~プロローグ ⑤~ スタッフはすでに返した。 彼らには彼らの仕事がある。 桜花はフリーの医師をしていた。 七年前は、 紫龍の元を離れることが出来ずに 断っていた仕事だった。 七年前の出来事は、 桜花の頭の隅にあった予感が、 形になっただけのことだった。 紫龍にとっては、 突然の出来事だったに違いない。 でも桜花には違った。 ただそれだけだった。 「彼女、 紫龍をものにできなかったのね」 小さな吐息が桜花の口からもれる。 桜花の左薬指の指輪がきらりと光る。 「これじゃあ私、 本当に悪者じゃない」 大きな吐息と共に病院の裏にある スタッフ専用の扉を開けた瞬間、 「ドクター・桜花様ですね?」 「?」 名前を呼ばれて振り向くと、 両腕を二人の大男に抱えられ、 抵抗する間もなく、 待っていたリムジンに乗せられた。
![]()
