マネー資本主義 第四回(金融工学夢と暴走の軌跡)
マネー資本主義
今回は金融工学についてです。
第二次世界大戦中に
原子爆弾を作る為、
米国中の頭脳を集めた「マンハッタン計画」
今回の金融危機で問題になった証券化商品も
世界中の頭脳がウォール街に集まり
新たな金融商品を開発した点は、
さながら現在の「マンハッタン計画」のようでした。
その背景には、
冷戦が終結し、米ロの優秀な科学者が職を求めていた事と、
ブラック・ショールズ・モデルの開発により
数学が金融商品の開発に直結する仕組みができたことです。
そんな科学者達が生み出した金融商品が、
不動産の証券化やCDSやCDOでした。
その根本思想は単純で、
「汚水を浄化する仕組み」と一緒です。
濁った水を沈殿させて
底に残った汚れをC、汚れが若干混じった水をB、
上澄みの綺麗な水をAとすると、
金融商品で、リスクの高い部分C、リスクの若干混じった部分をB,
リスクがほとんどないと思われる部分をAとし、
それぞれを金利差をつけリスク選好度によって売却する仕組みを構築した。
これは画期的な考えで、どんなにリスクの高い商品も分散して、
上澄みだけを抽出すれば、
AAAの商品が生み出せる「錬金術」の始まりだった。
しかし、ここには根本的な問題があって、
どの部分ならリスクが生じないかに対しては、
十分な考察が必要なのだが、
その検証が十分行われないままに
様々な商品が生み出されてしまった事だった。
ITバブル崩壊後、好景気と資産価格の上昇が続いた為、
投資家はリスクに対し鈍感になり、
金融工学によって生み出された商品を積極的に購入した。
ブラック・ショールズモデルを生み出したドリームチームが作った「LTCM」が
破綻したのは、1998年。
そのわずか10年後には更に大きな金融危機に見舞われるとは、
金融の世界は学習効果がないのか?
「LTCM」の破綻も、自分達はリスクを計量出来るとの過信が、
自らの破滅を生んだが、
今回もリスクを軽んじた側面が危機を生んだのは明らかだ。
後講釈的に言えば、
今回の金融危機は起こるべくして起こったと言えるのでは、
ないだろうか?
ただ、再び起こるであろう金融危機の際に、
うまく対処できるかどうかについては、
???である。
恐らく世界的な超金融緩和の現状から考えると、
危機からの脱出時には副作用として
大きなバブルが発生する可能性が大きい。
次のバブルを世界が(自分もね)うまく乗り切れるかどうかは、
定かではない。