僕が心臓のネジを巻く時 -10ページ目

僕が心臓のネジを巻く時

出来れば僕が動かなくなった後でも、この世界が平和であって欲しい。大切な人達が幸せであってほしい。




久しぶりに大好きな人に

自分の気持ちを伝えようと思って

手紙を書こうとしても

書きだした途端に

書けなくなってしまう




伝えたい気持ちはたくさんあるけれど

それをどう言えば

うまく伝わるのだろうかと考えてしまって

たくさんの言葉を失っていく





それでも僕が彼女を思う気持ちは変わらなくて

伝えきれない言葉を抱いて

僕は今日も眠りにつくだろう





彼女のそばにいたい気持ちも

彼女を大切に思う気持ちも

それを言葉にした途端

違うものに変ってしまいそうで

いつも大切な何かを伝えられずにいる




だから僕はずっと本当の思いを

伝えられないかもしれないけれど

それでもいいんだ

だって彼女を好きだと思う気持ちには

変わりはないのだから





今までも

そしてこれからも、ずっと






もしも私に羽があって

あなたの下に飛んでいくことができたなら

あなたは私の事を愛してくれたのだろうか

例え、鳥の様な姿になったとしても

あなたは私が飛んできたことに

気づいてくれるのだろうか






もしも私が子猫の様に

可愛い声で鳴けば

あなたは私を抱きしめてくれたのだろうか

例えば、本当の猫になってしまって

「愛している」と言えなくなったとしても

あなたは私を愛してくれるのだろうか







私は私が持っているものしか

あなたにはあげられないけれど

それでもあなたは、そんな

等身大の私を愛してくれるだろうか

例えば、私が全てを失ったとしても

そんな私をあなたは受け入れてくれるだろうか






帰る場所がなくて

羽を休める居場所もなくて

いつも何かに怯えているけれど

あなたの「愛している」という言葉が

私を誰よりも強くする





だからいつもそばにいて欲しい

Stay with me
山のふもとにあるその街は

いつも海からの湿った空気が山にぶつかり

雨雲を作っては、ふもとの街に雨を降らせていました




ひどい時にはその雨が

1カ月も続き

作物を腐らせ、時に洪水を引き起こしました




そこで困った王様は

はるか遠くの国、海の向こうにある国から

1人の魔術師を呼び寄せました

その男は気象を研究しており

自在に操れるというのです






王宮に現れた魔術師の男は

雨が降りしきる中、

頭から黒いフードを被り

雨雲を見上げて立っていました





何と不気味な男だろう・・・



皆がそう思いました




王様はそんな男に一室を与え

そこを研究部屋として使うように言いました

そして、その魔術師の手伝いとして

1人のメイドを遣わせました



周りの人から

その不気味な男のあらぬ噂を

たくさん吹き込まれていた彼女は

正直、嫌で嫌で、仕方がありませんでした




しかし、実際、面と向かって

彼に接してみると

彼はとても良い人で

頭がよく、話も上手でいろんな話をしてくれました

研究にも熱心に取り組み

いつもその部屋は夜遅くまで

明かりが灯っていました





彼の様子を気遣い、彼女が声をかけても

逆に彼が彼女を休ませようと

気遣うほど、優しく思いやりのある人で

いつも笑顔で、よく冗談を言い

そんな彼に彼女は次第に惹かれていきました





そして、気象だけでなく

多少の医療にも長けていた彼は

研究の間に街の人達の

病気や怪我の治療にも取り組み

不気味な男という彼の印象は

次第に街を救う男として噂されるようになりました






彼女はそんな彼のそばにいれるだけで嬉しくて

気象の知識は全くないものの

何か出来ることはないかと

必死に考えては彼の手伝いをしました





そうして、数週間が過ぎた頃

ようやく、彼は雨を調整する魔術を完成させました

てるてる坊主にその魔術を吹き込むと

窓につるして雨が止むのを待ちました

しかし、一向に雨は止みません





何が足りないのだろうと彼が必死に考え

専門書を読みなおした結果

どうやら「雨鳥の涙」という材料が必要だったようです





しかし、雨鳥の涙はそんなに簡単に手に入りません

それどころか、どこに行けば手に入るのかも分かりません

彼の研究は行き詰ってしまいました

そんな彼の様子を見て

彼女はとても心配しました





そんな時

彼女が友人のつてを頼り

雨鳥の涙を探していると

それを持っているという一人の魔女と出会いました




どうやらその魔女も雨には

大層、困っているらしく

ただで雨鳥の涙を譲ってくれるといいます

彼女は喜んでそれを受け取りましたが

そんな彼女に魔女は言いました

「でも、それを彼に渡して

 彼が雨を止める魔法を完成させたら

 彼は自分の国に帰ってしまうんじゃない?」






それは彼女も分かっていたことでした

もしもこのまま雨が降り続けば

私は幸せで、皆は幸せではなくて

もしも雨がやめば、皆が笑って

私だけ悲しくなる

それでも彼は笑うでしょう

魔法を完成させることで

彼は笑ってくれるでしょう




ここ数週間、ほとんど不眠不休で

それでも笑顔を絶やさず、周りの人を気遣い

研究を進めてきた彼の苦労が

ようやく報われるのです

それが彼の幸せであり

彼の幸せこそが彼女の幸せなのです




頭ではそれが分かっていました

しかし、心は違います

雨鳥の涙はここに置いて帰り

このまま、雨を降り続かせ

彼のそばにいる方が幸せだと

彼女の中の誰かがささやきました





それでも彼女はとりあえず

雨鳥の涙を持って帰ることにしました

帰り際、魔女が彼女の方を見ると言いました

「私は、雨を止ませて欲しい

 でも、もしも、あなたが

 自分の幸せと、他の人達の幸せを

 天秤にかけるような事があれば

 それは自分の幸せを選ぶべきよ




 あなたが他の人を幸せにするように

 他の人達もあなたを

 幸せにしてくれるかもしれない

 だけど、してくれないかもしれない

 自分を幸せにしてくれるのは

 自分だけよ






 だから私はこのまま

 雨が止まなくとも

 あなたを責めたりはしないわ」




そうして彼女は王宮に帰ると

雨鳥の涙を彼に渡すかどうか悩みました

何度も何度も考えを巡らせては

悩み続けました

そして彼もまた雨鳥の涙を探し続けました




結局、彼女は数日間、考えた後

ついに彼に雨鳥の涙を渡すことを決めました

本当は雨も止んで欲しいし、彼にもそばにいて欲しい

だけど、それは無理だから

魔女が言ったみたいに

自分の幸せか周りの人の幸せかを

天秤にかけるしかない

でも、そんなことをしなくても

答えは1つ

それは彼の幸せ

それが1番の答え

だから雨鳥の涙を彼に渡すことにしました





彼は喜んでそれを受け取り

そして、ついに魔法を完成させました




彼が雨の降る中、彼女と共に

建物の外に出ると

彼は魔法を発動させ

雨が止むのを待ちました






そして、とうとう、彼の魔法は

雨雲が広がる空に

日の光をもたらしました



雨雲が消え、雨が上がっていく中

彼はずぶ濡れになりながら

とてもとても喜びました





だから彼女も笑ってみせました

泣いた顔を雨で誤魔化して

必死に笑顔を作ってみせました

嬉しくて、悲しくて、切なくて

それでも自分の感情を隠して

雨が全てを洗い流してくれるように

晴れていく空を見上げました




そうして、自分の役目を終えた彼は

とうとう自分の国に帰ってしまい

彼について行くこともできない彼女は

自分の気持ちを打ち明けることもできず

残された彼女はただひたすら

泣いて過ごす日々を送っていました

昼も夜も彼のことを考え、遠くを見ては

届かぬ思いに考えを巡らせていました













そんなある日、

街で再び問題が起こりました





雨が全く降らなくなったのです

魔術師の魔法は成功したように見えましたが

雨が降らなくなっては

作物が育たなくなり

極度の水不足に陥ってしまいます

王様は困り果て

再び彼を呼び寄せることにしました

そして彼女に彼の手伝いを命じました





それを聞いて彼女はとても喜びましたが

でも、また彼に心を入れれば

いずれ苦しむことになる

そしてそれは叶わぬ願い

だから彼がいる間に

彼から少しずつ離れていく様にしようと

心に決めました




彼女は彼の手伝いをしながらも

彼に深く接しない様に心がけました

彼が近くにいるだけで

本当は嬉しくて嬉しくて、しょうがないのに

それでも、あえて

彼と距離を置くようにしました





そうして数週間が過ぎた頃

彼は前と同じ様に

魔術を完成させ

建物の外に出ると

それを発動させました





すると晴れ渡った空に雨雲が広がり

雨がぱらぱらと降り始めました

そして、彼と彼女の体に雫が降り注ぎ始めた時

彼は彼女に言いました



「実は君に謝っておかないといけないことがある」





彼女は不思議そうに彼の顔を見て

それが何なのかを尋ねました

すると彼はこう言いました

「実は前に雨を調整する時

 僕は雨鳥の涙が必要と言ったが

 それは実は雨を調整する為ではなく

 雨を止める為だったんだ

 完全にね」





彼女はよく分からないという感じで

首を傾げましたが

彼は笑って続けました

「雨を調整してしまえば

 自分の国に帰らないといけなくなる

 そして、あの時、

 その魔法はすでに完成していた

 でも、そこに雨鳥の涙を足すことで

 完全に雨を止めることができる

 そしてそうすれば、

 雨が降らなくなったこの街は

 水不足になり

 再び雨を降らせる必要が出てくる

 だからきっと困った王様は

 再び、僕を呼び寄せるだろう

 そう思って魔法を発動させず

 雨鳥の涙を調合することにしたのさ」







「どうしてそんなことを?」

彼女が不思議そうに尋ねると

彼は笑顔で言いました

「君にまた会いたいからさ」




彼のその言葉を彼女はすぐに飲み込めず

雨が降り始める中

ただ彼の顔をまっすぐに見て立っていました

しかし、その雨が

ずぶ濡れになった彼女の顔を伝って流れる時

温かい涙と混じり

涙雨となって地面に落ちた時、初めて

彼女は嬉しさと幸せで

心が満たされていくのを感じました







彼が彼女の顔を見ながらにやけて

「前も泣いていたよね」と言うと

彼女も吹き出して

「どうして知ってるの?」

と言いました

そうして、ずぶ濡れになった彼女が笑うと

同じく、ずぶ濡れになった彼も笑いました






「実は、気象の他にも
 
 研究しないといけないものがあるんだけど

 それがなかなか終わりそうにないんだ

 もしかしたら一生かかっても

 終わらないかもしれない

 もし良かったら、それを手伝ってくれないか?」

彼が彼女の顔をまっすぐに見て言うと

彼女は雨が降り注ぐ中、

虹の様な微笑みを見せて

「うん」と言いました

「一生終わらないかもしれないよ?」

彼がそう言っても彼女は

笑顔を絶やすことなく

「うん」と言いました





そうして彼は彼女にそっと近づくと

ずぶ濡れの彼女の肩を抱き

優しくキスをしました






浜崎あゆみ: SEASONS

昔々、東の方に1つの国がありました

山々に囲まれたその国を治めていた王様

その王様には1つの大きな秘密がありました

それは王様の耳がロバの耳と言う事です





ロバは馬鹿の象徴

だから王様は人から馬鹿にされることを恐れ

長い間、それを隠し続けました





しかし、そんなある日

街の小さな女の子が偶然、その秘密を見てしまいました

たまたま王様が散髪に来ていた時

普段は絶対にとらない

大きな帽子を取っていたからです








彼女はそれを見ると驚いて

すぐに家に帰り、家族や友達にそれを話しました

しかし、誰も信じてくれません

むしろ、そんなことがあるはずがないと

馬鹿にされ、嘘つき呼ばわりされてしまいました

それでも彼女は何度も何度も

自分が見たことを説明しましたが

どんなに彼女が周りの人に説明しても

誰も信じてくれません

笑われ、馬鹿にされ、時には石を投げられ

彼女はとうとう誰にも何も言えなくなってしまい

ただ一人、自分の中だけで語るようになりました

そしてついには、仲の良かった友達達すらも

嘘つきの彼女を仲間はずれするようになり

彼女は家に閉じこもるようになりました






ところが、そんなある日

彼女の家にお城の役人が来て言いました

「この家に王様のあらぬ噂を流しているものがいるらしいな」

役人はそう言うと両親の必死の反対を押し切り

王様に対する侮辱罪で

彼女をお城に連れて行き牢獄に入れました





この国で、王様に対する侮辱罪は死刑に値します

だから彼女と彼女の両親には

彼女の死刑執行が言い渡されました

しかし、死刑を執行するには王様の許可が必要です







役人が王様に彼女の死刑の許可を求めると

それを聞いた王様は彼女を

自分の前に連れてくるように言いました

どんな事を言ったのか、自分で確認する為です







そして、彼女が王様の前に呼ばれると

彼女は自分の言ったことを説明するように言われました

しかし、彼女は答えるのを恐れました

死刑が怖かったからではなく

本当の事を言っても誰も信じてくれないこと

自分の大切な人達にすらも信じてもらえないこと

そして本当の事を言えば言うほど

皆が離れて言ってしまうこと

それが怖かったのです








王様はそんな彼女の不安を感じ取ると

彼女に近づいて、膝をつき

彼女の目を見て、優しく言いました

「自分が思った通りのことを言ってごらん

 どんな悪口であっても最後まで聞くと約束しよう」

王様は最初から彼女を死刑にしないことを決めていました

こんな小さな女の子を死刑にするなど

出来るはずがありません

だから王様は最初から彼女が何を言おうとも

許すことを決めていました







彼女はしばらく黙って考えた後

下を向いて悲しそうな顔で答えました

「王様の耳はロバの耳、そう言いました

 皆にそう言いました」

彼女はそう答えると

今まで溜めていたものを全て吐き出すかのように

大きく声をあげて泣き出しました








驚いたのは王様と役人達です

特に王様は自分の最も知られたくないことを

彼女が知っていたこと

そしてそれを皆に言いふらしていたことに驚き

おののきました

役人たちも、まさかとは思いましたが

王様の驚きようからして

真実か、もしくは王様が

何かを隠しているに違いありません






王様はうろたえ考えました

この女の子を死刑にするのはひどすぎる

しかし、生かしておけば

自分の秘密を握られたままだ

それはいずれ自分にとって命取りとなるかもしれない

そして、それはこの国にとっても危機となるかもしれない

この小さな女の子を生かしておけば

いずれ全てのものに災いをもたらすかもしれない

危険すぎる

やはりここで殺しておくべきだろうか







近くにいた役人が王様と彼女に近づくと

王様に言いました

「彼女を死刑にしますがよろしいですか?」







王様は目を閉じ、下を向いて何かを考えると

ゆっくりと目を開け、泣き続ける彼女を見て

力強く言いました

「いや、その必要はない

 彼女はこの国の未来だ

 彼女達がこの国の未来を創っていく

 小さな女の子1人を守れないで

 この国は守れないだろう・・・





 それに・・・

 彼女は間違ったことを言っていない」








そういうと王様は被っていた帽子を脱ぎ

ロバの耳を見せました

周りにいた人達はそれを見て

たいそう驚きましたが

それでも王様は笑って

泣きつづける彼女の肩に手を置いて

優しく、そしてゆっくりと話しだしました







「君が言った通り私の耳はロバの耳だ

 昔からロバは馬鹿の象徴で
 
 私は皆から馬鹿に思われたくないから

 ずっと長い間、この耳を隠し続けてきた

 誰にでも弱い所はあるが

 私はそれを人に見られたくなかった 





 それに、こんな耳だと誰も

 王様だと認めてくれないだろう?

 自分の国の王様が馬鹿だなんて

 誰にとっても嫌だからね






 しかし、そんな私の弱さが

 君を深く傷つけてしまった

 自分の弱さのせいで他の人が傷つくなんて

 格好悪いことだよね

 分かっていたんだ

 それは昔から

 でもそれ以上に恐かったんだ

 人を信じるという事が





 君は自分の命と引き換えに

 本当の事を話してくれた

 それにも関わらず

 そんな時でも私は自分の身を守ることばかり

 考えていたよ

 




 私は怖かったんだ

 人から馬鹿にされることが怖かった

 だから隠し続けたんだ

 こうして皆が知った後でも

 人からどう思われているんだろうと考えると

 きっと不安で不安でしかたがないだろう

 でも私も勇気を持って生きなくてはならない

 胸を張って生きなくてはいけない

 これでもこの国の王様だからね

 それを君が教えてくれたんだ







 確かに私はロバの耳を持つ王様だ

 だから人々は私を馬鹿にするだろう

 でも、例えこんな馬鹿な姿であっても

 君は私を王様だと認めてくれるかい?」







彼女はそれを聞いて

何も答える事が出来ないどころか

更に泣きだしてしまいました

ようやく、自分の事が分かってもらえたこと

でもそのせいで、王様が傷つくであろうこと

それを考えると自分がしたことが

例え本当のことであっても

いいことではないと思ったからです






そんな2人の様子を見て

近くにいた王様の側近が言いました

「王様、安心してください

 我々はあなたとこの国に忠誠を誓っております

 例え、あなたがどんな王様であっても

 例え、国の人々があなたを馬鹿にしようとも

 我々が最後まであなたとこの国を守りましょう

 誇りと信念を持って最後まで守り抜きましょう

 もちろんこの小さな勇気ある女の子もね」

そういうとその側近はにっこり笑って

小さな女の子の頭を力強くなでました

そして、王様もそんな彼らを見て

笑顔で「ありがとう」と言いました










それからしばらくして

やはり皆が考えた通り

王様を支持する者は以前に比べ

ずいぶん減ってしまいました

それによって人々の反発も高まり

国を治める力も王様の発言力も

低下してしまいました







王様はそれが起こりえることだということを

はるか以前から分かっていたので

何度も王様を辞めようと思っていました

しかし、役人を初め

王様を支持する残り少ない人達がそれをさせませんでした

そして、その中に

大きくなった彼女の姿がありました








彼女は街の人達に言いました

「完璧な人にしか王様になれないというのなら

 この世に王様になれる人などいるはずがありません

 王様にはロバの耳がある限り

 人から馬鹿にされ続けるでしょう

 それでも王様が王様である以上

 胸を張ってもらわなくてはならない

 自信のない王様など嫌でしょう?




 いばらの道を歩けば、自分が傷つくと分かっていながら

 それでも胸を張って歩かなくてはいけない人の気持ちが

 あなたには分かりますか?」

 





それからというもの

一度は大きく下がった王様の支持率も

徐々に回復し

その後、ロバの耳を持つ王様の国として有名になり

国は発展していきました





王様の自分の弱さを認めた勇気と

それを支持した人達によって




井上ジョー / CLOSER