横浜自転車選びストーリー 第一部
その日は別にそんな目的でそこへ行ったわけではなかった。
ある晴れた休日、ちょっと横浜へ行こうということになり、私はA子とともに電車で横浜へ向かった。
最近では私の場合、出かけるときは自転車で…というパターンが多いので、休日の電車というのは実はなかなか新鮮だ。
メリットとしてはいつでもお酒が飲める(!)というのがある。
クルマで出かけるときも、自転車で出かけるときも、基本的には(というより絶対に)お酒は飲むべきではないので、食事をしても“飲み”の楽しみはなくなってしまう。
だが今日は電車だ。
だから思いっきり酔っぱらってもいいし、自転車やクルマを走らせるときのようなある種の緊張(集中)状態に自分を縛る必要もない。
これも気楽でいいな…、そんなことを感じながら、まずはちょっと散歩しよう…ということになり、桜木町で私とA子は電車を降り、横浜方面へ向かってのんびりと16号線沿いを歩き始めた。
それにしても天気が良い。まさに春の訪れを感じるような3月の土曜日だ。
こんな日に峠を登ったら結構暑いだろうな…と、考える必要もない自転車の峠アタックのことを考えてしまう自分がいる。
今日は“自転車の日”じゃないから、そんなことは忘れて…とは思ったのだが、実を言うと今向かっている方向には“自転車関連の重要ポイント”がある…ということを私は知っている。
この道沿いには実は大型自転車店があるのだ。もし偶然にも前を通るようなことがあったら、それを無視して通り過ぎることなど私にできるだろうか…???
いや、実際問題、自転車関連ブログを書いている私としては、そこに寄らないわけには行かないじゃないか…!?
というわけで、それから約10分後には私とA子はその大型スポーツ自転車ショップの前に立っていた。
A子の様子は…と見ると別にイヤそうではない。休日モードだということもあり、それなりに楽しんでこの場所にいる感じだ。
「ちょっと見ていこうか?」
何の問題もない。私とA子はそそくさとその大型店舗内に入ると、ロードバイクを中心とする展示セクションへと向かう。
なんだかA子も喜んでいる様子。意外や興味ありげにいろいろと眺めている。
「あ、このポスター素敵…」
とA子が指差した先にはピナレロのポスターが飾ってある。
ピンク色を基調にしたジャージ姿の白人女性が、やはりピンク色のピナレロに跨がっている、ちょっとお洒落なポスターだ。確かにカッコいいし、その女性も、そしてそのピナレロ(プリンスだろうか)もとても雰囲気がある…。
そしてA子は次にピンク色のキャノンデールCAAD9の前で止まる。
「あ、コレね! 確かにいい色! 一台買ってもいいかしら……」
妄想とも本気ともつかないような驚きのコメントをA子が発する。
い、いつの間にA子までもが“自転車何台でも欲しい症候群”に犯されてしまったというのか…。
私は、やはり女性はピンクね…という納得と、その言葉に対するちょっとした驚きを押し殺しながら、努めて冷静にA子のコメントに反応する。
「あ、コレね。結構いい色でしょ!でもコレ買ったらウチのシナプスとほとんど同じかもよ…」
「だったらフラットバーにする。どう?」
A子までもがロードをフラットバー化だなんて…一体どういう風の吹き回しなんだ!?
A子はしばらく考えていたが、やがてその魅惑的なアイディアは彼女の中でボツになったのだろう…。突然別の話題を切り出した。
「ねぇ、ピストってどれのことを言うの?」
こ、今度はピストか!?
本来のA子の自転車知識レベルで言うと「ピスト」なる単語を彼女が自発的に発することなどあり得ないはずなのだが、どうやらこのブログをちょくちょく見ているらしいA子はいつの間にか自転車知識レベルも普通のママチャリ乗り達を遥かに凌駕するに至ったようだ。
私は、そこからほど近いところに展示されていた何台かのピストを指差し、ほんの表面的な説明をA子にする。
「コレがスペシャライズドのラングスターボストンだよ。」
このブログでも一度紹介したことのあるラングスター・ボストンが展示されている。サイズはどうみても私には小さいが、これはなかなか目を引くデザインをしている。非常に格好良いのだが、ただ少しだけ遊びっぽ過ぎるかな…。一時期はこれにしようかな…と思っていたのだが、今はちょっと違うかな…と思う。
「こっちがフジのトラックというやつ…。コレもありかな…と思ってるんだ。ピストを買うときには。結構安いし…だけど意外に本格派みたいだよ。」
私の言葉を受けて、A子はしばらく白とグレーの2台のフジ・トラックを眺めていたが、やがてボソっと呟いた。
「却下ね、コレは。」
えっ? えっ? どうして???
A子はそれほど知識は持っていないくせに、ときとして非常に判断が速い。基本的に“どんなに安くても欲しくないものは欲しくない”という主義なので、不運にも(ろくにアピールの機会も与えられず)却下されてしまったフジ・トラックにはもはや上がり目はないかもしれない…。
A子はその後手袋を買いたいと言い出したので、別フロアの自転車グッズ売り場へ移動する。
A子が手袋をあーでもないこーでもないと探す間に、私はカンパニョーロのコンポを見ていた。
ベローチェあたりだったらいいかもな…お値段は?……フムフム…いや待てよ、エルゴパワーとブレーキだけケンタウルってえのもアリかもな…その方がカーボンレバーでシブいし…。など、私が妄想にふけっていると、知らない間にA子が隣に来ていた。
聞いてみるとあまり良い手袋がなかったから今日はいらないと言う。もうそろそろお店を出たそうだ。
私は妄想を一気に中断すると、エスカレーターに乗り1階の入り口のあるフロアに降りる。
そのまま出口から出ようとしたときに、レジ付近に置いてある妙に目立つ一台のピストが目に飛び込んできた。
白い細身のクロモリフレーム。ハンドルがちょっと妙な角度で取り付けられているが、パーツ類は全て赤で統一されている。
う~ん、かなりカッコイイ!
白いフレームに赤いパーツをちりばめるという手法はロードバイクなどではそれほど珍しいものではないのだが、このピストバイク、その徹底ぶりが相当のレベルに達している。
クランクやチェーンリング、シートポストやホイールのハブまですべてがクリアレッドになっているのだ! 私はしばしそのピストバイクに見とれていた。
A子もこれは認めたようだ。
「うん、これ格好イイ! これならいいかもね!」
私は一応念のため、このピストバイクの車種をA子に教えてあげた。
「これフジ・トラックだよ。さっき上の階にあったやつ。」
だからと言ってA子は自分の判断が間違ってたとは決して思わないタイプのようだ。
「でも、これはOK! さっきのはダメだったけど、これならイイわね!」
そんなことを言っていると、そのピストバイクのオーナーがやって来た。何かパーツを購入して帰るところのようだ。
そのオーナーさん、黒人だった。自転車によく乗っていることがうかがえる体形をしている。どうやらアメリカ人らしい。
私はこのパーツの出所に興味が湧いて、ちょっと話しかけてみた。
で、答えはこうだった。基本的には日本の日東のパーツなんだけど、もう生産中止になってしまったから、今これと同じものを買えるのはサンフランシスコにあるミルウォーキーサイクルだかなんだかというお店だけだ…とのこと。とても嬉しそうに説明してくれた。
それにしても相当手間をかけているピストバイクだ。ある意味、究極に近い街乗り用ピストバイクとも言える。
この黒人さん、相当に好きなんだなぁ…と思いながら、私とA子はワ○ズ横浜を後にする。
土曜日の午後の横浜。この時期にしては気温は暖かく外を歩くのが気持ちいい。
今度は横浜の駅のそばでブラブラしながらショッピングかな…。
私とA子はゆっくりと散歩しながら横浜駅西口へと向かう。
今日は別に自転車屋巡りをしにきたわけではない。今日の自転車屋チェックはここで終わりだ…少なくとも私はそのときそう思っていた。
だが、運命の神様はときとしてなかなか予想外なドラマを用意している。私はまだそのことを知らなかった…。
--+---+---+---+--
さぁ、お約束の【続く】になってしまった。
次回は「横浜自転車選びストーリー」第二部・完結編だ!
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ある晴れた休日、ちょっと横浜へ行こうということになり、私はA子とともに電車で横浜へ向かった。
最近では私の場合、出かけるときは自転車で…というパターンが多いので、休日の電車というのは実はなかなか新鮮だ。
メリットとしてはいつでもお酒が飲める(!)というのがある。
クルマで出かけるときも、自転車で出かけるときも、基本的には(というより絶対に)お酒は飲むべきではないので、食事をしても“飲み”の楽しみはなくなってしまう。
だが今日は電車だ。
だから思いっきり酔っぱらってもいいし、自転車やクルマを走らせるときのようなある種の緊張(集中)状態に自分を縛る必要もない。
これも気楽でいいな…、そんなことを感じながら、まずはちょっと散歩しよう…ということになり、桜木町で私とA子は電車を降り、横浜方面へ向かってのんびりと16号線沿いを歩き始めた。
それにしても天気が良い。まさに春の訪れを感じるような3月の土曜日だ。
こんな日に峠を登ったら結構暑いだろうな…と、考える必要もない自転車の峠アタックのことを考えてしまう自分がいる。
今日は“自転車の日”じゃないから、そんなことは忘れて…とは思ったのだが、実を言うと今向かっている方向には“自転車関連の重要ポイント”がある…ということを私は知っている。
この道沿いには実は大型自転車店があるのだ。もし偶然にも前を通るようなことがあったら、それを無視して通り過ぎることなど私にできるだろうか…???
いや、実際問題、自転車関連ブログを書いている私としては、そこに寄らないわけには行かないじゃないか…!?
というわけで、それから約10分後には私とA子はその大型スポーツ自転車ショップの前に立っていた。
A子の様子は…と見ると別にイヤそうではない。休日モードだということもあり、それなりに楽しんでこの場所にいる感じだ。
「ちょっと見ていこうか?」
何の問題もない。私とA子はそそくさとその大型店舗内に入ると、ロードバイクを中心とする展示セクションへと向かう。
なんだかA子も喜んでいる様子。意外や興味ありげにいろいろと眺めている。
「あ、このポスター素敵…」
とA子が指差した先にはピナレロのポスターが飾ってある。
ピンク色を基調にしたジャージ姿の白人女性が、やはりピンク色のピナレロに跨がっている、ちょっとお洒落なポスターだ。確かにカッコいいし、その女性も、そしてそのピナレロ(プリンスだろうか)もとても雰囲気がある…。
そしてA子は次にピンク色のキャノンデールCAAD9の前で止まる。
「あ、コレね! 確かにいい色! 一台買ってもいいかしら……」
妄想とも本気ともつかないような驚きのコメントをA子が発する。
い、いつの間にA子までもが“自転車何台でも欲しい症候群”に犯されてしまったというのか…。
私は、やはり女性はピンクね…という納得と、その言葉に対するちょっとした驚きを押し殺しながら、努めて冷静にA子のコメントに反応する。
「あ、コレね。結構いい色でしょ!でもコレ買ったらウチのシナプスとほとんど同じかもよ…」
「だったらフラットバーにする。どう?」
A子までもがロードをフラットバー化だなんて…一体どういう風の吹き回しなんだ!?
A子はしばらく考えていたが、やがてその魅惑的なアイディアは彼女の中でボツになったのだろう…。突然別の話題を切り出した。
「ねぇ、ピストってどれのことを言うの?」
こ、今度はピストか!?
本来のA子の自転車知識レベルで言うと「ピスト」なる単語を彼女が自発的に発することなどあり得ないはずなのだが、どうやらこのブログをちょくちょく見ているらしいA子はいつの間にか自転車知識レベルも普通のママチャリ乗り達を遥かに凌駕するに至ったようだ。
私は、そこからほど近いところに展示されていた何台かのピストを指差し、ほんの表面的な説明をA子にする。
「コレがスペシャライズドのラングスターボストンだよ。」
このブログでも一度紹介したことのあるラングスター・ボストンが展示されている。サイズはどうみても私には小さいが、これはなかなか目を引くデザインをしている。非常に格好良いのだが、ただ少しだけ遊びっぽ過ぎるかな…。一時期はこれにしようかな…と思っていたのだが、今はちょっと違うかな…と思う。
「こっちがフジのトラックというやつ…。コレもありかな…と思ってるんだ。ピストを買うときには。結構安いし…だけど意外に本格派みたいだよ。」
私の言葉を受けて、A子はしばらく白とグレーの2台のフジ・トラックを眺めていたが、やがてボソっと呟いた。
「却下ね、コレは。」
えっ? えっ? どうして???
A子はそれほど知識は持っていないくせに、ときとして非常に判断が速い。基本的に“どんなに安くても欲しくないものは欲しくない”という主義なので、不運にも(ろくにアピールの機会も与えられず)却下されてしまったフジ・トラックにはもはや上がり目はないかもしれない…。
A子はその後手袋を買いたいと言い出したので、別フロアの自転車グッズ売り場へ移動する。
A子が手袋をあーでもないこーでもないと探す間に、私はカンパニョーロのコンポを見ていた。
ベローチェあたりだったらいいかもな…お値段は?……フムフム…いや待てよ、エルゴパワーとブレーキだけケンタウルってえのもアリかもな…その方がカーボンレバーでシブいし…。など、私が妄想にふけっていると、知らない間にA子が隣に来ていた。
聞いてみるとあまり良い手袋がなかったから今日はいらないと言う。もうそろそろお店を出たそうだ。
私は妄想を一気に中断すると、エスカレーターに乗り1階の入り口のあるフロアに降りる。
そのまま出口から出ようとしたときに、レジ付近に置いてある妙に目立つ一台のピストが目に飛び込んできた。
白い細身のクロモリフレーム。ハンドルがちょっと妙な角度で取り付けられているが、パーツ類は全て赤で統一されている。
う~ん、かなりカッコイイ!
白いフレームに赤いパーツをちりばめるという手法はロードバイクなどではそれほど珍しいものではないのだが、このピストバイク、その徹底ぶりが相当のレベルに達している。
クランクやチェーンリング、シートポストやホイールのハブまですべてがクリアレッドになっているのだ! 私はしばしそのピストバイクに見とれていた。
A子もこれは認めたようだ。
「うん、これ格好イイ! これならいいかもね!」
私は一応念のため、このピストバイクの車種をA子に教えてあげた。
「これフジ・トラックだよ。さっき上の階にあったやつ。」
だからと言ってA子は自分の判断が間違ってたとは決して思わないタイプのようだ。
「でも、これはOK! さっきのはダメだったけど、これならイイわね!」
そんなことを言っていると、そのピストバイクのオーナーがやって来た。何かパーツを購入して帰るところのようだ。
そのオーナーさん、黒人だった。自転車によく乗っていることがうかがえる体形をしている。どうやらアメリカ人らしい。
私はこのパーツの出所に興味が湧いて、ちょっと話しかけてみた。
で、答えはこうだった。基本的には日本の日東のパーツなんだけど、もう生産中止になってしまったから、今これと同じものを買えるのはサンフランシスコにあるミルウォーキーサイクルだかなんだかというお店だけだ…とのこと。とても嬉しそうに説明してくれた。
それにしても相当手間をかけているピストバイクだ。ある意味、究極に近い街乗り用ピストバイクとも言える。
この黒人さん、相当に好きなんだなぁ…と思いながら、私とA子はワ○ズ横浜を後にする。
土曜日の午後の横浜。この時期にしては気温は暖かく外を歩くのが気持ちいい。
今度は横浜の駅のそばでブラブラしながらショッピングかな…。
私とA子はゆっくりと散歩しながら横浜駅西口へと向かう。
今日は別に自転車屋巡りをしにきたわけではない。今日の自転車屋チェックはここで終わりだ…少なくとも私はそのときそう思っていた。
だが、運命の神様はときとしてなかなか予想外なドラマを用意している。私はまだそのことを知らなかった…。
--+---+---+---+--
さぁ、お約束の【続く】になってしまった。
次回は「横浜自転車選びストーリー」第二部・完結編だ!
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