ロードバイクが増殖する!伝染するから気をつけろ!
その日は特に予定があってそのあたりを散策していたわけではなかった。
また、何か目的があってその通りを歩いていたわけでもなかった。
たまたま何かの巡り合わせで通りかかったその場所…。その場所で、まさか、こんな展開が待っていようとは…。
時は2006年夏。残暑厳しいある日の夕刻のことである。
「そろそろ疲れたからお茶でも飲もうか?」
私は妻に語りかけた。
「そうね…。あ、この店ちょっと入ってみない?」
と妻が唐突に指さした店は、コーヒーショップにしては不思議な外観だった。
いや、その店は喫茶店などではなく、まったく別の種類の店だった。
「ん…キ、キャノンデール?」
そう、その店こそ、都内でも決して多くはないワンブランドショップ、中目黒にあるキャノンデール専門店だったのだ。たまたま私たちはその前を偶然にも歩いていたのだ。しかもよりによって私ではなく、妻がこういう店に入ろうなどと言い出すとは、一体どういう風の吹き回しなのか…?
まあ、私としては決して嫌いなジャンルの店ではないので、異論などあるはずがない。コーヒーも飲みたかったが、まあ、10分くらい新品のロードバイクを眺めるのも悪くない。もうピナレロは注文してしまったから、今更キャノンデールのロードバイクを買おうとは思わないが、超高級モデルもディスプレイされているし、ちょっと面白いかも…。そんな感じで店に入った。
冷房が良く効いて心地よい店内は、ワンブランドショップというその名の通り、キャノンデールの自転車のみがきれいにディスプレイされている。
「お、シックス・サーティーンだ。え、な、70万円?…あ、こ、こっちはちょっと安いゾ、40万円ちょっとか…」
私は展示されている高級ロードバイクに気を取られ、うかつにも妻がその店の中で何をしていたのかをほんの数分間、気にも止めなかった。
お、おや、妻が一台のロードバイクにまたがっているゾ。珍しい…。
「サイズはぴったりですよ。これは、2007年モデルの先行モデルでして、日本にはまだ2台しか入って…」
店員が饒舌にそのロードバイクのことを説明する。妻もなにやらうなずいている。
まあ、ただ見に来ただけだし、私もそのうち最高級モデルを買いたくなるかもしれないけど、今はオーダー済みのピナレロ・アングリルを待つだけなわけで、妻はスペシャライズドのクロスバイクにも大して乗ってないし、まあそろそろ行くか…。
というわけで、一旦私たちは店を出た。
「さあ、コーヒー屋さんを探そ…」
と私が一言を言い終わる前に、妻は私を遮るように一言。
「ちょっと待って。」
と一言残し、彼女は再び店内へ戻る。
「えっ、何か忘れ物?」
……
そう、大きな大きな忘れ物だったのだ。
妻はなんと、いきなりキャノンデールのロードバイクの手付け金を打ってきたのだ。つまりロードバイクを購入したのだ!私はひっくり返った。
そして翌日。
私たちはキャノンデールショップの前にいた。お店の人がサドルの高さなどを調整している。
「さあ、どうぞ!」
妻がブラックに塗装されたピカピカのキャノンデールのシナプス・フェミニン3にまたがる。
何故かしばらく動かない…。
沈黙…
約25秒間ほど不思議な静寂があったろうか。店員さんも心配そうに見守る…。そして、驚きの一言。
「私、こ、これ怖くて乗れない!!!」
ロードバイクの前傾姿勢や操作系の違いなどで、妻の脳内はどうやらパニック状態になっていたらしい。
「ま、まず練習しよう。練習すれば大丈夫…」
私は「自転車何台でも欲しい症候群」を家庭内に持ち込んだ責任を取らなければいけないと思い、妻に助け船を出した。
「だ、大丈夫だから…、ちょっと裏の路地でいろいろやってみよう。乗れるよ。絶対…」
さあ、大変なことになった。このショップから自宅まで約8km。この長い長い道のりをなんとかこのロードバイクで帰らなければならない…。私は「YFK1号」ことジャイアントのEscape R3で来ていたので、妻にはこのキャノンデール製ロードバイクに乗ってもらわなければならない。
がんばれ、ロードバイクだと言ったって、所詮は自転車だ。クロスバイクに乗れるなら乗れるから!大丈夫だから…。
私は妻を励ました。妻はさっきまでの嬉しそうな表情が一変して、不安そうだ。
さぁ、がんばろう。道のりは長いが絶対家に帰れる…妻にとってはじめてのロードバイク大冒険がこの瞬間に始まったのだ。その珍道中の様子は次回!
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