夫-寅次郎がインドに赴任になってから、
今年の8月末で満2年になる。
デリーの賃貸契約は2年契約が一般的。
そして日本と大きく異なるのが
契約更新の際に家賃が10%引き上げられること。
経済発展が目覚ましいインドの、年間の物価上昇率は10%。
それは賃金や家賃も例外ではない。
インドに進出している日系企業は
現地スタッフの賃金の10%アップについて
日本の本社への説明に苦労しているという話も聞く。
近年のインドでは10%アップは当たり前の話だが、
国の経済が行き詰まっている日本人には到底理解しがたい。
寅次郎の職場の日本人も、引き上げられた家賃が
会社からの支給額を上回ってしまうため、
より安い家賃の物件を探すか、自腹を切ることになる。
更新の度に引越しをする人も少なくない。
インド人大家にとって10%の賃料アップは当たり前の話なのである。
わが家の家賃も10%引き上げられたら支給額を超えてしまう。
しかし私たちはこの家が気に入っていて、
引っ越したくない理由はいくつもある。
何階もある普通のアパートと違って、
賃貸に出しているのは私たちが住む1階だけ、
2階にはこの家の持ち主であるマタジ(おばあちゃん)、
3階にはマタジの息子・リシャント一家が暮らしているだけだから、
私たちも何となくこの人たちを家族のように思っている。
普段から私たちに良くしてくれているし、
妊娠中も出産してからも、何かと気遣ってくれている。
それに私はこの家の庭が好きである。
酷暑期でなければ、テーブルとイスを出してゴハンを食べたり、
近所にインド人の友人もできた。
これまでの生活で増えてきた荷物をまとめて引っ越して、
今まで積み重ねてきたことをまた一からやるのは大変なエネルギーが要る。
寅次郎と
「引っ越したくないけど自腹は切りたくないから、
率直にリシャントにお願いしよう」
ということに。
会社からの支給額を超えない程度に押えようとすると、
家賃は5%しか上げられない。
それでリシャントが納得してくれるかどうか・・である。
先日、寅次郎とドキドキしながら、
家賃の支給上限額が書かれている住居規定の紙を持って
リシャントに相談に行くと
「こんな紙をわざわざ見せる必要ないよ!
もう家族みたいなもんなんだから!
で、いくらならいいの?」
と直球で聞かれ、
「○○万ルピー・・」
と5%アップ程度の金額を言うと
「交渉成立!」
と、あっさり
10%アップはちゃんと契約書にも書いてあるし、
大家は当然請求できることだから
私たちも恐る恐る頼みに行ったのに、
こんなにあっさり交渉成立して拍子抜け・・
自腹を切らずにこの家に住み続けられることにホッとしたのと、
リシャントが普段から私たちを
「家族のように思っている」
と言ってくれていることの真意を確かめられたような気がして、
とてもうれしかった。
家賃の高騰と、不動産業の競争が激しさを増すデリーにおいて
いい大家にめぐり会えるのは、とても幸運なことである。
この家も、この家の住人も、またさらに好きになった。
できれば赴任中はずっと、ここに住み続けたいと思っている。


