気分安定薬との併用で抗うつ薬を服用する場合がある。双極性うつ病では躁転の危険性が高い薬物だ。
主治医は「躁転したと気づいたら、自己判断でも、抗うつ薬の服用をすぐ中止する」と言っている。その後、すぐ受診をする。抗うつ薬の躁転は急に起こる恐ろしい病状の変化である。

坑うつ薬はうつ状態を改善する効果がある。同時に「抗うつ」というようにうつへの言葉の信仰が強い。また、誰でもうつからは逃れたいから病状が良いならそのままの状態でいたい。など、抗うつ薬を続けて飲みたい欲求はある。

ある時2カ月間重篤なうつ状態が続いた。病院行くことができない時があるほどだった。最後の手段として三環系坑うつ薬を処方してもらった。一週間ほどして気分がよくなった。「坑うつ薬を止めましょう」という主治医は言った。2ヶ月の苦しみが良くなったからこのままの気分でいたい。急に止めて再燃するのが怖い。「自信がないので少しずつ減らしてもらえませんか」と懇願した。主治医は「気分が高く感じたらすぐ服用を止めるように」「躁状態を感じたらばすぐに受診すること」という指示のもと中止せず減薬で終わった。
ただちに止めなかった。3日間徹夜するという躁状態になったが、あいにく週末だった。月曜日にディケアのスタッフが気づいてもすでに遅かった。入院した。減薬の翌日から4日後には入院状態になる。それだけ薬物による躁転は早いのだ。Ⅰ型は特に気をつける必要がある。

今もうつ状態の悪い時はSSRIを使っているが主治医も投薬に慎重である。抗うつ薬による薬物療法を受けている場合に躁状態を感じた時には「薬の服用を中止し、速やかに受診する」。大きな失敗から学んだ教訓だ。早めの対応は深刻な躁状態を防止できるはずだ。