~Ⅲ ①~ 「紫龍?今どこにいるの?ごめんなさい。 私ここはあなたのセカンドハウスだとばかり 思っていたわ」 なんと言って切り出そうか考える。 紫龍が帰ると言えば、 桜花は出て行くというだろう。 だが桜花には一緒にいて欲しかった。 「家……ね?私があなたと代わるから、 あなたはちゃんとここで眠ってちょうだい」 とんでもなかった、 周りを見回し青ざめる。 桜花は紫龍がこの家を、 どんなに大切にしていたかを知っている。 その家がこの有様では、 またあのわけのわからない思い込みが 深くなってしまう。 だが、 桜花に嘘は通用しない。 それに、 その場しのぎの嘘もごめんだった。 自然溜息が漏れる。 自分の激情が怖かった。 まったく後先を考えない。 桜花が帰ってくることを信じていながら、 桜花がこの家の有様を見たら どう思うかなんて 露ほども考えていなかったなんて…… 少しずつ七年前の紫龍と桜花の関係が 見え出してきていた。
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