~Ⅳ ③~ なぜだか以前にも…… こういう会話をした気がするが、 思い出せない。 桜花が目を丸くして、 それからくすくすと笑う。 「それで?何か飲む?」 頷いてビールと言いかけて 考える紫龍。 夕食後に大切な話を控えているのに、 ビールはやめるべきだろうか? 「わかった、ビールね。 着替えて食事よね?待ってるわ」 自分の部屋に向かいかけて、 振り向いて尋ねる。 「桜花、 いったい何がそんなにおかしいんだ? 君はさっきから笑ってばかりだ」 怒ったようなすねたような顔の紫龍に、 桜花が笑い出す。 「だって、あなたさっきから 言いかけては止めてばかりよ? 私相手に緊張しているみたいだから。 ビールぐらい良いじゃない。 仕事の後のビールが一番美味しいって いつも言っていたでしょう?」 「相手が君だから……」 言いかけて止めて、 桜花の言うとおりだと 苦笑する紫龍。 「着替えてくる」 そうだ、 桜花が帰って来たのだ。 後ろで桜花のもつグラスの音が、 カチカチと音を立てる。 そうだ、 桜花は水が好きだった。 桜花がアルコールを飲むところを 見たことが無い。 普通の水さえ、 桜花がグラスに入れて飲むと 特別な飲み物に見えてくる。 そうだ、 何も知らないわけじゃない。 知っていることも少しはある。 忘れていただけなのだ。 桜花がいると、 七年間の空白が一気に埋まり、 昨日のことのように思い出せるから 不思議だった。 ブログランキング『Girls Power』