ここのところ、羽生先生が異常に強い、鬼神に取り付かれたかのやうな強さを発揮している。今朝、ラジオのニュースで高校生棋士、藤井6段が今日勝つと規定により7段に昇格し、またもや加藤一二三9段(ひふみんのこと)の記録を更新するそうである、まあそうなるであろう。もう藤井6段が何をやっても私は驚かない。ただ、心理学的に気になるのは、彼はある種の発達障害の傾向がある節が見られるということである。(もっとも明星大学の石井雄吉先生の診断では私も自閉スペクトラム症の傾向があるらしいが、笑)。「神武以来の天才」(神武天皇が即位された=日本が建国を成し遂げてこのかたの天才)言われた加藤一二三先生にもまた発達障害の傾向があるらしい。そして藤井6段と加藤先生は60歳の年齢差があるのだが、非常に気があう。「天才は狂気と紙一重」と言われ、心理学にも病跡学という、天才的な人物のどこか常人と違った変奇性や奇行と創造性の関係を研究する学問があって、実は私もこの領域では専門誌に論文を通しているなど専門家と言ってさしつかえないと思う。ヤスパースは、19世紀にはヒステリーが何らかの創造性にかかわることが多かったが、20世紀には分裂病(統合失調症)が何らかの創造性に関与する時代精神があるようだ、という内容のことを言っているが、21世紀はひょっとして発達障害の傾向のある人が天才として頭角を現す時代になるかもしれない。いずれにしても、藤井6段(明日からは7段だろう)も加藤一二三先生も素晴らしい人であり、発達障害で苦しんでいる人たちに勇気を与える存在になってほしい。
それはともかく羽生義治竜王、現在彼は佐藤天彦名人を相手に名人戦を戦っている。将棋には8つの多きな棋戦があるが、その中でもこの「名人戦」と「竜王戦」は別格で格が高い。名人戦も竜王戦も決勝戦は多くの場合、高名な温泉旅館などで2日間にかけて行われる。名人戦はリーグ戦であり、竜王戦はトーナメント方式である。野球でいえば、名人戦はプロ野球型、竜王戦は高校野球型、ととりあえず考えていただいてそれほど大きな間違いはない。昨年の秋、羽生先生が渡辺明竜王に挑戦して勝った時には多いに留飲を下げた。冤罪によって三浦九段とその家族を苦しめ、将棋界を汚した渡辺明は強いらしいが、私は嫌いである。大体彼は謙虚なところがない。渡辺明のことはともかく、この結果、羽生義治先生は「永世竜王」の資格を得て、永世7冠を達成、国民栄誉賞を授与されたことは皆さんご存知でしょう。これで羽生先生のタイトル獲得は99期目となった。そもそも将棋のプロになるのは相当大変だし、その中でも多くの人はタイトルを取れずに引退していく。羽生先生のタイトル獲得99期目、というのはいかに凄い記録であるか理解していただけるものと思う。
今回の名人挑戦者を決めるAリーグは大変なことになった。上位6人が同じ成績で並んでしまったのである。現在A級のプロの方11名(将棋の頂点を極めている)にはほとんど実力に差がないのだろう。その中で羽生先生がプレーオフを制し、現在佐藤天彦名人に挑戦しているということである。もし羽生先生が今年名人戦を制した場合、「名人在位10期」「タイトル獲得100期」という信じられない記録を持つことになる。そこで名人戦が始まると、もう仕事など手につかず速報にかじりついているのであるが、今のところ羽生竜王2勝、佐藤天彦名人1勝と羽生先生のリードである。
私が羽生義治先生を応援している理由の一つは、彼はもう47歳で普通なら現役を退いてもおかしくない年齢だからである。私は羽生先生よりもう一回り上ではないにしても、大体同世代に近い。将棋の世界では一番強いのは20代後半~30代前半くらいであって、現に佐藤天彦名人は30歳である。私も体力のピークは35歳前後であって、40歳の時にはもう体力の衰えをはっきり感じていた。もっとも霜山徳爾先生やユングの言うように、精神療法の世界では40歳を超えないと一人前にはなれない。それでもやはり私の体力は相当に落ちているのを、老獪な知恵(のようなもの)で精神療法を続けている。精神療法についてもう少し書くと、若い頃にしか出来ない「治したいと思う力」「体力」などを武器にしたいくばくか粗削りのする精神療法もあり、これは若くて才能のある人にしか出来ない。精神療法も、心理学者の年ともに変わってくるということである。今、公認心理師試験の受験勉強をしているが、確かに高校受験、大学受験の時とは随分様子が違う。
話しはあちこち飛んだが、47歳で竜王を奪還し、さらに20歳ほども年下の佐藤天彦名人に挑戦している羽生義治という人に、年齢を言いわけにしない精神的強さを感じて感動しており、私もそれにあやかりたいと思っている。「年をとったのだから、思うように勉強が出来なかったので、公認心理師試験に落ちた」などという自己憐憫に満ちた、恥ずかしい言い訳だけはしたくない。
真に強い人は、年齢など言いわけにしないのである。
(もう羽生先生が名人になれるだけの流れを作ってしまっているので、今年の名人位は羽生先生で決まりであろう。そこで2~3年名人を防衛し続ければ、故・米長邦雄永世棋聖の持っている最年長名人(49歳)の記録を超える可能性が見えてくる。私は羽生先生にこの記録も破ってほしい。何にしても羽生義治という人と同じ時代を生きていることに、私は真に幸福を感じている。)
(追伸2;書き忘れていたけれど、「名人戦」も「竜王戦」も決勝戦は7局行われ、最初に4勝した方が優勝というシステムです。野球でいうと「日本シリーズ」と同じ。今羽生先生が2勝1敗だから、残り4局で2勝すれば新しい「名人」になれる。
羽生先生の連勝に期待しましょう)