1  8年前から行方不明の人の財産や身分関係はどうなるの?
  Xさんは、もともと放浪癖がありましたが、8年前に自宅を出たきり、家族とも一切連絡を取らず、そのまま行方不明となってしまいました。

  現在では、Xさんはどこかで生きているのか、それとも死んでしまったのかすら分かりません。

  Xさんには、財産として自宅の土地と建物がありますが、その自宅には現在、Xさんの妻であるAさんと、子どものBさんが住んでいます。

  このような場合、法律的にはどのようなことになるのでしょうか?

  具体的には、このままXさんがずっと行方不明だった場合、Xさんの残した財産である自宅土地建物はどうなるのでしょうか?

  また、Aさんは、自分と子どもを残して蒸発してしまった夫Xさんに愛想を尽かし、別の男性と結婚したいと考えているのですが、このようなことは可能なのでしょうか?

2  失踪宣告という制度
  このようなケースは世の中で時々あるものです。

  こういうときのために、法律上失踪宣告という制度があります。

  すなわち、民法30条1項により、不在者の生死が7年間明らかでないときは、上記のAさんやBさんのような利害関係人は、家庭裁判所にXさんの失踪宣告の申立をすることができます。

  そして、家庭裁判所の失踪宣告がなされると、法律上はXさんは、7年間の期間満了のときから死んだものとみなされます。

  死んだものとみなされるとはどういうことかと言うと、Xさんの妻子であるAさんやBさんは、仮にXさんが死亡していれば、Xさんの法定相続人ですので、Xさんの残した財産、すなわち自宅の土地と建物を相続することができることになります。

  また、Xさんが死亡したとみなされることにより、Xさんと妻Aさんの婚姻関係は終了しますので、Aさんは別の男性と結婚できることになります(もっとも、民法770条1項3号により、配偶者の生死が3年以上明らかでないときは、離婚原因となりますので、Aさんはその前に離婚の裁判を起こすという手段も考えられます)。

3  帰ってきちゃったらどうなる!?
  それでは、めったにないことですが、仮に家庭裁判所による失踪宣告がなされた後に、なんとXさんが8年ぶりに自宅に帰ってきたらどうなるのでしょうか?

  そのときには、民法32条1項により、すでになされた失踪宣告の取消しが家庭裁判所によってなされることになります。

  失踪宣告が取り消されたとしても、失踪宣告後その取消前に善意で行った行為に影響を及ぼさないとされています(民法32条1項)ので、原則として、妻のAさんが別の男性と再婚していたとしても、その再婚の効力には影響はありません。

  ただし、失踪宣告によって財産を得た者は、失踪宣告の取消によってその権利を失うとされています(民法32条2項)。そこで、AさんやBさんは、相続した自宅土地建物をXさんに返さなければならないのが原則です。

  それでは、Xさんが戻ってきた時点で、AさんとBさんが自宅の土地建物をすでに処分してしまっており、売却代金も使い果たしてしまっていた場合はどうでしょう?

  その場合に、民法32条2項は、「現に利益を受けている限度」、すなわち現存利益を返せばよいとされています。したがって、AさんとBさんがすでに売却代金を使い果たしてしまっていた場合には、結果的にはXさんに何も返さなくてよいという結論になります。

  この結論は、Xさんにとってちょっと酷なようにも思えます。

  しかし、7年間も家をあけて家族に連絡もしなかったXさんにも落ち度はありますし、むしろ、失踪宣告後の法律関係の安定性に配慮するため、このような結論もやむを得ないものとされています。

4  特別失踪の制度
  さて、世の中には、たとえば何らかの事故などに巻き込まれて、亡くなったことはほぼ間違いないが、遺体が発見されないというケースがあります。2011年の東日本大震災においても、そのような犠牲者が大勢おられました。

  こうしたケースにおいても、その遺族は、7年間たたないと失踪宣告の申立ができないのでしょうか?

  この点、民法30条2項は、特別失踪という制度を設けています。

  特別失踪の制度は、たとえば、戦地にいたとか、沈没した船の中にいたとか、その他死亡の原因となるような危難に遭遇した者が、その危難が去った後1年間生死不明の場合には、失踪宣告の申立ができる制度です。

  この場合には、家庭裁判所によって失踪宣告が出されると、上記の通常の失踪宣告の場合と異なり、行方不明者は危難が去ったときに死亡したものとみなされます。

  この特別失踪の場合は、上記の通常の失踪の場合とは異なり、死亡した可能性が高いケースですので、その遺族などがより早く財産や身分関係の処理ができるように配慮されている制度ということができます。

5  申立の方法
  家庭裁判所に失踪宣告の申立書という書面を提出します。

  下記の家庭裁判所のホームページを見ますと、申立書の書式や、申立に必要な書類(戸籍謄本など)や費用などが書いてあります。費用は、印紙代や郵便切手、官報広告費など数千円程度です。
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_06/index.html

  なお、失踪宣告の申立を弁護士に依頼した場合は、上記実費の他に、弁護士費用として概ね10万円+消費税程度の費用がかかります。

  ただ、弁護士に依頼すれば、戸籍謄本の取り寄せから申立書の作成、申立後の裁判所とのやり取りまで一括してやってくれることが多いですので、ご自分で申立を行うのが難しいとか、面倒だと思われる方は、弁護士に依頼するのも良いかも知れません。


<編集後記>
  今日からいよいよ大型連休ですね。

  連休中は、食べ過ぎ、飲み過ぎに注意し、運動をさぼらず、油断して体重が増えないように気をつけたいと思います。