B I N 's B A R -34ページ目

相性の話・2

楽器とバンドとの相性も勿論だが、自分との相性も厳然と存在する。ルックスも好みで弾き易い、だが音がいまいち、またはその逆で音は最高なのだがなんでこのルックス、という楽器もある。
私に取って意外だったのがESPのボトムライン。店員に勧められるまま試奏してみると、見た目に反して端正な音、とても使えるプリアンプを内蔵しており、重量も気にならずハイポジションまでスムーズに指が届く弾き易さも文句なし。だがあのクワガタムシのようなルックスにはどうしても馴染めず、未だに購入には至っていない。
もうひとつは今年の始めに出会ったFERNANDES製プレシジョン・ベースのレプリカ。かなり弾き込まれた80年代の楽器で、ボディがジャスパーウッドと思われるが一面の細かいフレイム材2ピース。ネックもしっかりしており見るからに太い音の出そうな貫禄。がしかしこれが試してみたら全く期待外れ。去勢されたような気抜けした音はとても使えるものではなかった。
楽器の音は総合的なものであるから、ピックアップさえ替えればどうにかなるというものでもない。また、見た目はともかく音さえよければ録音だけに使えばという話はよく聞くがそれも精神衛生上よろしくない。弾いてゆくうちに見慣れてくるとか体が馴染んでくるとか、そう言うレベルの話なら問題ないのだが。
これだから楽器は難しい。

ギターシンセの話・3

問題はMIDI音源のコントローラーであるギター本体である。音はシンセから出すのだからギターは何でもよいと思われがちだがここに落とし穴がある。自分の奏法が活かされるようなギターでないとギター・シンセもその能力を発揮できない。キーボーディストが鍵盤の質にこだわるのと同じようなものである。
初めからギター・シンセ対応とされているGodin社製等のギターを使うならそのギターに慣れてゆくしか選択肢はないが、永年連れ添った自分の愛器をギター・シンセ化しようと思うとイバラの道が始まる。その場合、最も一般的なピックアップであるROLAND社のGK-3を自分のギターに載せることになるのであるが、これが一筋縄では行かない。弦とポール・ピースの適正な距離を決め、指板のアールに合わせてピックアップ自体の位置(弦毎には出来ない!)を調整するのだがそれがなかなか難しいのである。ギター・シンセ本体でも弦毎のピックアップ感度は調整できるのだがやはりそれはキチンとした調整あってのこと。スペーサーを自作したり、スプリングをゴムパッドに交換してみたり、細かい作業が必要になる。
ピエゾ・ピックアップならブリッジ・サドルとピックアップが一体化しているのでそういった調整は必要なくなるのだが、ビブラート・アームを使う場合アーム・ダウンした際にピックアップと弦が離れるため音切れ等の不都合が生じる。
色々試した結果、私はSound Garage製のアッセンブリーを積んだMetal Driver社のギターをメインに使っている。これはマグネチック・ピックアップ兼用のデバイデッド・ピックアップである。音質もそこそこ、過去試した中では最も使い易いピックアップと言える。ただギター本体の作りはお世辞にもよいとは言えず、今度はこっちにもかなり手を入れる必要が。なかなかうまくは行かないものである。

相性の話

TRIODE結成時にどんな楽器をメインにするか悩み、リハスタに複数のベースを持参して試していた時期があった。その頃は今よりももっとロック色が強く、ギタリストもJacksonやIbanezを使っていた。この2本の楽器に共通しているのは2基のハムバッキング・ピックアップを搭載しているということだった。これがバンド・サウンドを考える鍵になった。ベーシストはどうしてもアンサンブルを重要視する種族である。自分の音というよりもバンドの中に溶け込む音というものを考えてしまうのである。こういったハードロック向けのギター(偏見だろうか)に合わせるには、と少しハイミッド寄りの音がする楽器を選んだ。その頃メインにしていたのはIbanez(GWB1)やAtlier Z(M335)である。どちらもアクティブだがハイに特徴があり、アンサンブルを重低音で支えるという楽器ではなかった。エフェクター等も使いカラフルなサウンド作りをモットーとした。
ほどなくギター・スタイルもコンテンポラリー系に移りそれに合わせギター本体もPRSに替わり以降定番となった。といいうよりPRSによって彼の音が確立したと言ってもよい。ギターのトーンは同じハムバッキングでも今までとは全くイメージの違うものであり、合わせてみるとどうしてもローミッドが欲しくなる。かといって例えばプレベという感じではない。その頃はバンド自体も即興演奏スタイルを追求していたので埋もれてしまうことは許されなかった。ボトムも支えられてかつ埋もれない楽器、リハ毎に違う楽器を持ち込み感想を訊き、改造までしたがある楽器はアンサンブル向きだが自分のソロに適した音は出ず、またある楽器はその逆。試行錯誤の結果最後に残ったのはZONだった。ギターがいくら暴れても、この楽器なら自分のスタイルを崩さずにアンサンブルを支えることが出来る。その直感は当たった。後に実験的に別の楽器を何度か持ち込んだことがあったがどれも不評であった。もう3人の中にはこの音が「ベースの音」として刷り込まれているのだろう。バンドに必要な音というのはそう言うものである。自分の目指すスタイルを楽器が表現できているか、それが楽器を選ぶ際に最優先されるべき事項だろう。勿論それとルックスが両立すれば最高なのだが

ジャム・バンド

ザ・ベイズの来日公演(朝日新聞15日夕刊)の評を読むとジャム・バンドという形態(あるいはジャンル)もだいぶ認知されて来た感がある。思えば私の所属するTRIODEはジャム・バンドという言葉がまだ一般的ではなかった時期からそのスタイルを貫いて来た。それは我々の掲げている「ノー・リハーサル/ノー・ミーティング」というコンセプトがよく表しているように、出身ジャンルの違う3人が、その場で感じる侭を決められた時間内で(ライヴハウスとの関係上それだけは決めごとにしている)持ちうる全ての音を以て埋め尽くしてゆくという即興性の高いものだ。ギター+ベース+ドラム(加えさせて貰えばエフェクター等も殆ど使わず楽器とアンプだけで)というトリオ編成であることは必要最小編成であり、ロック・ミュージックに於ける最もプリミティヴな姿を模索したいというところから決められたものである。
とは言え現在はメンバーの2人がバック・バンド業務に忙しく思うように活動が進まない状況。年内にはライヴ復活の予定だが問題は演奏場所である。まだまだこのスタイルのバンドを受け入れてくれるハコは少ない。

マルチ・エフェクター

(前項より続き)
というわけで今回のライヴでは今や誰も見向きもしなくなったラック・エフェクターを再生させてみることにした。とはいえ運搬のこともあり、またそれほどエフェクトを多用するわけでもないので大掛かりなシステムは考えない。手持ちのもので考えるに楽器からミキサー(もしくはプリアンプ)を介してエフェクターに接続するという最低限のシステムである。
今やもう手に入れにくいものばかりだがエフェクターの候補は次の2機種である。

・ZOOM 9050
これでしか出ない音が多々あり個人的には手放せない名機。空間系に繊細なトーンは求められないがフィルター、モジュレーション系は絶品。それと意外と軽視されているような気がするが、同社の製品には必ずと言っていい程搭載されているZNRというノイズリダクション・システムは秀逸。
・SONY MP-5
空間系の名機として知られるがSON○タイマーが発動したのかそろそろ動作は怪しい。同社のR7直系のリヴァーブは美しいがディレイ音は少し甘めである。元々キーボード用として設計されたらしいが、ベースに使うには最適な空間系マルチではないかと思っている。

お気づきと思うが2機種ともハーフラックである。ハーフラックというのがミソで、より小さなシステムが構築できる。今や市場では絶滅寸前の規格だが、ギター・ケースのポケットにも放り込め、なかなか都合の良いサイズである。専用のコントローラーを使えばフロア・マルチ的にも使えるので一時はコントローラー共々エフェクターケースに収め、足元に置いていたこともある。
個人的にスタジオ向けの機器をライヴに使うことに関しては殆ど意味のないことと思っている。というのも一般的なライヴハウスの環境に於いてオーディオ性能を追求することは(程度の差こそあれ)極めて難しいと思うからだ。それよりも確実な動作、堅牢な構造、簡便な操作性を優先したい。今回上げた2機種はその意味で(自分にとって)ライヴに最適なエフェクターと言えるのである。