僕が心臓のネジを巻く時 -27ページ目

僕が心臓のネジを巻く時

出来れば僕が動かなくなった後でも、この世界が平和であって欲しい。大切な人達が幸せであってほしい。

この世界にはね

バランスがあると思うんだ

何かが増えると

何かが減って

何かが上がると

何かが下がる

そういうバランス




そういうバランスがあるから

いろんなものは保たれていくのだと思う



でね、それでね

そのバランスは私達の中にもあると思うんだ





誰かが笑う時

その分、誰かが泣いてるの

誰かが泣く時

その分、誰かが笑うの

そうやって

1人の人に多くの悲しみが集まらないように

なっているんだと思う





だからね

私が泣く時、

きっと、どこかで誰かが笑ってて

私が笑う時、

きっと、どこかで誰かが泣いてるの





だから私が泣く時

その分、誰かが笑ってくれるから

そんなに悲しくない

笑う時も一生懸命、笑う

心の底から笑うの

その分、誰かが泣いているはずだから






だから私が泣いた時は

その分、笑ってね

あなたが泣いた時

私が笑うから

そんなに悲しまないでね






彼女は僕にそう言いました




そのバランスはきっと存在すると思う

そして彼女の言うことは、きっと

僕が出した答えより

正解に近くて

僕の理想より

現実に近いだろう





でも、その彼女が

僕の為に、

僕の分の悲しみを減らすために

その分、悲しみを背負うというのなら

僕はそのバランスを壊すだろう





僕はそんなバランスを望まない

誰かの悲しみの上に成り立つ

喜びなど僕は望まない

それが自分の大好きな人なら、なおさら






だから僕はバランスなど望まない

例え、それが理想でしかないとしても

僕は1人でも多く

笑える道を探すだろう

皆はいろんな色のクレヨンを持っていました

それでいろんな絵を描きました

それはとてもとても鮮やかで

白い画用紙をきれいに染めました





でも僕は黒しか持っていませんでした





「黒はあんまり使わないから」と

クレヨンを持っていなかった僕に

皆が黒をくれました





だから僕はその黒で画用紙を塗りつぶしました






そして画用紙の元々の白を使って

星を作りました

紙いっぱいの星を作りました

黒は夜空で

白が星






だから僕の星には色がありません






でも、僕はそれを天井に張って

寝る時に毎晩、その星を見ました

この星の見えなくなった世界で

僕は毎晩、星を見ました

彼女は僕にたった1つのことしか教えなかった

だから僕は道を誤った

僕は間違いを犯し、失敗を繰り返し

その度に答えを探して彷徨った





でもその、たった1つのことを何度も教えた

何度も何度も繰り返した

しつこい位に教えた

それしか教えなかった

それだけ知っていればいいと言った

でも他のことも教えてくれれば

僕はもっと楽に生きられたんだ





どうして教えてくれなかったんだ

どうして僕にそれだけしか教えなかったんだ





彼女が僕に教えた、たった1つのこと





「生きていることが素晴らしい」



それは僕に明確な道を教えてくれなかった

それは僕に失敗や間違いを犯さない方法を教えなかった

それは僕に確かな答えを教えなかった





でもたった1つ

僕が生きていることを教えた

そしてそれが素晴らしいことを教えた






だから僕は今まで生きてこれた

そしてこれからも生きていける

これから何があっても生きていける

それが素晴らしいことだから






そしてそれが素晴らしいことを

知っていたからこそ

僕は人の失敗を許せた

人の欠点を愛せた

弱さや醜さや汚さも

生きているからこそ、あるもので

間違いも失敗も過ちも

生きているからこそ、できること





そして僕らは生きている

今ここで生きている

だから僕は人の失敗を許すだろう

人の欠点を愛すだろう

それが素晴らしいことだから

僕はそう教えられたから





「生きてることが素晴らしい」





それを僕に教えた

僕を生んだ人

僕に命を与えた人





僕を育て、僕を見守り

僕に愛を注ぎ続けた人

彼女が生きてきたからこそ

僕が生まれてくることができた






彼女が苦しかった時も

悲しかった時も

生きるのが辛かった時も

彼女が生きていたからこそ

僕は今、ここにいる






だから、ありがとう

生きててくれてありがとう

どんなに辛い日も

生きることを選んでくれてありがとう

僕に生きていることが素晴らしいと

教えてくれてありがとう





「生きていることが素晴らしい」

皆が生きていることが素晴らしい