Ⅱ ⑦ 「そうよ?だってわたしはこの五年間、 ハデスのおかげで眠ることも制限されていたわ。 きちんと眠ることができたのは、 あなたに原稿を渡した後に 疲労困憊で倒れ込むように眠る二日くらいで、 目覚めるともうすでにハデスは 次の作品の用意をしてあるのですもの」 フィンはこれまでの五年間を振り返る。 確かにキリーはいつも倒れてしまいそうなほど張りつめていた。 苦笑しながらキリーは続ける。 「わたし、 本当は毎月あなたに会うのが死ぬほど辛くて恥ずかしかったのよ」 頬を赤らめてとんでもないことを言うキリー。 「だって、そうでしょう? 一人前の女性が化粧する暇もなく 素顔をさらして不眠不休のまま髪を振り乱して すてきな男性に会わなくてはいけないなんて拷問だわ」 フィンはこれだけは伝えなくてはと思い言葉をはさむ。 「キリー、きみはいつもきれいだったよ。 化粧なんてしていなくたって、 眠っていなくて目の下にくまがあってもね」 とウィンクしてみせるフィンを眩しそうに見つめるキリー。 「そう、あなたは優しかった。 拷問を乗り越えてでもあなたとすごす時間は わたしにはとても大切なひとときだった、 例え一ヶ月のうちの数時間でも」 キリーがフィンと同じ気持ちだったことを 心のそこから嬉しく思った。 「そして、わたしはわかったの。 フィン、あなたを愛しているけど、 それはかけがえのない大切な家族に対する愛情なんだって。 血とか恋愛だとか、 そういうものを一気に飛び越えて心が繋がっちゃったんだって」 一気に話しおえてコーヒーをまた一口含むキリー。 「僕もきみを愛しているよキリー。 でも僕はきみが飛び越えてしまった恋愛を一緒にしたかった。 きみを恋人にしたかった」 吐息まじりに告白するフィンにくすっと微笑むキリー。 ☆本を出版するチャンス☆