実家の猫が、息をひきとったとの連絡が母からあった。

とても人懐っこい猫だった。

数年ぶりに実家に帰省しても、最初「あれ?」っという顔をしているが、1時間もすれば膝に乗ってくるような猫だった。

幸せに暮らすことができただろうか?



今年は久々に、3日間ほど実家で正月を過ごした。


東京に戻るため、荷物を持って家を出る時、母親が玄関前まで見送ってくれた。

表通りに出ようとしたところで、「ネネちゃんも見送ってくれよるよ!」という母の声に振り返ると、猫がめずらしく通りまで出てきて、僕を見ていた。

初めての事だった。


その半年後に、死んだ。


[コーサラ国のガウダミーと釈迦の話]


子供が死んで半狂乱のガウダミーが、
托鉢に来た釈迦に、「生き返らせてください!」 とすがる。


釈迦はそれを受け、薬を作るという。


「その薬の原料の、カラシ種を持っておいで。
ただし、これまでに死者を出した事のない家から。」


ガウダミーは探したが、そんな家は見つからない。

そのうちに、自分だけがこんなに悲しい思いをしているのではないことに気付く。


戻ったガウダミーは、
「この子を静かに眠らせてやります。」と釈迦に言う。



この話で釈迦が伝えようとしていることは、


《死んだ子は死んだ子として、最高の価値がある。》ということ。



うちの猫、

今度は僕が、《ありがとう》と見送りたいと思います。