美味と物語 ~ライターびんこのブログ~

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山形生まれなのに、いきなり沖縄に15年住みました!
その後やってきた大都会の東京は、いろいろタイヘン!!
元・琉球放送報道部リポーターのびんこがお届けする、
仕事と、美味と、言葉のブログです♪

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その日、私は忘年会の帰りに、最寄り駅にある隠れ家居酒屋に立ち寄った。

「いらっしゃいませ。今日は遅いですね」

「そうなんです。忘年会だったので」

カウンター席に通され、コートを脱ぎながら、

「今日は熱燗をお願いします」と注文した。

 

「あれ?お酒、召し上がってきたんじゃないんですか?」

「そうなんですけど、駅から歩いてくる間に、また冷えちゃって」

「ま~、今日も寒いですからねぇ」

そう言いながら、店長はあったかいおしぼりを出してくれた。冷えた指先に、あったかいおしぼりはありがたい。

「ふぅ~。あ、それから、6点盛りをお願いします」

「はい、かしこまりました」

 

「6点盛り」というのは、酒の肴の6点盛りである。

この店のおばんざいのような酒の肴が日替わりで6点登場する。

その日の肴は、ワカサギの南蛮漬け、子持ち昆布、カキのオイル漬け、エノキの煮物などであった。

 

「はい、お待たせしました」

お燗酒が出てくるのとほぼ同時に、6点盛りがやってきた。

どの順番で食べようかと私が迷っていると、後ろのテーブル席から声が聞こえた。

 

「オレは上から目線なんかじゃないよ!」

「ホラ、その言い方が上から目線じゃないですか!」

「違うってば!」

職場の忘年会か、または忘年会の二次会なのだろう。

4~5人のグループがいるテーブル席だ。

ケンカというほどではないが、お酒が入った勢いもあるようで、

上司か先輩と思しき男性が、部下か後輩と思しき女性に向かって、ちょっと大きな声を出している。

 

…と思えば隣席では、こちらも職場の仲間と思われる女性2人が、仕事の話をしていた。

長い髪をシンプルにまとめた女性が、おっとりした女性に発破をかけている。

「だからね、そこが違うと思うんだなぁ!」

「はぁ…」

「在庫のことを考えると、もうちょっと何とかしなきゃいけないわけじゃない?」

「そうですね」

「それをもっと、具体的によく考えないとさ~!」

こちらも、お酒が入った勢いで、ちょっと大きな声になっていた。

 

人はなぜ、お酒が入るとこうも感情的になるのだろうか。

感情的にしゃべればしゃべるほど、聞いている方は聞く耳をもたなくなる。

きっと、テーブル席の男性も隣席の女性も、

普段は仕事のデキる人で、こんなにも感情的にしゃべったりしないはずだ。

こういう時、お酒は罪つくりだなぁ、と思う。

 

そういえば、どこかで読んだ文章にこんな感じのことが書いてあった。

「お酒は、感情を増幅させるものだ。

うれしい時には、うれしさを増幅させるし、

悲しい時には、悲しさを増幅させる。

だから、悲しい時にはお酒を飲み過ぎない方がいい」

これに倣って言えば、怒っている時のお酒は、怒りを増幅させるということになる。

 

私が飲食店でお酒を飲むときは、圧倒的にひとり飲みが多い。

だから、周囲のお客さんたちが話していることが耳に入ってくる。

それをこうしてブログのネタにしているわけだが、

ごくたまに、周囲のお客さんたちの声が耳に入らない時がある。

 

それは、自分がものすごく悲しい時か、ものすごく怒っている時だ。

アタマの中で、その悲しみや怒りがグルグル回っていて、そのことしか考えられなくなっているのだ。

その悲しみや怒りを鎮めようと思って、お酒を飲むわけだが、

言われてみれば、その感情がアタマの中をグルグル回って、結局は増幅しているような気がする。

 

その日は、周囲のお客さんたちの、ちょっと感情的になった声が耳に入ってきた。

人の振り見て、我が振り直せ。

お酒を感情の増幅装置と考えるなら、うれしい感情を増幅させよう。

お燗酒を飲みながらしみじみとそう思った。

 

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