24-6-24(月)

 現在午前9時半。真夏のような日差しが照り付ける鎌倉市の気温は28度を超えた。今日はとうとう今年初めての真夏日となるようである。一昨日の土曜日も蒸し暑い一日で、昨日は一転して一日中梅雨らしい雨にたたられ、教会の礼拝をさぼって北鎌倉心理相談室にいて、第一相談室の片づけをしていた。もっともそのおかげで、梅雨が空けるまでには第一相談室が使用可能になるようであり、大変目出度い。今年も酷暑になるという気象庁の予想であるが、クーラーの良くきく狭い第一相談室で籠城していれば、夏の暑い時期にもカウンセリングも心理検査も実施可能である。この調子だと予定より早く実家の片づけに行けそうである。ただ、問題なのは猫の目のように変わるこの気候(天気と温度と湿度)でだんだん疲労が蓄積されて、まともな読書が出来ない。一昨日はポッと時間が空いたので、図書館に行って、津田梅子の伝記(漫画やイラストの豊富な、明らかに小学生向けに書かれた本。神経と頭が疲労して、今はこんなものしか読めない)を借りて、昨晩風呂に入った後、1時間くらいかけて読んだ。

 津田梅子は武家の家に二女として生まれた。上に姉がいたので、今度は跡取り息子をと期待されたが、(残念ながら)女の子であった。その後弟も産まれたので、梅子は津田家にとって「必要とされていない」子であったようである。子供向けに書かれた本なので、父に先見の明があって、アメリカに留学することになったことになっているが、史実でないのではないか。一緒にアメリカに留学した5人の女の子の中に山川捨松(この娘も山川家では継子扱いであった)も入っていたなど、「武家の娘で、(家と言う制度の維持に)必要でない女の子が棄民のように選ばれた」可能性すらある。明治時代のエリート(候補)の留学先はイギリスかヨーロッパと決まっていた。いたいけのない女の子5人を留学生としてアメリカに派遣するというのは黒田清隆のアイデアらしいが、どうして「男の子ではなく女の子を?」「ヨーロッパではなくアメリカに?」留学させることになったのか良く解らない。この時梅子はわずか7歳。

 このような目的の不明な留学であったためか、10年後に帰国しても、留学先で身につけた教養を生かす職にありつけない。山川捨松は大山巌(陸軍の超大物。日露戦争で帝国陸軍を勝利に導いた)に見初められて妻となり、「社交界の花」として夫を支えた。この本は子供向けに書かれているので、写真も沢山載っている。捨松も梅子も“武士の娘”だけあって、知的でキリリとした性格が容姿ににじみ出ている美人である。蓮舫や辻本清美と大違いだ。これだと外国人も招かれる社交界に出て行って、外国人女性と交流させても何ら遜色はない。英語も堪能で、アメリカ式の教養を身につけた捨松は明治政府の期待に応えたと言ってよかろう。(そもそも最初からそれが目的であったのかもしれない。)

 この本には私が知りたかった2つのこと、すなわち彼女がいかなる動機でキリスト教徒となったのか、それとどんな青春時代を送ってどういう人と恋愛をしたのか全く触れられていない。ただひたすら「日本女性の地位向上。そのためには学校を作ること」にまい進した人物として描かれている。梅子だってこの時代の女性として、人並みにお嫁にいって、婚家を守りたいという気がまるでなかったとは考えられない。人並みに恋もしたであろう。

 話しを戻すが、目的不明の留学生であった梅子は華族女学校(後の女子学習院)や女子師範学校(後のお茶の水女子大学)で英語の教師として生計を立てる。その後も何度か渡米して、大学で生物学などを学び、華々しい成果を挙げる。ヘレン・ケラーやナイチンゲール、それにセイドア・ルーズベルト大統領夫妻などとも交友関係を持ち、「日本に女性のための学校を」と言う希望を伝えた。

 彼女の念願は叶い、少人数教育を謡い文句にした「女子英学塾」を創設することとなる。(津田塾大学は今でも少人数教育をうりにした結構厳しい教育をしているようである。)津田梅子は生涯独身のまま、64歳で帰天し、その墓は現在小平市にある津田塾大学のキャンパスでじっと後輩たちに睨みを利かせている。

 この墓に関しては、「一度お墓参りをすると結婚出来なくなる」とか「2度お墓参りをすると2度結婚出来る」とか、(前述の命題と矛盾するが)「お墓参りをしないと結婚出来ない」とかいろいろな俗説が飛び回っている。何を信じるかは個人の自由であるので私は何も言わないが、最期に一橋大学との関係だけは書いておこう。キャンパスのアクセスが著しく悪く、勉強は結構厳しく、卒業するとそこそこの高学歴になってしまう津田塾女子は、キャンパスが近くにある一橋大学の男子学生との交流が盛んであると言われているが、私はそれは怪しい話しだと思っている。最近の一橋大学の学生さんは「東大に入れなかったから、仕方なく一橋に入学した」と言う挫折感と劣等感の塊みたいな連中が多く、津田塾女子にとっては恋人としても夫としても全く物足りない存在と映るだろう。

 それでも「陸の孤島」のような場所で、ひたすら勉学に励みたい女性にとっては良い教育が受けられるだろう。もっと志願者が増えて、偏差値が上がったら面白いだろうな、と私などは思う。

 志をもって進学するなら、いい大学だろう。

 

(津田梅子や山川捨松が美人だというのはあくまで私の主観的な評価であって、何ら客観的な根拠はない。もうすぐ新しい日本銀行券(お札のこと)が世間に流布されることになるので、皆さんは皆さんでそれぞれ“自己責任”で判断していただきたい。)