いろいろ野菜のピクルスと、イケメンなワイン | 美味と物語 ~ライターびんこのブログ~

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山形生まれなのに、いきなり沖縄に15年住みました!
その後やってきた大都会の東京は、いろいろタイヘン!!
元・琉球放送報道部リポーターのびんこがお届けする、
おいしいもののブログです♪

 

「いらっしゃいませ。ちょっとお久しぶりじゃないですか?」

いつものワインバルへ行くと、スタッフがニッコリと笑顔で迎えてくれた。

「久しぶりかなぁ。たぶん、1週間くらいしか経っていないと思うよ」

「ああ、そうでしたか。それでも、久しぶりな感じがしますねぇ」

 

おそらく、この店のスタッフがそう思うのは、私の来店頻度がものすごく高いからだ。

最近は1週間に一度程度になったが、

以前は、まるで家に帰るように、ほぼ毎日通っていた時もある。

 

その日は、この店の定番メニュー「野菜のピクルス」を選んだ。

キュウリ、ニンジン、ダイコン、パプリカ、カリフラワー、ヤングコーン、そしてミョウガと、

いろんな野菜が入っていて、彩り鮮やか。

白ワインと白ワインビネガーを使ったピクルス液が酸っぱすぎず、

サラダ感覚で食べられるピクルスだ。

 

「これに合う白ワインをお願いします」

「はい、かしこまりました」

スタッフがそう言って用意してくれた白ワインのボトルは、

よく見る750ml入りのボトルよりも細長く、少し背の高い形だった。

ボトルの色は黒で、少し高さがあるのに、ラベルは小さめ。とてもシンプルなデザインだ。

「おお、なんだかシュッとしたボトルだねぇ」

「かっこいいですよね」

 

シュッとしたボトルからグラスに注ぐと、色はやや黄色みがかっている。

「香りはちょっと樽っぽくて、味は華やかな感じです」

飲んでみると、確かに熟成した香りと、華のような香りがほどよく混ざった、なんとも美しい味がした。

 

「あ、それ、私もさっき飲んだんですけど、

ボトルはさわやかイケメンなのに、飲むとちょっと派手な感じがしますよね」

隣席の女性が話しかけてきた。凛とした印象の、いわばハンサムウーマンである。

「え?イケメンなボトル、ですか…?」

私はキョトンとして彼女に言った。

「ええ。シュッとしたイケメンな感じがしませんか、そのボトル。味は華やかで派手だけど。

私、ワインには詳しくないので、ソムリエさんの味の表現が、ちょっと苦手で」

彼女は、少し困ったように笑うと、こう続けた。

「太陽のような香りとか、春の土の味とか、言われてもピンとこないんですよ。

だから、ワインを人にたとえると、もっとイメージが湧くんじゃないかなぁと思って」

「ああ、なるほど~。それでイケメンなボトル、ですね」

「そうなんです。華やかなワインだったら、マリー・アントワネットみたいとか…どうですかね?」

「それはいいかも!わかりやすくなりますね」

「ま、ボトルの見た目はイケメンなのに、味わったらマリー・アントワネットって、ある意味すごいですけどね」

「たしかに~!」

スタッフも交えて、私たちは3人で大笑いした。

 

ワインも日本酒も「わからないから飲まない」という人も少なくない。

私は、お酒はウンチクよりも「おいしければいい」と思っているので、好きな割には詳しくない。

一方で、きちんと味わって、「このおつまみにはコレ」くらいのことは言えるようになりたいとは思うが、

特にワインは、普段からなじみの薄いフランス語やイタリア語の銘柄が多いから、なかなか覚えられないのだ。

 

その夜は、隣席の彼女が教えてくれたように、飲んでいるワインのボトルや味を人に例えてみた。

「これはPOPな感じの女子みたいなボトル」

「キリッとさわやかなテニス男子みたいな味」

「まったり色っぽい銀座のおねえさんみたいな味」

味の表現が合っているかどうかはわからないが、他の常連さんも巻込んで場が盛り上がり、また大笑いした。

銘柄を覚えられなくても、楽しく飲める。これがお酒の何よりの良さだと、改めて思った。