今朝、布川事件の元受刑者である杉山卓男さんが亡くなったとの訃報を聞いた。あまりに突然のことで言葉が出ない。

  布川事件の当事者である杉山卓男さんと桜井昌司さんの2人は、1967年に茨城県利根町布川で発生した強盗殺人事件の犯人とされ、同年に逮捕・起訴された。2人とも公判段階で犯行を否認したものの、1978年に最高裁で有罪判決(無期懲役)が確定し、以来2人は1996年に仮出獄となるまで千葉刑務所に服役する。

  2人が仮出獄した後の2001年に第2次再審請求の申立が行われ、2005年に水戸地裁で再審開始決定、そして、2011年5月24日に再審無罪判決が言い渡され、同判決は確定した。

  逮捕されて以来、再審無罪が確定するまでの44年間、2人はえん罪とたたかい続けた。

  再審無罪判決が出された2011年に、2人のたたかいと生活を描いた「ショージとタカオ」というドキュメンタリー映画が公開された。
 

  1996年に仮出獄となり、29年ぶりにシャバに戻ってきた2人はすでに50歳であった。仮出獄の直後、なかなか仕事が決まらずに焦る杉山さんが、「これじゃあ、刑務所の中の生活の方が楽だったかも知れない。」とつぶやくシーンがあった。

  この映画は、20歳の時に無実の罪で逮捕され、29年間も自由を奪われるという不条理にあいながら、しかし前向きに生きていこうとする2人の姿に胸を打たれる。

  えん罪とたたかいながらも、2人はそれぞれ仕事を見つけて働き、家庭ももうける。杉山さんには息子さんも生まれた。

  この映画では、仮出獄の直後は、世を恨み、「コワモテ」だった杉山さんが、時間が経過するにつれてとても柔和ないい笑顔に変化していくところが何とも味わい深い。

  実は、私の事務所の大先輩である柴田五郎弁護士は、この布川事件の弁護団長を務めていた。その関係で、私もお2人とは多少面識があり、何度か一緒にお酒を酌み交わす機会もあった。

  杉山さんは、普段は木訥とした人で、ちょっとトッぽくて、あまり多くを語らない。しかし、お酒を飲むとニコニコと人なつっこい笑顔で楽しそうにみんなの話を聞いていた。酔うと陽気になり、「吉田君てなんか俺の若い頃に似てるな。」なんて言われたこともあった(笑)。僕はそんな杉山さんのキャラクターが大好きだった。

  えん罪との長いたたかいがようやく数年前に終わり、これから奥さんと息子さんと幸せな悠々自適な生活が始まるというところだったのに。

  あんなに元気だった杉山さんが死んでしまったなんて。まだ信じられない。

  とにかく、残念でならない。