Ⅰ ① 清々しい朝だった。 レースのカーテンを通して優しい光が部屋を明るく照らす。 「うーん」と伸びをして手足がちゃんと動くか確かめると キリーはグリーンの瞳をそっとあける。 腕の点滴を抜いてパックにさす、 後で医師のケインが片づけてくれるだろう。 そっと床に足をつけて体を支えられるか確かめ、 次に少し歩いて体調を見るが大丈夫そうだ。 そのままシャワー室に向かい温かいお湯にあたりながら 硬くなった身体をマッサージでほぐしていった。 「いったいどのぐらい眠っていたのだろう?」 二、三日眠ったかのような爽快感があった。 お腹がすいたのでシャワー室を出ると ベッドの横のサイドテーブルに朝食が用意されていた。 体力がないのを考えて運ばれた朝食と、 久しぶりの食事なので消化の良いメニューなのがありがたい。 温かいスープを口に運びながら、 ちらりと書斎を見る。 ハデスは次の作品をまだ用意していないようだ。 今日はのんびりとした一日が過ごせそうだった。 クローゼットを開けると、 五年前に買った服ばかりなのに思わず吐息がでる。 とりあえず手頃なティーシャツとジーンズに手を伸ばして 「服が欲しいわね」と何気に呟いて苦笑する。 結構切実な願いだった。 この五年間服を含めてすべて人任せだったのだ。 せめて着るものくらい自分で買いに行きたい、 暇があればだけど…… 五年前、突然ハデスがキリーの前に現れ有無を言わさず キリーをアシスタントにした。 ハデスの考えた物語を原稿にするのが仕事だ。 始めた頃は楽しかった。 ハデスの考え出す世界はとてもスリリングでハラハラどきどきした。 多分……とキリーは考える。 「ハデスの一番のファンは自分だったに違いない」 今でも、ハデスの作品は好きだった。 ☆本を出版するチャンス☆ ![]()