朝、家事の合間に情報収集するのが日課となっています。
今日注目したのはこちらの記事
英語は大事、しかしまずは日本語をしっかり学んで。ノーベル賞化学者、白川英樹教授の「言葉」に対する考え方とは
日本語で科学を学び、考えることができる幸せーノーベル化学賞の白川英樹博士先人たちへの感謝
ちょうど先日書いた、林先生の「幼児期の英語教育不要論」と通ずるものがありました。
白川教授は、「母語でしっかり学び、深く核心を突く考えを身に付けることが重要」だと語っています。
◎ グローバル化が進む今、英語をコミュニケーションの道具として学ぶのは当然だが、それは母語である日本語をしっかり身に付けた上でのこと。
◎ 日本語で論理的に説明できない人が、英語で論理的に説明できるはずはない。
というのが、白川教授の意見です。
白川教授は、作家の丸谷才一さんの、
言語を「思考のための道具」と「伝達のための道具」とに区別し、前者がなおざりにされているのではないか
と指摘するコラムを読んで、自分が漠然と思っていたことが正しかったと思ったそうです。
ちなみに、言語の役割を「思考」と「伝達」に分けることは、先日のテレビ番組で林先生もおっしゃっていました。
言語を「思考」と「伝達」に分けるという考えですが、言語学的には、「思考」の部分をCALP、「伝達」の部分をBICSと言います。
CALP(Cognitive Academic Language Proficiency)は認知学術的言語能力のことで、抽象的、論理的思考をするのに必要な言語能力です。
BICS(Basic Interpersonal Communicative Skills)は基礎的対人伝達スキルのことで、話し言葉が中心の生活言語の事です。
林先生も、白川教授もCLAPが大切だと言っているわけですね。
この言語における「思考の部分」(CALP)ですが、カミンズの2言語共有説によると、第一言語 と 第二言語は、深層部の部分で CALP を共有しているとされています。(下の図参照)
また、第一言語、第二言語のCALPは相互に転移するとも言われています。
つまり、どちらかの言語でCALPが習得できていれば、もう一方の言語のCALPにも反映されるということです。
ただ一方で、BISC(生活言語)は、2言語で共有していないので、それぞれ学習が必要です。
思考力を培えば、英会話力(伝達力)が簡単に身につくわけではないのです。
以上のことから、林先生の仮説
語学=アプリ
アプリを動かすスペック(思考力)を上げておけば、アプリが簡単に入る頭になる。
はある意味正しく、ある意味間違っていると思います。
私個人の意見としては、幼児期の英語教育は伝達能力(BISC)を容易に習得できるという面でメリットがあると思います。
バイリンガルの子供を育てる母として、言語と思考力の関係は気になります。
二ヶ国語を話せることを重要視するあまり、思考力が身に付かない・・・なんてことにならないように気をつけてきたつもりです。
特に思考力が発達するといわれる9歳前後は、子供達の様子を観察しながら、今後の方針を思考錯誤しました。
バイリンガルは一歩間違えると、CALPが十分に習得されないダブルリミテッド(セミリンガル)になってしまうことがあります。
移民の子供たちの中には、ダブルリミテッドになってしまったケースも多く報告されています。
一方、日本で英語教育をする場合は、たとえ幼児期から英語を取り入れても、ダブルリミテッドになることはあまりないと言われています。
移民のケースと違い、マジョリティーの言語が日本語なので。
ただ、極端なケース(日本語よりも英語の方が触れる機会が多い場合)は注意が必要です。
最後に、「思考力が大切。母語を伸ばさないと思考力が伸びない。だからまずは母語で思考力を伸ばした後に第二言語を」という説について。
私も「思考力を培うために母語の伸ばすことが大切」という意見には賛同します。
ただ、カミンズの2言語共有説からわかるように、「第一言語、第二言語のCALPは相互に転移する」ので、第二言語(英語)を伸ばすことによって、思考力を伸ばすことも可能です。
私の個人的な経験によると、論理的思考は英語を通しての方が学びやすいと感じます。
またバイリンガルは、必ずしもすべての場面において「母語(強い方の言語)で思考」しているわけではありません。
シチュエーションにより思考する言語は変わってきます。
バイリンガルは、母語と第二言語の相互作用を繰り返しながら、思考力、言語力を伸ばしていっているのではないかと思います。