妄想小説『チンダルレの咲く頃に』 4 | Another♡BIGBANG

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主にBIGBANGのメンバー、もしくは読み手を主人公とし、勝手に妄想小説をアップしてます☆
かな〜りの気まぐれ&スロー更新ですが、よろしければお付き合いくださいませ(*˙︶˙*)ノ゙

ー遅い
スンリはもう1時間以上もアパートの下でヨンシクを待ち続けていた。
天気は良くすっかり春の陽気で、風が気持ち良く吹き渡っている。そのおかげかカフェ『étoile』からランチタイムの良い香りが漂ってきて空っぽの胃を刺激した。
ーお腹空いてきた…
てっきりすぐに来るものと思っていたので急いでシャワーを浴びて髭を剃り、朝ごはんも食べずに出てきたのである。
第一ヨンシクが携帯のナビ機能など使えるはずもないし、本当に住所だけでここが分かるのかも不安だった。
「おーい、スンリ」
突然、『étoile』からジヨンが顔を覗かせた。結局スンリに予定ができてしまったので、週末は客も多いこともあり出勤することにしたのだ。
ジヨンに呼ばれて彼の前に来ると、テイクアウト用のボックスに入ったホットサンドを差し出してくれた。
「朝ご飯まだだったろ?ウビンさんから差し入れ」
店は通り側がガラス張りになっており、接客しながら様子を気にしていたため、まだ彼が祖父を待っている姿がジヨンにも見えていた。
作ってくれたのはウビンだが、事情を話してくれたのはジヨンだろう。2人の優しさに胸が熱くなる。
ググゥ〜
返事をする代わりにちょうどいいタイミングでお腹が鳴り、ジヨンは笑った。
「ありがとう、ヒョン…」
ホットサンドは温かいうちにありがたく頂くことにし、立ったまま頬張った。
「おじいさん、遅いね」
ジヨンが街の方を見て言う。
「うん、電話しても出ないし…」
「何かあったんじゃないといいけど。…あ、戻るね」
「うん!頑張って。あとウビンさんにもありがとうって」
ジヨンはそそくさと店内に戻りつつ、指で丸を作って答えた。その姿を見送り、スンリは腕時計に目を落とした。
ーあと30分待っても来なかったら駅のほうに行ってみようかな
離れて暮らす父親を心配してヒョンスクが携帯をもたせたのだが、使い方にまだ慣れないのだろう。このまま電話に出ないようならバスやタクシーの通る道を探した方が良いかもしれない。
そう思って通りの先を見たスンリの目に、杖をつきながらゆっくりと歩いてくる人影が見えた。
「じいちゃん!?」
それがヨンシクであることが分かると、スンリは慌てて通りを走り降りた。
「じいちゃんどうしたの!」
「歩いて来た」
「歩いて来たって…バスターミナルから?」
「違う。バスに乗ったらよく分からんバス停に着いたからそこから歩いて来た」
ー要は道に迷ったんじゃ…
と思ったが、そんなこと口に出しては言えない。
「電話してくれればよかったのに」
「こんくらい平気じゃ、えぇ運動になった」
スンリはヒョンスクの言葉を痛感していた。これだけ時間がかかったということはかなり歩いたんだろうに、とても病気とは思えない元気さである。
「じいちゃん、どうする?どこか行きたいとこある?」
「腹が減った」
「じゃあ、どっかお店に入る?」
「あそこになんかあるじゃろう、あそこでえぇ」
そう言ってヨンシクが杖で指したのは『étoile』だった。
「え…あそこはちょっと…」
店にはウビンもジヨンもいる。土曜日の午後でお客さんも多いし、カフェで祖父からの説教を受けるのはなんとなく気が引ける。
「もう少し離れたところにハンシクチプがあるからそこは?」
「わしはもう歩きとうない!」
怒ったように言い放ち、ヨンシクはずんずん歩みを進めた。
ーやっぱり疲れてるんじゃないか
スンリも仕方なく、後に続いた。