~Ⅲ ⑦~ 「桜花、桜花、 ちょっと起きてくれないか? 出勤する前に、 君の左手を診せてくれ」 「ん~」 首を振る桜花。 様子が変だ。 「桜花?」 「……眠る前に…… 鎮痛剤を飲んだから、 帰って来てからに ……してくれない?」 「そんなに痛むのか?」 首を振る桜花。 「鎮痛剤嫌いなの…… 二日酔いみたいに、 グルグルする…… お酒飲んだことないけど」 「嫌いな鎮痛剤を飲むほど 痛いのか?」 桜花の沈黙が怖かった。 「桜花、僕に左手を診せてくれ」 「大丈夫、私も医師だもの。 自分のことくらい診られるわ」 「それはわかっている。 だが僕は二度と こんなことをしないために、 自分が君に何をしたのかを 自覚しなければいけない」 近づこうとする紫龍を、 右手で制し首を振る桜花。 「ちょっと待って、今考えるから」 しきりに頭を振って、 思考力を回復させようとする桜花。 「いい、桜花。 何も考えなくていいんだ。 君は何も悪くない。 考える必要などないんだ。 考えなくてはいけないのは、 僕なんだから」
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