僕が心臓のネジを巻く時 -23ページ目

僕が心臓のネジを巻く時

出来れば僕が動かなくなった後でも、この世界が平和であって欲しい。大切な人達が幸せであってほしい。

僕達はお互いに向き合って

2人の間の距離を測ってみた





するとその距離は

地球1周分もあった



道理で僕の声は君に届かないはずだ


僕はそう思っていた




でも地球1周分の距離のその先に

君がいて

その君のすぐ後ろに

僕が立っていることに

気づいていなかった





お互いに向き合っているようで

背を向けて立っていた

だから僕の声は君に届かないと思っていたけれど

君にはすべて聞こえていたんだね




「よーい、どん」で縮めようとした、その距離は

どんどん遠ざかって行って

そしてまた近づいて行った

僕が背を向けて歩き出した時

君がすぐ後ろに立っていることに

気付かずに歩きだしたその時

君が僕の背中を見て

流した涙を

僕は見ていなかった




振り向けば、そこに君がいたのに

きっと僕はそれを君と出会ってから

気づくのだろう





そして僕は言うだろう

「随分、遠回りをしてしまった」と




でも君はそれを知っていたから

笑うだろう

だから僕も笑うだろう

君が笑うから

僕も笑うだろう

何も持たずに生まれた僕は

優しい人達に育てられた

だから僕はこの世のすべての人が

優しいのだと思っていた




でもそうではなかった

優しさを巧みに利用して

闇の世界に引きずり込もうとする人もいた




でもその闇の世界で

僕は多くの心の痛みを知った

そしてそんな闇の世界にいた僕は

優しく手を差し伸べられ

光の世界へと戻った




しかし闇の世界を知った僕が見た

光の世界は多くの嘘や矛盾ばかり





そうして光と影の世界を行き来することで

僕は気づいた


誰にでも平等に与えられた

生と死

それだけはこの世界で

誰もが持っていた



その平等の上で

僕らは不平等の旗を掲げ

叫んでいた





僕は自分の住む世界が

光であれ、闇であれ

どちらでもいい

何も持たずに生まれた僕が

この世界で胸を張って言えるのが

僕もあなたも

いつか死ぬんだということ




それだけは動物も植物も

大人も子供も

誰もが等しく与えられたもの




だから僕は今日も生きるだろう

精一杯、生きるだろう

カラスがハイエナに言いました

「この世界は綺麗だな」





それを聞いて

ハイエナがカラスに言いました

「汚いものを掃除するやつらがいるからな」





綺麗な世界は汚いものを嫌う

自分が汚れることすら嫌う

だから彼らは新たな掃除屋に

カラスとハイエナの掃除を願うだろう





「お前はそんな世界に何を望む?」

カラスがハイエナに聞きました

するとハイエナは

こう答えました

「何も望まないよ」






ハイエナが遠くを見ると

今日も遠くで

弱肉強食の世界に敗れた弱者が

もがいていました






ハイエナはそんな弱者に向けて

歩き出しました

この世界を綺麗にする為ではない

自分の飢えを満たすために

「こんな世界に何も望みはしない

 しかし1つだけ、答えを出せと言われたら

 俺達が存在しないことを望む

 この綺麗な世界に

 汚い俺達は相応しくない」



カラスはハイエナに言いました

「もしも俺がくたばったら

 お前が俺を処分してくれ」





しかしハイエナは

カラスの願いを断りました

「悲しみを食べて育ったお前では

 俺の空腹は満たせない

 くたばるなら俺のいない所で

 くたばってくれ」




そうしてハイエナは弱った獲物に向かって

駆けて行きました




俺達は何も望まない

何も期待しない

誰にも何も期待しない






俺達が弱者を食べるのは

空腹を満たすためじゃない

悲しいから食べるのさ

俺達は悲しみを食べることで

唯一、存在することを許される

この世界を綺麗にすることで

俺達の存在が認められる

だから俺達は食べるんだ




ハイエナとカラスが弱者に近づくと

それはすでに骨だけになっていました

どうやら今日も食事にありつけなかった様です

ハイエナはカラスに言いました



いや、それらはすべて

「戯言」だったな

俺達は生きる為に食べる

食べるものも、その目的も

なんでもいい

俺達は食べなければ

存在することも許されない



すべては生きる為

そう、生きるため