一度は見たい、見ておかねば、と思っていた白川郷の合掌造り集落だが、その「向こう」に別の集落があることは出発直前になるまで知らなかった。
五箇山と呼ばれるその場所まで、車でもちょっとかかった。
道の標識に「世界遺産・・・」とか何とか、それらしき表示があったのだが、車のナビはまだ先を示していて通り過ぎてしまった。
でも確かに……
と気にかかって、1Kmほどを引き返すことにした。
それが正解。道の脇に駐車場があり、そこからエレベーターで谷を降りられる。そこが菅沼集落だった。
エレベーターを降りて、まず左手に進むと、あまり人の気配のしない廃村のような感じで合掌造りが並んでいた。
気配がない、と言うより、そもそも人は住んでいないのか。
しかし、正直に言うと、実はさっきまでの白川郷(荻町)にそんな風な雰囲気があるのではないかとずっと思っていた。
「ひっそり」の究極版というか、「静まりかえった」雰囲気を求めていたのですね、行く前までは。
ところが、白川郷(荻町)には「現に暮らしている所帯感」「大人しげではあるが生活感」のイメージを受けたのである。
車も街の中で見かけますしね。
いや、だからダメってことではないですけれども。
さて、菅沼集落の続き。
トンネルのような通路をくぐって右手に行くと、そこには廃村感はなく、生活の匂いを少しだけ漂わせる集落があった。
家の前には自転車や洗濯物が並んでおり、間違いなくここには暮らしがありますよね。きっと田舎の暮らし。
この雰囲気に満たされているのが菅沼集落だった。
ここからまたしばらく車で行った先にある相倉集落にも「行こう」と決めた。ナビは当初こちらを目的地に設定していたのです。
「だいたい同じようなものなんじゃない・・・?」というMクンの発言もあったのだが、「合掌造り集落を見たい」というのが旅の第一目的である自分としては「回避」は選択肢になかった。
到着した相倉集落には、菅沼をもう少し立派に整えたようなまとまり感があった。
初期のころの合掌造り↑は階が3階までなく低かった。
この↑「ひっそり感」が欲しかったのですね。3集落、すべてを観てきてよかった!
こちら相倉にも少ない数ではあるが外国人観光客がいて、松本や上高地、高山といった有名地以外の「知る人ぞ知る」ような「奥まった」場所にも、関心・興味のある人は訪れているのです。
こういう場所こそ遺していかなければいけませんね。
さあ、ここを堪能して、本日の宿泊地は富山。
距離もそう遠くはなく、ナビの選択は高速道を避けて一般道を行くことにした。
これがまた、カーブを曲がると田舎の風情たっぷりの家と田んぼと柿とお墓と煙と・・・
その度に「いいなあ、こういう所に住んでもいいなあ・・・と昔はかみさんに話しかけたもの」とMクン相手に話しかけてしまった。
実際には「私はいやよ」というかみさんの返事があったこともきっちり伝えた。
Mクン、聞くのは初めてではなかったはず。
片側1車線のまっすぐ伸びる長い道に、前も後ろも反対車線にも車の姿が全くない、という時間があったりして、
田舎道選択は、正しくのどかだった。
富山駅前↑。
市内電車の走る富山は思っていたより大都会だった。
富山といえば、亡くなった仕事仲間のKちゃんの地元だったな。
市内ではなく、彼の感じだったらもっとずっと田舎だったのではないかな。
田舎の純朴な好青年って感じだったものな、知り合った頃は。
そんなことが胸に湧いてきて、この日の夕食のビールは一杯余計に飲んでしまった。
また、そちらの世界でも逢ったら無駄話をしましょう。
さあ、明日は戸隠神社を昇ってから小布施、そして最終宿泊地・蕨温泉だ。
以下次号