私はたいてい詐欺被害者の方々に「警察に行って調書をとってもらう」ことをお勧めしています。しかし、それはほとんどの場合功を奏しません。海外のケースなので捜査の手がそこまで及ばないのが現状ですし、詐欺師が使っている情報そのものがすべて嘘なわけです。

  • パスポートは偽造。偽造と言っても本当に使われているパスポートではなくてパスポートの画像ファイルに別の顔や名前を編集して取ってつけたもの。たとえ英国や米国の警察や情報機関の協力を日本の警察が得られたとしても、パスポート番号を手掛かりに本人を探すことはできない。
  • プロジェクトや商品の契約を保証する文書などももちろん存在しない契約、存在しないプロジェクト。軍の休暇や退役申請書なども本物の軍には存在しないもの。それらの文書に記載された名前や住所、企業や機関名を探っていっても何も出てこないわけです。
  • ウエスタンユニオンの送金先は偽名でも相手がお金を受け取れるため、名前も住所もあてになりません。
  • 唯一、本物の住所や氏名が登場するのが銀行口座。しかしながら、口座の受け取り手は主犯ではありません。主犯は安全なところにいて、共犯者は自分の取り分を除いて受け取った額をすぐに送金してしまいます。彼ら共犯者は「別の被害者」もしくは「マネーミュール」です。つまり洗脳されて協力している詐欺被害者やお金次第で口座を貸す職業的な協力者、主犯の友人や留学先の恋人か商売女などです。彼らがお金を受け取ったら、詐欺師は被害者から受け取った送金の証拠の画像を彼ら共犯者に見せます。証拠として示された額から自分の取り分を除いてウェスタンユニオンで主犯に送金するわけです。
  •  電話番号は固有のものです。しかしこれも、イギリスやアメリカの電話番号ならお金で買えるわけで、そのお金も盗んだクレジットカードと偽名と偽住所でも買えてしまうサービスも存在するため、電話番号がわかったから相手を割り出せるとは限らない。電話番号がアフリカだったら、かなり高い確率で詐欺師本人の電話だけれども、もっと凶悪な犯罪の捜査で忙しいガーナやナイジェリアの警察を動かして捜査というのも難しい。

 

『泣き寝入りしなさい』って言いたいんじゃないんです。でも埒が上がらない。なかなか捜査ができないのが現状なんですよ。だからこそ、こんな酷い国際詐欺に引っかかってほしくないんですよね。

 

もし、残念なことに引っかかってしまったら、ダメ元で警察に行って調書を取ってもらって。そうすると、データとして残ります。現在、日本の警察が力を入れている詐欺事件は国内詐欺ばかりです。国際詐欺の現状を日本の警察が知らないのは、被害者が出てこないから。行って、無駄でも話してください。

 

本当に警察の対応ひどいです。NYのこりんごさんのブログをリブログさせていただきました。彼女のお友達がロマンス詐欺の被害を受けられました。そして警察は全く相手にしてくれない。サイバー犯罪対策課に行っても、大使館行っても「地元の警察へ」ではまた振り出しに戻り。ひどいです。でも、それでいいんです。警察を刺激してゆかなければ、動くようにはなってくれない。そしてブロガーが警察の酷い対応について書けば、そしてこの種の犯罪について誰かが本を出したりどこかに記事を載せたりすれば、少しづつ、この種の犯罪に関する認知度が広がってゆく。