妄想小説『チンダルレの咲く頃に』 3 | Another♡BIGBANG

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「はぁ…」
電話を切った後、小さくため息をついたスンリの顔をジヨンは心配そうに覗き込んだ。
「大丈夫?」
ヒョンスクからの電話ということは、家族のことで何かあったのだろう。受け答えの内容から、どうやらスンリの祖父に関してのことらしいことは読み取れたものの、さすがに詳しいことは分からなかった。
「じいちゃんがうちに来るかも」
「ええ?スンリのおじいちゃんが?」
「うん」
突然だし驚くことではあるが、親戚の訪問だ。ジヨンとの関係で配慮すべき事情はあるのは分かるが、黙っていれば表面には分からないものだろう。スンリの反応には祖父が訪ねてくる以外に何か動揺する理由がありそうだった。
彼はジヨンに祖父の病気のことや行方不明騒ぎを起こしていたことなど一通りの経緯を説明し、そして最後に言った。
「うちのじいちゃん、めちゃくちゃ怖いんだ」
「めちゃくちゃ怖い…」
目の回る展開に呆気に取られていたジヨンは話の流れに対して急に湧いて出てきたような祖父の性格についての発言がすぐに頭に入って来ず、オウムのように繰り返した。
彼の祖父ヨンシクはとても厳格な性格だった。マナーなどにも厳しく、ヒョンスクたち姉妹が幼い時には時代が時代でもあり手が出ることも少なくなかったらしい。
さすがにスンリたち孫は叩かれたりしたことはないものの、祖父には甘えた記憶はなく、どちらかと言えば叱られながらいろんなことを教わってきた。
ナヨンとの婚姻話を解消した時、ヒョンスクは自分からヨンシクに話すと言った。スンリはどんな反応でも受け入れる覚悟ができていたため断ったが、ヒョンスクは頑として譲らなかった。その方が穏便に済むと考えたからだ。
結局最初はヒョンスクから話をして、最後にスンリにつなぐという話で落ち着いたものの、切り出すや否や憤慨して縁を断つと言い出し、スンリと話をするまでに至らなかった。そのヨンシクが突然、会いに来るという。
体のことは心配だし、直接話ができるようになったことは喜ばしいことではあるが、ヒョンスクの様子だとただ孫の顔が見たいというよりは自分に何かある前に一言言わずにはいられない、という方が正しいだろう。
「おじいさんは、いつ来られるかは分からないんだよね?」
「うん、ただ今日の夕方のバスで大邱に帰るように母さんが説得したらしいから、来るとしたら今日だと思う」
「じゃあ急いで支度しなきゃ」
「うん…」
しゅんとしてしまったスンリに微笑み、ジヨンはその頬に軽くキスをした。突然の祖父の訪問にナーバスになっているだけではなく、せっかくの2人の休日にゆっくり過ごせる時間がなくなったことを申し訳なく思ってくれているのが伝わってきたからだ。
それにナヨンとの件で関係が悪化していることも知らないので、『怖い』といって気を重くしているスンリが子どもみたいでかわいいと思った。
スンリが仕方なくベッドから降りると、再び電話が鳴った。知らない番号からだったため、すぐに誰からか予想がついて慌てて電話をとった。
「もしもし?」
「…」
「あれ?もしもし?」
てっきりヨンシクだと思ったが、返答がない。ただただサーっという静かな音が聞こえるのみである。
「もしもし?」
念のためもう一度尋ねると、ゴホンという咳払いののち、相手が答えた。
「わしじゃ」
「じいちゃん?」
「他に誰がおる」
スンリは相変わらずだな、と思った。特に今の状況ではヨンシクが怒っている可能性の方が高いため、仕方のない態度でもある。
「今バスターミナルにおる。今からお前の家に行くから」
「ターミナル?迎えに行こうか?」
「自分で行くからいい」
「あ、ちょっと!じいちゃん?」
何か言う間も無く、一方的に電話を切られてしまった。
「おじいちゃん?」
「うん。今からバスターミナルから来るって」
「バスターミナルからなら、タクシー使って30分くらいだね」
ジヨンとスンリは同時に時計を見た。
謝罪を考えていることからも、身だしなみの乱れた姿で会うことなど許されない。
スンリは急いで身支度を整え、出迎えのために外に出た。