がん宣告から今日までのまとめ(19)

『がんになって死を身近に感じ変わった価値観』

 

◎今までなんとつまらないことにこだわり生きて来たか。

「あの世に何が持っていけますか?」家、土地、車、お金、会社、形あるものは何も持っていけません。そのための争いに何の意味があるのか?ステージⅣのがんで余命宣告を受けたことで物欲は完全に無くなりました。必要最低限の衣類、雨露が凌げる住まい、健康を維持できる食事と好きなお酒少々、そして家族と気の合う友達、そして筋トレが楽しめる健康な体。これで充分です。

がん宣告、余命宣告を受けて人生に対する考え方、生き方が大きく変わりました。

「老後の心配?そのために年金+2000万円は必要?」・・・1年先、生きているかどうかわからないのですから、もっと他にやることがあるだろうという感じです。

「2050年にサッカーワールドカップで日本が優勝?」生きている可能性はほぼゼロでしょう。「4年後のベスト8進出?」でさえ生きていれば応援するよ!!といった感じでしょうか。それより、1日1日、明日はどう生きるか?」「今、何をするか?」が重要なのです。

 

◎人生において幸せとは何か?

私は宗教家ではありませんが、ウルグアイのムヒカ大統領が語っていたように、人は幸せになるために生まれてきたのだと思います。人はこの世で幸せに暮らせるための努力をすればいいのだと思います。戦争や権力争いに何の意味があるのでしょう。「プーチンさんあなたは幸せですか?」「いったい何を求めて無益な人殺しを続けているのですか?」「地獄に行きたいのですか?」

私にはあなたは世界で最も醜く最も不幸な顔をしているように見えます。もはや、この世界にあなたが心穏やかに暮らせる場所は無いのですから。

 

◎長く生きることが幸せとは限らない

46億年とも言われる長い長い地球の歴史で、世界が温暖で平穏な時期はごくわずか、戦争のない時代もごくわずか、いや皆無かもしれません。私は第二次世界大戦後の戦後生まれです。日本が戦争に負けて無条件降伏。戦争放棄を宣言し、その後、今日まで77年間、戦争の無い時代に生きてくることができました。これは「当たり前」ではなくある意味「奇跡」かもしれません。そして2022年2月、ロシアが時代錯誤とも思えるウクライナへの侵略戦争を始め、中国は香港、台湾、東アジアへの力での現状変更を目論み、北朝鮮は核開発、ICBMの開発に躍起になっています。いつ核戦争が起きてもおかしくない時代に入ったのかもしれません。

何が言いたいかというと、ここ半世紀強の日本のような平和な時代ばかりではない。むしろ奇跡です。平和な時代なら長く生きることは幸せでしょうが、天変地異、戦争の続く時代ではどうでしょうか。

「コクーン」という映画がありましたよね。人が永遠の命を求めて旅立つ。自らは永遠の命をえたものの、愛する家族、友人たちは次々と旅立ち、自分だけが残される孤独に直面します。火の鳥でも同じような話がありましたよね。

マラソンも42.195㎞先にゴールがあるから走れます。人生も限りがあるから頑張れるし楽しめるのではないでしょうか。

 

若くしてがんになることは悲劇です。可哀そうです。子供が成長するまで生きたい思い。切なすぎます。長く生きたいと思うのは当然です。

 

がんになり余命宣告を受けた私ですが、運よく5年間生き延びることが出来ました。この5年間はそれまでの数十年よりも充実した時間を過ごせました。ツイていると思います。

家族と友人たちと長く心穏やかに生きることは一番の幸せです。一方、長く生きる事だけが幸せではないのではないかとも思う複雑な心境のこの頃なのです。