昔、Natureという超一流科学誌でチョーサの『カンタベリー物語』の沢山の写本を使った研究に、なんと遺伝子研究の最新の手法を用いて解析した論文をみたことがある。
それは、それぞれの写本の転写間違いを指標にして、それぞれの写本の系統樹を作成したという研究であって、文系の知り合いに見せたところコピーを大層欲し欲しがられて、後日持って行ったところ大変喜ばれた。 ちなみに当時blogの習慣がなかったので、この論文、残念ながらどれだったかいま記録にない。実に悔やまれる。
この手法、遺伝学では普通に使われ、インフルエンザウイルスやエイズウイルスの系統樹解析によく使われる。これはウイルスのように変異が頻繁に起こる系では誰から誰へ感染したかすらも推定することが可能である。
さて、ここで「伝世古と土中古」について思うのは、10世紀頃に莫高窟に塗り込められた仏典はその当時、あるいはそれより古い時代の写本であるわけだから、それが中国に、さらには朝鮮や日本へ伝えられものに比べ当然、原著に近い。
それ故、写本の際の間違い、あるいは、もっと重要だと思うのは、それぞれの社会に受け入れられるための故意の修正を比較すれば、社会そのものの仏教哲学に対する反応が明らかになるかもしれない。実は同じような考えで仏教そのものの比較から、それが受け入られた社会を研究するという方法をとった人があの中村元氏。
重要なのは、ここではAIによるテキストベースのビックデーター解析によるものなので先入観なし、哲学的先入観なしで、思わぬ解析結果が出る可能性がある。