「かっこいいよねー」
彼女は映画に出てくる
ヒーローを見て言いました
その彼女は、昔
僕がどうすべきか考える前に
ロッカーからバケツと雑巾を取り出すと
それでクラスメートの
嘔吐物をささっと片付けました
そして僕はその背中をただ
黙って見ているだけでした
彼女が言った「かっこいい」は
その時、僕が思ったものと同じでしょうか
「俺もあんなヒーローになりたいよ」
彼は冗談交じりにそう言いました
そういう彼は、昔
僕が呆然と立ち尽くす中
目の前で起きた事故の
怪我人を助けるために
一瞬で走り去って行きました
そして僕はその背中をただ
黙って見ているだけでした
彼が言う「あんなヒーローになりたい」
という言葉は
その時、僕が思ったものと同じでしょうか
僕はそんな人達の背中を見てばかり
自分は動けなくて
いや、動くことを考えてしまい
そして選んだ答えは自分を守ること
でも彼らはきっと
僕があれこれ考える前から
どうすべきか決めていたのだろう
頭ではなく
心で決めていたのだろう
考えると、きっと
誰でも動けなくなるから
だから僕も走りだそう
本当は怖いけれど
正しいか間違っているかも
分からないけれど
走り出そう
走り出す誰かの背中を
走り出せずに見ている自分
それを見ることが1番怖い