久保さんについては、まあいろいろとある。

年末年始の休みがわからなかったと激昂したり、「薬の数がおかしいから確認に家に来い!」と怒鳴って来られたけれど、結局、久保さんの勘違いであったり(自分の勘違いだとわかっても決して謝らない)、まあ思い出すとこちらもカッとしそうな事も沢山ある。

その中で、眼科の処方箋を持ってきた時のことだ。

抗生物質の点眼薬が出ていた。

本人が言うには、目やにではなく、涙のようなものが朝起きると目を塞いでいると言う。

よく使われている目薬ではなかったので、「うちの薬局に今ないお薬なので、すぐ手配して、また配達させてもらいましょうか?」と言った。

「近いから、また寄るけど、それ、菌を殺す薬か?」と聞かれた。

そうだと答えると、声が大きくなりグチグチ言い始めた。

「何回も医者に言うのに、ちゃんと薬を出さんのや!

菌を殺す薬をくれと何回も言うのに、ほれ、あんたのところの下の薬局(駅前のグループ薬局)でもらう薬の説明書に菌を抑えると書いてあるんや。菌を抑えると。殺すでなく抑えると」

「抑える」の部分は、一文字ずつ力を込めて言った。この「殺すでなく、抑える」というフレーズを何度言っただろう。果てしなく続くのかと思うほど、ずっと言っていた。私は笑いそうになるのを必死でこらえた。笑ったりしたら、今度は「何がおかしいんや!アホ!」が始まるだろう。

お薬手帳を見ると、前回は、ちゃんと菌を殺す抗生物質の点眼薬が処方されているが、薬の説明は確かに菌を抑えると書いてあった。

うーん。厳密にいうと「殺す」と「抑える」は違うけれど、前の薬の方が、絶対に切れ味の良い薬だと思った。医師も困ったのだろうと私は思った。

お薬を渡すと、 久保さんは今度は目を拭くためのガーゼが欲しいと言った。欲しいと言ったが、ここにある事はすでに知っていたし、値段も知っていた。

「下の店と値段が違うが、同じ店で値段が違うのはおかしいやないか!」

値引きさせたかったのだろうが、うちの会社では、各々の店で参考価格を元に値段を決めて良いことになっている。そして、うちの店では、近くに両替するところがなくて困るので、1円単位は四捨五入している。だから、違っていたとしても、数円であった。

「うちは、山の上でしょ。持ってくるのに運賃がかかるんですよねぇ」と言うと黙った。

そして、買って行った。