僕が心臓のネジを巻く時 -30ページ目

僕が心臓のネジを巻く時

出来れば僕が動かなくなった後でも、この世界が平和であって欲しい。大切な人達が幸せであってほしい。

でっかい爆弾を作りました

それを使ってはいけないことは分かっていました

でもこのままでは

毎日少しずつ、人が死んでしまいます

だから僕はこのでっかい爆弾を使って

多くの人を殺すしかありません

そうすればそれが悪いことだと皆が気付いてくれます

残った人たちだけでも生き残れます

少しずつなら人は死んでも気にされませんが

多くの人が死ぬなら

それは悪いことだと気付いてもらえます

命の重さは皆同じだそうです

そういう人たちが

自分と同じ重さの

他人の命の重さには無関心です



だから僕はでっかい爆弾を作りました

僕はそれをいつも考えていた

朝起きた時は、卵が先だと思った

昼御飯を食べた時は鶏が先じゃないかと思った

家に帰り、やっぱり卵が先だと思いなおした

風呂に入り、鶏が先だと確信をもった

でも寝る前は卵が先じゃないかと疑問をもった




ある人は卵が先だと言う

ある人は鶏が先だと言う




卵が先か鶏が先か・・・




その数式によると卵が先だった

その理論によると鶏が先だった




卵が先か鶏が先か・・・・・・・




どちらも正しくて

どちらも間違いで

どれだけ考えても分からない

だから母に聞いた

すると母はこう言った




 どっちでもいいから、

 一緒に晩御飯を何にするか考えてくれないかしら

 卵ならオムライス

 鶏なら唐揚げ

 どっちがいい?



それでも分からなかったから

父に聞いた




 んー、鶏だ!鶏!

 数式?理論?

 そんなもん関係ない!

 誰が何と言おうが鶏だ!

 俺が鶏だと思うから、鶏だ

 死ぬまで自分の出した答えを信じるのが男だろ

 だから鶏だ!

 誰が何と言おうが鶏だ!




どうしても分からなかった

するとそんな僕を見かねた

彼女が言った



「どっちでもいいと思う。生きていることに変わりはないから」




その一言ですべて解けた

僕が長い時間かけて探していた答えを

彼女は一瞬で出した

難しい数式も理論も

長い解説も説明も

明確な答えとは言い切れなかったけれど

彼女の答えはすべてだった



僕はそんな彼女が大好きだ



そしてそんな彼女が笑顔で僕に聞いた

「じゃあ仕事と私、どっちが大事?」




だから僕も笑って答えた

「どっちでもいいと思う。生きていることに変わりはないから」

すると彼女は怒って言った

「そこは嘘でも彼女と言え」

そして彼女は笑った

だから僕も笑った

傘を買いました

雨が降ってきたから

傘を買いました

別になくてもいいんだけれど

皆が買えと言うから買いました




傘を差しました

雨が降ってきたから

傘を差しました

別に差さなくてもいいんだけれど

皆が差しているから差しました




よく見るとどこもかしこも

傘を差している人ばかり

こんなによく晴れた日なのに

それでも雨が降るものだから

傘をささずにはいられません




でも、中には傘を差さない人もいます

そんな人を見て

誰かが言いました

「どうして傘を差さないんだ」

どうやら傘を差さない人はおかしいという

暗黙のルールが出来てしまったようです




ずぶ濡れの人を見て誰かがいいました

「近寄るな。こっちまで濡れるだろ」

ずぶ濡れの人よりも自分を守ることで精一杯




ちょっと水しぶきが飛んだだけで

冷たい目

人と傘がぶつかって

鬼の顔



だから僕は傘を差すのはやめました

どれだけ濡れても

人間やめたくないので

差すのをやめました