昨日は、横浜市の福祉事務所のケースワーカーの方々などの自主的勉強会に講師として呼ばれ、生活保護基準の引き下げ問題に関するお話しをしてきました。

 

 安倍内閣は、生活保護費を3年かけて現行の水準よりも850億円削減するという方針を掲げており、平成25年度予算案にも生活保護費削減が盛り込まれました。今回の削減は過去に例を見ないもので、減額対象は受給世帯の96%にのぼり、削減幅は最大で10%の削減になります。

 

 

 まず、このような大幅な生活保護費の削減は、現在の生活保護受給者に極めて大きな影響を与えます。というのは、現在の生活保護費は決して十分な水準ではなく、多くの生活保護受給者はギリギリの生活を送っています。現行の生活保護費では、食べることはできても、子どもの教育費や交際費などを捻出することができず、貧困の連鎖や社会生活の孤立化が問題となっています。

 

 

 要するに、現在の生活保護の基準は、いわば「生かさず殺さず」というレベルのもので、生活保護受給者はこの範囲内で何とか慎ましく生活しています。このような生活保護基準を、現行から最大で10%も削減することになれば、生活保護受給者の生活をさらに圧迫することになり、「健康で文化的な最低限度の生活」を保障した憲法25条に違反する状態になることは明らかです。

 

 

 よく、生活保護費が国や自治体の財政を圧迫しているとか、生活保護費の不正受給の問題を取り上げ、生活保護費削減の論拠とするような風潮が見られます。しかし、日本の生活保護費のGDPにおける割合は0.5%程度で、OECD加盟国平均の7分の1にすぎません。諸外国に比べて極端に低い生活保護費が財政を圧迫しているとはいえません。また、不正受給に関しても、不正受給の割合は保護費全体の0.4%程度で、これまでこの割合に大きな変化はありません。

 

 

 生活保護基準の引き下げのもう1つの大きな問題は、それが生活保護受給者以外の一般市民の生活にも大きな影響を及ぼすということです。具体的には、就学援助制度や国民健康保険料の減免制度、地方税の非課税基準など様々な制度が、その利用条件として生活保護基準を目安にしています。したがって、生活保護基準が切り下げられると、必然的にこうした制度にも影響が及び、それまでよりも利用条件や適用範囲が狭くなるため、今まで利用できていた人が利用できなくなってしまいます。

 

 

 このように、生活保護の引き下げは非常に大きな影響があり、強行された場合には、貧困と格差がますます拡大することは明らかです。何としても、このような引き下げの動きを阻止する必要があります。

 

 

 福祉事務所のケースワーカーの方々とは、普段生活保護申請の同行などで接する機会はあるものの、じっくりお話しをする機会はありませんでした。昨日は、こうしたケースワーカーの方々の現場でのそれぞれの想いなどをお聞きする機会がありました。とても貴重な機会で、私自身も大変勉強になりました。