も言わず
むしろ自分を褒めたり気遣ったりしてくれていました
そんなネズミに対して
自分は彼が運ぶ荷物の大きさしか見ておらず
同時に彼が背負った苦しみをそっちのけにして
彼に文句ばかり言い
そして彼と別れ
ゴリラが言う
自分の力を認めてくれる者
あるいは自分の力を必要としてくれる者も失ったのでした
そしてゾウがそれに気づいた時
すでに自分を必要としてくれた
ネズミはいませんでした
それを知り
ゾウは手のひらに乗ったコインを握りしめ
大泣きしました
悔しくて悔しくて
大きな大きな
滝の様な涙を流して泣き続けました
一体、こんなものが何になるんだろう
コインと引き換えに
自分が手に入れたものはなんだろう
自分がそればかりを考え
その結果失ってしまったものは何だろう
ゾウがその答えを知った時
すでにその答えはこの世界にはありませんでした
それからというもの
ゾウはいつも大きな荷物を背負って歩く様になりました
誰よりも重い荷物を背負い
誰よりも苦しい道を進み
仲間のゾウにその理由を聞かれても
「それが仕事だから」と答えるだけでした
butterfly cune
そこはとても平和な森でした
優しい風と温かい太陽の光で
たくさんの植物が育ち
たくさんの動物達が仲良く暮らしていました
しかし、ある日
その森が人間の手によって
切り開かれ
多くの動物達が住処を奪われました
彼らは嘆き悲しみながら
他の場所へと移って行きましたが
そこで暮らしていたキツネだけは
人間に仕返しをすると言って
そこに残りました
そしてキツネはある作戦を考え
それを実行することにしました
それは人間に
ここに宝が埋まっていると言って
穴を掘らせ
そして人間が十分埋まる深さまで掘れたら
上から土をかけて埋めるという
恐ろしい計画でした
でもキツネにはそれを実行できるだけの
強い憎悪がありました
そして、キツネは早速
切り開かれた森の方へ歩いてきた少年を見つけ
彼に作戦通り穴を掘らせました
そして十分な穴が出来たところで
キツネは深い穴の中にいる少年に向かって
自分達の森を壊した人間の話をし
そして彼に向かって言いました
「お前達が犯した罪をその穴の中で
もがき苦しみながら考えるといい」
上を見上げてそれを聞いていた少年は
キツネの話が終わると
驚きもせず、話を聞く前と同じ様に
穴を掘り続けました
その様子を見て驚いたのはキツネの方でした
キツネは少年に尋ねました
「なぜ穴を掘り続ける
状況を悪化させてどうする
お前は自分の置かれている状況が
分かっているのか」
すると少年は穴を掘りながら答えました
「このまま掘り続ければ
この星の反対側にいけるかもしれない
そうすればこの状況から脱出できるだろう
あるいは、ここに偶然、宝が埋まっていて
それが見つかるかもしれない
そうすれば君は嘘つきではなくなるだろう
最悪、この星の反対側にも行けなくて
宝も見つからなかったとしたら
そこに今、僕が持っているお守りを埋めておこう
このお守りは僕の家系に代々伝わるもので
結構な価値があるらしい
それを宝物として埋めておけば
いずれ誰かがこの宝物を見つけるだろう
つまり、僕はここに宝物という夢を埋めることができる
だから掘るのさ」
少年は汗をぬぐいながら
一生懸命穴を掘り
キツネはその少年を見て
考えていました
「お前この状況が分かっているのか
お前はもうこの穴から出られない
つまりここで死ぬんだぞ
お前は俺に騙されたんだ
この穴の中でお前は
俺の憎悪を背負って死ぬんだ」
それを聞いて少年は
穴を掘る手を止め
真っすぐにキツネの方を見上げて答えました
「そうだね
だからこそ、どうするかを考えているんだ
悪いけど僕は君の憎悪なんて
背負って死ぬつもりはないし
もしかしたら、まだ行きのびられるかもしれない
あるいはそれがだめなら
この世界に何を残せるかだ
最悪、君の憎悪を受け止めて
それで君の気が晴れるならそれでもいい
宝を埋めて死ぬでもいい
でも、出来れば僕がこの世界を去った後でも
笑ってくれる人がいて欲しい
それが多ければ多いほどいい
だから、こんな状況でも
どうやったらそれが出来るだろうかと考えているのさ
それだけだよ」
それを聞いてキツネは考えました
いっぱい、いっぱい
いろんなことを考えました
少年が穴を掘り続ける間
ずっとずっと考えていました
そして、人を恨んで仕返しを企んだ自分と
最後まで諦めようとしなかった少年を
見比べて思いました
自分のしたことは決して正しいことではないし
格好良いことではないけれど
それでも、時には間違った道でしか
解決できないこともあるんだと思っていた
そして少年が導きだした答えもまた
決して正しいとは言えない答えの様に思えた
それでも、この世界には
正しいとか間違っているとかで
選べない答えもあるんだなと思いました
辺りはすっかり薄暗くなり
お腹を空かせたキツネは
大きくため息をつくと
一生懸命、掘り続ける少年に向かって
声をかけました
「ねえ、そろそろ、
どうやってこの穴からでるか、考えようよ」
それでも少年はキツネの方を見ずに
一生懸命穴を掘りながら答えました
「それより、どこまで掘ったら宝が見つかるか
考えようよ」
キツネはそれを聞いて呆れて答えました
「本当に穴から出られなくなるぞ」
それでも少年は手を休めることなく言いました
「君が助けを呼びに行ってくれれば
いつでも出れるよ
僕は穴を掘って宝を見つける
そして君は僕を穴から出してくれる為に
助けを呼んで来てくれる
それが僕らが今、出来る
この世界を良い世界にする方法じゃないかな」
キツネはそれを聞いてまた
大きなため息をつきました
でも、そうやって
少年とやり取りする中で
キツネが抱いた
人間に対する憎悪が
完全に消え去ったわけではないけれど
少しだけ和らいだ気がしました
そしてキツネは「お腹、減ったなぁ」と
夜空を見上げながら
大きなため息をつくと
街の方に向かってとぼとぼと歩き
少年の助けを呼びに行きました
[PV] Superfly - やさしい気持ちで
優しい風と温かい太陽の光で
たくさんの植物が育ち
たくさんの動物達が仲良く暮らしていました
しかし、ある日
その森が人間の手によって
切り開かれ
多くの動物達が住処を奪われました
彼らは嘆き悲しみながら
他の場所へと移って行きましたが
そこで暮らしていたキツネだけは
人間に仕返しをすると言って
そこに残りました
そしてキツネはある作戦を考え
それを実行することにしました
それは人間に
ここに宝が埋まっていると言って
穴を掘らせ
そして人間が十分埋まる深さまで掘れたら
上から土をかけて埋めるという
恐ろしい計画でした
でもキツネにはそれを実行できるだけの
強い憎悪がありました
そして、キツネは早速
切り開かれた森の方へ歩いてきた少年を見つけ
彼に作戦通り穴を掘らせました
そして十分な穴が出来たところで
キツネは深い穴の中にいる少年に向かって
自分達の森を壊した人間の話をし
そして彼に向かって言いました
「お前達が犯した罪をその穴の中で
もがき苦しみながら考えるといい」
上を見上げてそれを聞いていた少年は
キツネの話が終わると
驚きもせず、話を聞く前と同じ様に
穴を掘り続けました
その様子を見て驚いたのはキツネの方でした
キツネは少年に尋ねました
「なぜ穴を掘り続ける
状況を悪化させてどうする
お前は自分の置かれている状況が
分かっているのか」
すると少年は穴を掘りながら答えました
「このまま掘り続ければ
この星の反対側にいけるかもしれない
そうすればこの状況から脱出できるだろう
あるいは、ここに偶然、宝が埋まっていて
それが見つかるかもしれない
そうすれば君は嘘つきではなくなるだろう
最悪、この星の反対側にも行けなくて
宝も見つからなかったとしたら
そこに今、僕が持っているお守りを埋めておこう
このお守りは僕の家系に代々伝わるもので
結構な価値があるらしい
それを宝物として埋めておけば
いずれ誰かがこの宝物を見つけるだろう
つまり、僕はここに宝物という夢を埋めることができる
だから掘るのさ」
少年は汗をぬぐいながら
一生懸命穴を掘り
キツネはその少年を見て
考えていました
「お前この状況が分かっているのか
お前はもうこの穴から出られない
つまりここで死ぬんだぞ
お前は俺に騙されたんだ
この穴の中でお前は
俺の憎悪を背負って死ぬんだ」
それを聞いて少年は
穴を掘る手を止め
真っすぐにキツネの方を見上げて答えました
「そうだね
だからこそ、どうするかを考えているんだ
悪いけど僕は君の憎悪なんて
背負って死ぬつもりはないし
もしかしたら、まだ行きのびられるかもしれない
あるいはそれがだめなら
この世界に何を残せるかだ
最悪、君の憎悪を受け止めて
それで君の気が晴れるならそれでもいい
宝を埋めて死ぬでもいい
でも、出来れば僕がこの世界を去った後でも
笑ってくれる人がいて欲しい
それが多ければ多いほどいい
だから、こんな状況でも
どうやったらそれが出来るだろうかと考えているのさ
それだけだよ」
それを聞いてキツネは考えました
いっぱい、いっぱい
いろんなことを考えました
少年が穴を掘り続ける間
ずっとずっと考えていました
そして、人を恨んで仕返しを企んだ自分と
最後まで諦めようとしなかった少年を
見比べて思いました
自分のしたことは決して正しいことではないし
格好良いことではないけれど
それでも、時には間違った道でしか
解決できないこともあるんだと思っていた
そして少年が導きだした答えもまた
決して正しいとは言えない答えの様に思えた
それでも、この世界には
正しいとか間違っているとかで
選べない答えもあるんだなと思いました
辺りはすっかり薄暗くなり
お腹を空かせたキツネは
大きくため息をつくと
一生懸命、掘り続ける少年に向かって
声をかけました
「ねえ、そろそろ、
どうやってこの穴からでるか、考えようよ」
それでも少年はキツネの方を見ずに
一生懸命穴を掘りながら答えました
「それより、どこまで掘ったら宝が見つかるか
考えようよ」
キツネはそれを聞いて呆れて答えました
「本当に穴から出られなくなるぞ」
それでも少年は手を休めることなく言いました
「君が助けを呼びに行ってくれれば
いつでも出れるよ
僕は穴を掘って宝を見つける
そして君は僕を穴から出してくれる為に
助けを呼んで来てくれる
それが僕らが今、出来る
この世界を良い世界にする方法じゃないかな」
キツネはそれを聞いてまた
大きなため息をつきました
でも、そうやって
少年とやり取りする中で
キツネが抱いた
人間に対する憎悪が
完全に消え去ったわけではないけれど
少しだけ和らいだ気がしました
そしてキツネは「お腹、減ったなぁ」と
夜空を見上げながら
大きなため息をつくと
街の方に向かってとぼとぼと歩き
少年の助けを呼びに行きました
[PV] Superfly - やさしい気持ちで