プロローグ ⑥ 「わかった」とでも言うかのようにフィンもうなずき キリーの額に軽いキスをした。 その時、 ハデスの名前が呼ばれ弾かれたように振り向き 歩き始めるフィンの背中に迷いはなかった。 不安そうに見送るキリー。 「栄誉ある賞を受けるのに、何をそんなに不安そうにしているんだい?」 アレックスはフィンが遠ざかるのを確認しつつ キリーに近づき彼女の背後で思ったことを口にして、 思ったとおりの行動をしただけだった。 彼女の不安を取り除いてあげようとフィンがしたのと同じように 彼女の両肩にそっと手をおいただけ、 それだけだったのだが、 キリーの肩に触れたとたんそれは間違いだったことに 気がついたがもう手遅れだった。 二人の全身を何かが貫いた。 甘く鋭い痛み。 キリーはびくっと身体を震わせてとっさに振り向きアレックスを見た。 アレックスの行動に驚いただけかとも思ったが、 それだけではない何かが瞳に宿っていた。 信じられないというような戸惑いと、 もうひとつの感情が表れるより先に、 キリーが首を横に振る前にアレックスは キリーをそのたくましい胸に抱きしめていた。 震えるキリー。 会場が一斉にざわめいたので一瞬ここがどこなのかを思い出し はっと我に返るアレックス。 キリーを抱きしめる力も怯んだが、 会場のざわめきはアレックスとキリーがもたらしたものではなかった。 みんな壇上のフィンの話を一言ももらさないように息を呑んで聞いている。 「この度は輝かしい賞をハデスに頂きましたことを 大変光栄に思っております。 代理ではございますが、 ハデスに代わりまして心からお礼を申し上げます。」 会場を見回すフィンはふとアレックスと目があい、 続いてキリーと視線を交わす。 ☆本を出版するチャンス☆ ![]()