中小企業が金融機関から融資を受けるとき,通常は代表者など経営者の個人保証を求められます。
しかし,平成25年12月に「経営者保証に関するガイドライン」(経営者保証ガイドライン)というものが策定され,必ずしも経営者保証に依存しない金融機関融資のあり方が模索されています。
この経営者保証ガイドラインを有効に活用し,経営者保証なしで金融機関の融資を受ける方法について、シリーズでお伝えしています。
<目次>
(3)微妙なときは、条件付きの保証を付けるという道もあります
1.条件付きの保証というメニュー
2.解除条件付保証契約とは?
3.停止条件付保証契約とは?
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1.条件付きの保証というメニュー
新規で融資を受けようという場合、その会社の財務面が弱かったり、会社と経営者の資産や経理などが明確に分離されているとは言いがたいようなケース、つまり、経営者保証ガイドラインの要件を満たしているかどうか微妙であり、そのままでは保証人なしでの新規融資が難しいようなケースがあります。
このようなケースを想定して、経営者保証ガイドラインでは、次のような項目があります。
すなわち、経営者保証ガイドラインの4項では、「経営者保証に依存しない融資の一層の促進のため、主たる債務者、保証人及び対象債権者は、それぞれ、次の対応に努めるものとする。」と記載されています。
そして、同項の(2)の対象債権者における対応の部分では、「対象債権者(つまり金融機関)は、停止条件又は解除条件付保証契約・・・・・・・・等の経営者保証の機能を代替する融資手法のメニューの充実を図ることとする。」と記載されています。
要するに、そのままでは経営者保証なしでの融資が難しいという場合でも、条件付きの保証契約とすることで、できる限り経営者保証なしでの融資を促進しようとしているのです。
そして、実際の融資の現場では、結構この条件付き融資という手法が使われているようです。
それでは、この停止条件付きとか、解除条件付きというのはどういう意味でしょうか?
ほとんど聞き慣れない言葉だと思いますので、以下で説明したいと思います。
説明の便宜上、解除条件付保証契約の方から説明します。
2.解除条件付保証契約とは?
そもそも、解除条件というのは、民法127条2項に規定されているもので、法律用語であって一般的な言葉ではありません。
簡単に言えば、解除条件とは、法律的な効力の消滅に関する条件のことです。
ですから、保証契約に解除条件をつける、つまり、解除条件付保証契約というのは、融資を実行する際には、とりあえず保証契約を締結するものの、その後一定の条件を満たした場合には、保証契約が法律的な効力を失う、つまりその時点から経営者保証なしの融資に変わるということです。
この解除条件付保証契約というメニューを使えば、融資の際に経営者保証なしに融資をするにはまだ不安要素があったような場合、いったんは経営者保証を付けて融資をしておいて、その後この不安要素がなくなった(つまり、解除条件をクリアーした)場合には、経営者保証を外すといった、臨機応変な対応が可能となります。
また、経営者の立場からしても、融資を受けた後にがんばって解除条件をクリアーすれば、経営者保証が外れるので、経営を良くすることに対するインセンティブが働くことになります。
そして、実際の融資の現場でこの解除条件付保証契約が締結される場合、以下のような解除条件が課されることが多いようです。
・融資後、一定の期間にわたって、会社の試算表や会社の経営数字に関する資料を金融機関に提出すること
・税理士等の専門家から、法人と経営者個人の資産や経理が明確に分離されているとのお墨付き(具体的には、確定申告書の添付書面等)をもらうこと
・一定期間、自己資本比率を向上させること
・会社の財務状況について、一定期間内に目的を達成すること
などなどです。
3.停止条件付保証契約とは?
他方で、停止条件というのは、これも民法127条の1項に規定されている法律用語です。
簡単に言えば、停止条件とは、法律的な効力の発生に関する条件のことで、解除条件と逆になります。
ですから、保証契約に停止条件をつける、つまり、停止条件付保証契約というのは、とりあえず融資を実行する段階では、経営者保証は付けないでスタートするけれども、一定の条件があり、その条件に当てはまってしまった場合には、その時点から保証契約の効力が発生し、経営者保証付きの融資に変わってしまうということです。
この停止条件付保証契約というメニューを使った場合には、ちょうど解除条件付保証契約とは逆で、経営者保証なしでの融資に不安要素があった場合でも、いったんは経営者保証なしで融資をしておいて、その後、経営者の側でこの不安要素が現実化するような事象があった場合(つまり、停止条件に当てはまってしまった場合)には、その時点から経営者保証を付けるということが可能になります。
また、経営者からしても、とりあえず経営者保証なしで融資を受けられたものの、その後停止条件に当てはまってしまうようなことがあれば、その時点から経営者保証を付けられてしまうので、そのようなことにならないように気をつけるというインセンティブは働きます。
まあ、言葉は良くありませんが、アメとムチのようなものと思っていただければ、分かりやすいかも知れません。
そして、実際の融資の現場でこの停止条件付保証契約が締結される場合、以下のような停止条件が課されることが多いようです。
・債務者(会社・法人)及び代表者が、融資時に表明していた事実と違う重要な事実が発覚したこと
・融資後、一定の期間にわたって、会社の試算表や会社の経営数字に関する資料を金融機関に提出すること
・会社の財務状況や経営状況について、重要な事実の変化があった場合に、速やかに金融機関に報告すること
・債務者及び経営者が、重要な財産を譲渡したり事業を譲渡したりする場合には、事前に金融機関の承諾を得ること
・全ての法令を遵守して事業を遂行すること、また必要な許認可等を継続すること
などなどです。
(つづく)
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