自転車で糖尿病を克服した! -164ページ目

ピナレロ君の大冒険~ロードバイクは嵐の中を行く!

ポジティーボ!
これがあの紋章だ!(撮影はごく最近のため)フロントディレーラーなどがちょっと綺麗じゃないが、シートチューブ下部に燦然と輝くあの“由緒ある匠の技の店”の証となるステッカー。聞くところによると、このシールには貼るだけで変速機やブレーキが狂いにくくなるという魔法の力もあるらしい……(あくまで噂だが)


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2006年10月初旬のある日、自由が丘のとあるロードバイクプロショップ


遙か3ヶ月前にオーダーした例のマシンは今私の目の前にある。

汗なのか涙なのか、それとも雨水なのか、何故か視界がにじむ。感激の初対面だ。


イタリアンレッドとレーシングホワイトをベースにしたカラーリングは思いの他レーシーだ。まだポジション出しが行われていないためバーテープだけは巻かれていないが、その醸し出す雰囲気は明らかにクロスバイクとは別物だ。


「早く乗って走り出してくれ!」


私にはまるで、この「ピナレロ君」ことピナレロ・アングリルの声が聞こえたような気がした。


「じゃあフィッティングをするので、ちょっと乗ってみてください。」


え、「ピナレロ君」はそんなことまで言うのか…と私は自分にしか聞こえないはずの声を頭の中で反芻した。いやいや違った、それは店主の言葉だった。世界のレースを戦って来たあの名メカニックである店主自身が私の、いやロードバイク初心者である私のロードバイクの組み立て・整備を行ってくれているのだ。


はじめて跨るロードバイクはやはり前傾姿勢がきつかった。


「この雨の中、私は約5km先の家までたどり着けるだろうか…」


という不安が一瞬よぎったが、それは店主の奥様の言葉で打ち消された。


「身体柔らかいですねぇ。結構筋肉ありそうだし…」


そ、そうなのか?ま、まあそうかもしれない。そこまでのコメントはOKだ。だけどお願いだ、その後に例の質問だけは続けないでくれ!間違っても「何かスポーツやってました?」とか「何のスポーツやってたんですか?」などという質問だけはやめてくれ!私は一瞬必死に妨害のテレパシー電波を飛ばした。(妨害電波を飛ばした理由はこちらのページ に)


幸いなことに会話は違う方向に流れた。その後何の会話をしたのかまでは覚えていないが、無事フィッティングも終わり、バーテープも巻き終え、すべてが準備完了となった。おっと、お会計も無事終えた。あとやることはひとつだけだ。家まで帰ることだ。


外を眺めた。


納車で高揚していた私の心は一瞬で現実に引き戻された。私がこの店に着いたときよりも天候は悪化し、外は嵐のようになっていたのだ


風は強く吹き、雨が降りしきる。誰がどう見ても新車の自転車に乗るような天候ではない。


奥様も心配してくれる。普通はそうだろう。


だが、何を言う。私は明日、明後日の天候まで綿密にリサーチした上で、今日の納車を決断したのだ。今日こんなに天候がひどいということは、明日はもっとひどいということだ。明後日はハリケーン直撃になるに決まってる。私は引きずってでも今日、この「ピナレロ君」を家まで持って帰る。(おっと引きずってはいけない…キズがつく)


私は強い決意をテレパシーでその場にいた全員に伝えると、気持ちを切り替え、ヘルメットをかぶった。


店主と奥様は最後まで心配そうに見送ってくれた。なんて素敵な人達だ。


私は努めてにこやかに軽くひきつりながら会釈をすると、嵐の暗い夜道(そう、夜になっていたのだ)を走り出した。


「ま、前が見づらい!」


「ポ、ポジションが違う!」


「シ、シフトレバーはどっちがどうだっけ?」


まるで最新鋭戦闘機F-22をはじめて操縦する新米パイロットのごとく、私は全脳みそをフル回転させて帰宅を急いだ。マッハ2.5で帰りたかった。だが急いではいけない。急いだら危険だ。


その5kmの道のりは普段より長かったのか短かったのかよく覚えていない。


私はそれくらい集中していた。はじめて路上教習に出たときよりもずっとずっと集中していた。鮫洲の試験場で小型二輪の試験に合格したときよりも集中していた。例のガリビエ峠も嵐の中、慎重に下った。


やがて遠くに我が家が見えてきた。ロードバイクの水中散歩ももうすぐ終わる。


到着したときには当然のこと全身びしょ濡れだった。


私は室内まで慎重に「ピナレロ君」を持って入った。(我が家は当然ながら自転車はすべて室内保管だ)


私は自分が濡れたことを気にするより先に「ピナレロ君」を案じた。


「いきなりこんな思いをさせてゴメンな。」


私は「ピナレロ君」にテレパシーを送った。


「こんなにびしょびしょにして!はやく掃除してよね!」


声が聞こえたような気がした。


そうだろう、そうだろう。キミも早くキレイにして欲しいよな。今拭いてやるから待ってろ。


そう「ピナレロ君」にテレパシーを送りながら、ふと横を見た。


妻が立っていた。


えっ、今の声は「ピナレロ君」の声ではなく、妻の声だったわけ…?


確かに床もびしょびしょだった。


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「ピナレロ君の大冒険」終わり


次回は、河口湖へ大迷走~クロスバイクの大冒険の巻!


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