「お前、何でセーター着てんの?」



休み時間

遼が、美歌の腕をぐいっとつかんで言った。

真夏ですごく暑いのに、美歌は制服の上からセーターを着ていた。



「別に…」

と、うつむきながら答える美歌を

「ちょっと来い」と遼はトイレの個室へと連れていった。



私は

確かにおかしいなあ…と思いながら

ついて行く。

私が一緒に来ることに、遼は何も言わなかった。



狭い個室に3人で入ると

遼はすぐに美歌のセーターをまくった。

そこには、生々しい何かで切りつけたような傷がいっぱいあった。



イバラの道を歩いてきたみたいだった。

形も角度も全く統一性のない傷が

何十とそこにはあった。



傷の上から切りつけて、十字架のような形になっている傷もある。




その傷を見た遼は

「消毒しに行こう。これ…残るかもしれないな。」と

有無を言わさず、といった感じで

美歌を保健室へ連れて行った。


そして、

保健室の先生に美歌を預け

「とりあえず、授業に戻ろう。チャイムが鳴る。

 美歌、終わったら戻っておいで。」

と言って私と一緒に教室へ向かった。




何がなんだか、わからなかった。

私は、リストカットのリの字も知らなかったから。

遼は「あれは…ハサミかな。たぶん。」とつぶやいていた。





後で美歌が

ハサミでやった、と言ったとき

すごいビックリしたのを覚えてる。