現在美ナ子は負傷した肩の治療のため、ベルギー人の理学療法士よりリハビリを受けています。彼をはじめ、ここで出会う医師達は美ナ子に毎回笑いと胸に残る言葉を残してくれる頼もしい方たちばかり。そんなわけで、時折このブログにてその会話の断片を綴らせていただきます。これまでのお話はこちら

理学療法士「じゃ低周波かけるからこのまま10分そうしててね。ビーヴァルヒィ聴きたい?

美ナ子  「それ何ですか?

理学療法士「ヴィイヴァルデ。作曲家」

美ナ子  「ああ、ヴィヴァルディ。って何人デス?」

理学療法士「名前からあててごらんよ。パガニーニはイタリア。ハイドンはドイツ、ショパンはポーランド」

美ナ子  「先生と違ってわたしはヨーロッパ人じゃありませんから、国籍を名前で識別するなんて、無理ですよ」

理学療法士「モーザァルトは?」

美ナ子  「オーストリア」

理学療法士「ヴィイヴァルディは?」

美ナ子  「さあ、ドイツ人?」

理学療法士「ノン。ドイツ人はワグネール(ワーグナー)」

美ナ子  「じゃあイタリア人?」

理学療法士「イエース。これは非常にライトでいい音楽デスネー

美ナ子  「ライトですか?宮廷音楽に聞こえますけど?

理学療法士「ブラームスのように重々しくない。日本人ってモーザァルト好きらしいね

美ナ子  「ああ、神戸ビーフはモーツァルトを聴かせて育てるそうですよ」

理学療法士「ほぉ、美味しくするために?」

美ナ子  「ええ、鍼やマッサージも受けてる牛の姿をテレビで観たことがあります」

理学療法士「じゃあ次生まれ変わるなら神戸牛に生まれ変わりたい。ホットパック置くよ」

美ナ子  「本心ですか? マッサージを受けてモーツァルトを聴いておいしいご飯をたべて太った後は・・・」

理学療法士「それはそれで誰かの糧になるのだから、まあ、悪くない人生だよ」

美ナ子  「わたしはイヤですよ、そんな人生。ところで先生お顔ネコに引っ掻かれたんですか?」

理学療法士「いや、ヤケド虫

美ナ子  「ベトナムの虫ですか?」

理学療法士「そう、赤と黒い胴体のアリみたいな毒虫。ヤケド虫一匹でハツカネズミが死ぬほどの猛毒なんだよ!こいつのせいでしばらくひげが剃れない。ハイ、では今度は超音波かけるよ」

美ナ子  「じゃあもしその毒虫を食べたら死に至りマスか?

理学療法士「さあ、でも何匹か捕まえて目障りな人の部屋に入れたら・・・その人は消えるかもね、ハッハッハッ。頼むから僕が入れ知恵したとは他言しないでくれよ。(ホットパックを外しながら)で、ARE YOU COOKED

美ナ子  「もうミディアム通り越してウェルダンですよ 結構今日のは熱かったんですから」

理学療法士「ハイ、オツカレサマデシタ。デハマタライシュウ」

そしていつものように握手でお別れしました。彼とはもう何度も握手を繰り返してるのですが、この習慣を忘れてしまい、いつも大きな掌を差し出されるたびに毎回はっと顔をあげて慌てて手を握り返します。

アメリカにいた大学時代は美ナ子にとっても握手は日常茶飯事でした。ですから、大学を卒業して日本の出版社で働き始めた頃は、名刺交換の度に男女問わず相手に手を差し出す習慣がなかなか抜けず、あるとき新入社員の男子と握手していたら、当時の編集長に「何そこで仲良く手つないでるの?」とからかわれたことがあります。しかし、しばらくアジアにいるうちに、いつの間にか握手と疎遠になってしまいました。

律儀な理学療法士たちの挨拶を思い出したら、果たして自分はきちんと人の目をみて誠意のある挨拶をしているだろうかと、ふと不安になりました。

どんな形であれ、心のこもった挨拶というのは気持ちのいいものです。

あんな風に、しっかりと相手の目を見て挨拶を交わせるように心がけようと誓った今日のリハビリテーションでした

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車窓からの一枚キラキラ


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さっき会社から電話があったので折り返しました。

電話口の声「Hello RT International」

美ナ子        「あっ、えっ...(誰?誰だ、新人の若い子?)」

電話口の声 「はぁ~い、もしもしぃ

美ナ子        「あのっ、美ナ子デスが…」

電話口の声 「あらぁ~ラブラブドキドキ音譜ビックリマークキスマーク

美ナ子        「もしかして、編集長デスか? 声美しすぎてビビりましたよ」

電話口の声  「いやぁん、声だけじゃないですよぉラブラブ恋の矢

美ナ子         「ガーンははっ」

ランチタイムで社員が休憩中だったため、今ハノイに来ている編集長がたまたま電話をとったようなのです。

うちの編集長は男脳の性格な割りに、電話ではワンオクターブ高いブリブリ声で話すため、声だけ聴くとどこのウブなお嬢ちゃんかと思うほどです。美ナ子ですら編集長の電話の美声にはクラクラするくらいですから、地声を知らない多くの人を魅了してきたことでしょう。

あの可愛い声とは裏腹に、ビジネスでは戦闘系の彼女を知ってる美ナ子としては、毎回編集長の「はーいもしぃもしぃ」を耳にする度、密かに「…いったいどこの誰よ?」と言いたくなるのですが、そのブリブリ声も含めてツッコミどころ満載な彼女に飽きさせられることはありませんにひひ

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美ナ子は現在肩を負傷して病院に通っており、ベルギー人の理学医療士からリハビリ訓練を受けています。というわけで今日もリハビリに行ってきました。

今日は「病院でリハビリテーションの続きです。


理学療法士 「具合はどう?」

美ナ子   「少し良くなりました。先生あのね、あそこの沼に睡蓮のつぼみがでてるんです

理学療法士 「あっそう。ハイ、この状態で腕あげてみて。痛くない?」

美ナ子   「あれ、蓮じゃなくて、睡蓮なんですよ!

理学療法士 「へえ。今度は横に挙げてみて。で、ちゃんとウォーター飲んでますか?
美ナ子   「飲んでますよ。ココナッツ・ウォーター

理学療法士 「MIZUを飲まなきゃだめと言ったよね? では息を吸ってー、肩甲骨寄せる」

美ナ子   「でも先生、お水をたくさん飲むでしょう。するとトイレにいって水を流すでしょ? 水を飲んだ分だけ汗をたくさんかくでしょ、するとシャワーを浴びて服を洗濯する回数も増えるわけじゃないデスか。飲んだ以上に余計なお水を使うことになって、地球環境によくないと思うんです。お水を飲まない方がエコロジカルですよ」

理学療法士 「へ理屈だよ。本当によくなりたいなら、こうゆう小さな心がけが大事なのに。じゃ、ホットパック置くよ。熱くない?」

美ナ子   「平気。いまかかってる曲、スペイン音楽デスか

理学療法士 「いいや、これはセネガルの曲」

美ナ子   「セネガルってどこですか」

理学療法士 「東アフリカ」

美ナ子   「東って、右と左どっち

理学療法士 「君にとっての右と左とは何を基準に言ってるのか知らないが、セネガルは東側だ。ここ、痛くない?」

美ナ子   「痛くないデス。セネガルって何語を話すんです?」

理学療法士 「フランス語、英語、セネガル語。じゃ、今度は両肘を固定したまま10回後ろに引いてみて。そう。OK。もう5回。気に入ったらなら、USBを持ってきたら次回コピーしてあげるよ。週末どうするの?」

美ナ子   「わたしのプライベートに関心があるんデスか?」

理学療法士 「いや、全くない

美ナ子   「じゃなんで訊くんですか。仕事はオフで女友達と会います。先生は?」

理学療法士 「土曜はここで患者を診て、日曜は自宅で個別セッション。仕事だよ。じゃあ、今日はここまで。次回までに課題のエクササイズ忘れずに。MIZU飲むように」

美ナ子   「分かってマス。じゃあ、ありがとうございました。また来週」

理学療法士は「マタライシュウ」と片言の日本語で言うと、どの患者にもそうするようにわたしと握手して去っていきました。と、別の医師に遭遇。

美ナ子   「先生、あそこの沼に咲いてるのって、睡蓮ですよ!

医師    「そうなんですか?」

美ナ子   「蓮じゃなくって、睡蓮なんです!!見てください」

医師    「はい、じゃ見にいきましょうか

お人好しにも外に出てくれた医師に、約50メートルほど先にある沼の前まで歩いてもらいました。 

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美ナ子   「ほら、ここの沼、柳が揺れて、睡蓮があって、まるでモネの池みたい!」(←実は行ったことない)

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医師    「さあ・・・

美ナ子   「フランスの情景が見えませんか

医師    「う~ん・・・

美ナ子   「明日あさってには開花しますよ!」

医師    「じゃあ後でゆっくり観ておきます。ではまた」

そう言って人の良い医師は会釈して去っていきました。その五分後、まだ沼をうろうろしていたら親しくしている韓国人の女友達(独身・36歳)に遭遇。

美ナ子   「ねえ、あそこに睡蓮浮いてるの知ってた?」

女友達   「睡蓮?」

美ナ子   「ほら、モネの絵にでてくる」

女友達   「ああ、あれね、ベトナム人は Thailand Lotus って呼ぶのよ」

美ナ子   「本当?これはベトナムには野生しないの?」

女友達   「多分、外国種の人口栽培じゃないかなあ」

美ナ子   「明日か明後日咲きそうだよね。明日一緒に見に来れる? 」

女友達   「いいよ」

美ナ子   「本当!? じゃカメラもってくる

というわけで、土曜日は女友達と睡蓮の沼でデートです




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2週間ほど前に、漆画家の安藤彩英子さんのトークイベントに行ってきました。彩英子さんには二年前に編集長の紹介で知り合って以来、いろいろな啓発を受けていて、才色兼備なのにも関わらず、男気のある戦闘系な性格に憧れを抱いていました。

今回最も印象的だったのは過ちを犯さないようにする日本人と、過ちを許すベトナム人という彩英子さん論です。

講演の最後に司会者が

「ハノイ在住歴の長い安藤さんから、ここにいる会場の皆さんへ、ベトナム生活に関するアドバイスを一言お願いします」

といった内容のコメントをしたときに

「ベトナム人って・・・結局はどれだけ人を許せるかにあると思います。日本人なら、どれだけ過ちを犯さず、どれだけ配慮が行き届いているかということが評価されますが、ここでは対極なわけです。だから、わたしが何か間違いをしでかして、びくびくしていると、“サエコ、何そんなこと気にしてるの?”と本人はあっけらかんとしている。これがベトナム人の度量の大きさを物語ってると思うのです(以下略)」

と回答したのです。

それを聞いて、ああ、このひとはベトナム人と純粋に向き合ってきたひとなのだと、芸術を通じてこの国の神髄を見てきたひとなのだと、深く動かされました。

二年前にご自宅へ取材訪問したときには、いつも人前でプレゼンするときとは違った黒いジーンズに黒いTシャツといった気軽な装いで迎え入れてくれた記憶があります。彩英子さんは職業柄、マニキュアをほどこさない短い素爪のことがほとんど。毎日漆や顔料に触れていながらどうしたらこんなにキレイで健康的な爪をしていられるのだろう、と彼女の白い手をじっとみていたものでした目

ソファに腰を下ろしたら、ちょっと待ってくださいね、と言ってお部屋の奥に行き、しばらくしてからバチャンのティーセットをもってきてテーブルに置くと、茶碗に急須のお茶を注ぎながらこうおっしゃったんです。

「このお茶は、先日京都で展示があったときに、人間国宝の工芸家の方が手土産にくださったご自分のブレンド茶なんです。非売品ですが『キクジロウブレンド』ってゆうそうですよ」

彩英子さんが工芸家の人間国宝と交友があることにも驚きましたが、もっと驚いたのはお茶の風味です。これまでの人生で出会った最も味わい深いお茶で、できるならお茶好きの母に飲ませてあげたいなあ、と思いつつも、今後これを超えるお茶と出逢うことはないであろうという無念さが一層深い余韻を残したものです。

そしてその時知ったのは、芸術家たちというのはお茶をいれるのがとびきり上手いということです。あの幻のキクジロウブレンドの芳醇さは、茶葉の質の良さも去ることながら、彩英子さんの淹れ方のぬかりなさにありました。

顔料の混ぜ方や下地となる漆板にも尋常ならぬこだわりを持つ彩英子さんです。お茶を淹れるにしても、茶種の特徴に合った茶葉の量、お湯の量、お湯の温度、抽出時間、水質や沸かし方などベストな加減を把握しているのでしょう。

小説家や彫刻家、書芸家に画家といった方々とお会いしてきて思うのは、忙しい作家さんは面倒くさがりやなのかと思いつつ、実は美味しいお茶を入れる手間は惜しみません。

お湯を沸かして、カップを温めて、急須に茶葉をいれて、茶葉を蒸らしてお茶を出すというのは、心にゆとりがないとできないものです。たとえ高級茶であれそうでないお茶であれ、お茶を淹れる手間をかけられるというのは精神的なゆとりの象徴であり、芸術家というのは最もそのゆとりが求められる代表格でしょう。逆に言えば、お茶を淹れる行為そのものが芸術であり、おいしいお茶を淹れられる人は芸術家とも言えます。

洗練された人こそおいしいお茶の淹れ方を知っているのだと思うと、その境地に近づきたいと思いつつも、美ナ子はティーパックに頼るずぼらな習慣を抜けきれそうにありません。きっとこれが一流芸術家と三流ライターの違いなのでしょうね。


画像はhttp://kaleidoscope.cultural-china.com/より



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