フィル・チェンは昨年(2021年)の12月14日に75歳で癌により亡くなりました。

彼の代表作は?と問われれば、遥か彼方の1970年代後半の事ですが、やはりロッド・スチュワートが1978年にリリースしたアルバム「スーパースターはブロンドがお好き」(Blondes Have More Fun)の1曲目を飾った世界的な大ヒット曲「アイム・セクシー」。
ベーシストの端くれとしては彼が弾いたこのベースラインが最も記憶に残っています。

Rod Stewart - Da Ya Think I'm Sexy? (Official Video)(1978)

 

この圧倒的にシンプルなオクターブ奏法は、この曲の大ヒットに後押しされ世界中のベーシストの記憶に刻まれたと言っても過言ではありません。がしかし、シンプルこの上ない奏法は真似をしてみると弾きこなすのがかなり難しい。当時プロのベーシストならまだしも、我々アマチュアのベーシストにはすぐに弾きこなせる代物ではありませんでした ^^;;

「ンッタタ、ンッタタ、ンッタタ、ンッタタ...」
以降このベースラインに影響を受けたと思われる楽曲は多々現れました。

世界中で鳴り響いたこのオクターブ・ベースラインのテーストは、その後のディスコ系アレンジを始め多くのポップスやロックで取り入れられ、更に進化しながら世界中で鳴り続けました。

 

アメリカンハードロック、ロックンロールの王様ともいえるKISSのジーン・シモンズだって負けてはいませんでした。ギターの単音16分の連続音とのコンビネーションで「ンッタタ」のテーストを組み込んでます。ピック弾きですけど。
KISS - I Was Made For Lovin' You (1979)

 

Electric Light Orchestra - Shine A Little Love (1979)

 

日本でも例えば意外なところで、オフコースの清水仁さんがYes Noのイントロで

オフコース -Yes No(1981)

 

そして杏里のヒット曲 悲しみがとまらないのサビで青木智仁さんも弾いてます。彼はフィル・チェンのベースラインを参考にしたと、後に自白してました。(笑)

杏里 - 悲しみがとまらない(1983)

 

時は流れて1992年。

B'zのBAD COMMUNICATIONでも...楽曲の毛色は相当違い、重~いンッタタですが。

 

数十年たった2005年。

東京事変/恋は幻のサビで亀田誠治さんもこの流れのベースラインを取り入れて、オクターブ奏法でうねりながら跳ねてます。

 

遠い昔から世界中に数多くの優れたベーシストがいますが、一曲で世界中にこれだけの影響力を持った人はそうそう居ないと思います。

個人的にフィル・チェンのもう一つの代表作的な名演だと思う、JEFF BECKが1975年にリリースした「ブロウ・バイ・ブロウ」(Blow by Blow) での演奏があります。

また、別の機会に取り上げられればと思います。