だいぶ長距離のバス移動にも慣れた。

日本にいるときは、岩手から東京までの8時間の車の旅だってグエーって感じだったけど、

今は"Eight-Hour Drive"なんてすごく短く感じる。

でも、もう丸2日以上のバス移動はしないだろう。

と言うよりもうしたくない。

ほとんど同じ体勢でずーっといるし。

たまにDVDの上映もあるけど、基本的には暇だし。

前の席の子供はかなり落ち着かない。


文字通り食っちゃ寝の生活。

よめはおもむろに腹筋をしだした。

さすがにこのままじゃやばいと思っているらしい。


でも20時間、30時間の移動もそんなに苦にならなくなったのは何故だろう。

この景色のせいだろうか。

目を開けている間はほとんど窓の外をぼーっと見ている。

だだっ広ーい大地と、長ーい一本道しかないんだけど、

それをずーっと眺めているだけでいい。


思えば、日本を出てから、こういう広ーい景色を見ることが多かった。

アジアでも、ヨーロッパでも、ここ南米でも。

でも今回のパタゴニアの風景は特に魅かれるものがある。

土にも草にも木にも山にも空にも雲にも。

車窓から見える範囲は狭いけれど、

1秒1秒違った景色が流れていく。

時には馬とか牛とかの群れが映ったり。

太陽の光できらめいた小川が映ったり。

遠くに目を向けると、そこはほとんど動かない空。

まるで静止画の様。

でも確実に景色は移り変わっている。

雲の形も高さも流れも1つとして同じものはない。

空の色もどこでも同じアオという訳じゃない。

バスがカーブすると、映される空の景色も変わる。

そしてまた違う景色を発見する。



何もないところでバスが止まって、母子が乗ってきた。

脇道は伸びているけれど、家らしきものは見えない。

一体どこから来たんだろう。

きっとあの少し離れた丘の向こう側に家があって、

牛とか馬とかを飼っていて、それで生計を立てている。

そしてこの母子は近くの(と言っても数時間かかる)街まで、

買い出しにでも行くんだろう。

なんてことを考えながらバスに乗っていたり。



バスの運転手はステレオで音楽を聴いている。

足を踏み鳴らしてリズムを刻んでいる。

クラクションを細かく鳴らした。

間もなくサイクリストを追い越した。

彼は全身に風を受け、ウェアが強くなびき、ほとんど立ちこぎで進んでいる。

細かな「ププッ」というクラクション。

「気をつけて。」とか、「頑張れよ。」とかいう合図だろうか。

なんかいい。


しばらくしてまた細かいクラクションが鳴った。

今度は何だ。

あ、道路脇で立ちションしているおじさんだ。

知り合いじゃないだろうし。

なんだろう。冷やかしだろうか。

それもなんかいい。



バスは海岸線に差し掛かった。

波が太陽の光を乱反射させていてすごくきれい。

慌てて寝ていたよめを起こす。

よめも慌ててカメラを構える。


1秒ごとに創られては消える景色。

少しでも多くの素晴らしい景色を、

2人で一緒に分かち合うのも、またいい。



眩しくて目を覚ました。

少し眠っていたみたいだ。

夕日がちょうどはるか遠くの大地の陰に隠れるところだった。

あの太陽は地面をくぐって、明日の朝反対側の大地の陰からあらわれるんだ。

なんか不思議。

というかバスに居過ぎ。



やがて辺りは真っ黒になり、

バスのヘッドライトだけが景色をつくっている。

締められたカーテンを少し開けると、

星が輝く空を見ることができる。

バスからでも結構見えるんだっていうことを知ったのは、

セルビアを走るバスの中。



こんな景色があるから、バスの長旅も少しは楽しくなる。

バス旅の度にいろんな発見がある。



じゃあもう今日は寝よう。

お気に入りのアイマスクをつけて、

その上からメガネをかける。

よめが言うには、傍から見たら変らしい。

でもメガネをそこらへんに放っておくと、失くしそうだから。


「じゃあ、おやすみ。」


日中もほとんど眠っていたよめはまだ寝られるらしい。


だんな

文字だけですいませんでした。

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さぁ、今日は何位でしょうか?根気よく見つけてみて下さい。笑


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