“カッコだけでギターが弾けない”と言われたエルヴィスだったが、実はギターは勿論、ピアノやベース、そしてドラムスを演奏することができた。
歌手としてデビューした当時の音源では、彼の弾くアコースティック・ギターの音をふんだんに聴くことができる。
彼のストロークは、彼特有のリズム感を反映しているもので、実に巧みなものだ。にもかかわらず、彼がカッコだけでギターが弾けないと思われてしまったのは、彼が主演する映画のなかで彼が演技に熱中するあまり、デタラメなコードを押さえていたことによるものである。
1968年に制作された彼のワンマン・ショーのテレビ・スペシャルのなかでは、エルヴィスはその独特なギターの腕前を披露している。
エルヴィスの初期のリード・ギタリストを務めたスコティ・ムーアは“彼の弾くギターはグループのサウンドにとって欠くことのできないものだった”と評している。
また後期のリード・ギタリストだったジェームズ・バートンも“エルヴィスはギターがうまかった”、と述べている。
ギターだけではない。彼はピアノもうまかった。
〈オールド・シェップ〉や〈イッツ・スティル・ヒア〉そして〈アンチェンド・メロディ〉など、彼がピアノを弾いた多くの音源が残っている。
彼はエレキ・ベースも弾いた。ビートルズとのセッションではベースを担当している。
映画『監獄ロック』の挿入歌で、1957年4月30日に録音された〈ベイビー・アイ・ドント・ケア〉で聞けるエレキ・ベースの音はエルヴィスによるものだ。
この曲のレコーディングに関してはエピソードが残っている。
それは当時まだエレキ・ベースが出始めたばかりの頃で、ウッド・ベーシストのビル・ブラックは何回かトライしたもののうまく行かず、“オレにはこんなものは弾けない”と言ってスタジオを出て行ってしまった。それを見たエルヴィスがビルが投げ捨てていったベースを拾い上げ、見事弾いて見せた。
また彼はその驚異的な白人とは思えないリズム感のよさから、ドラムスを叩いても見せた。彼がドラムスに向かって叩きまくっている写真がいくつか残っている。