第6室 2話 Prestigeの夜 | 音楽とアナログの魅力を掘り下げながら満喫しましょう

第6室 2話 Prestigeの夜

Prestigeの夜 ~なぜあのレーベルには、深夜の匂いがするのか~

 

深夜1時。

部屋の灯りを少し落とします。

 

コーヒーではありません、今夜は、少しだけバーボンが似合います。

棚から一枚のレコードを取り出します。

 

黄色いラベル。

Prestige。

 

静かに針を落とす、すると、その瞬間、部屋の空気が変わります。

 

Blue Noteのような緊張感ではありません、もっと肩の力が抜けた世界。

 

少しだけ危うく。

少しだけ人間臭い。

 

そんな音が流れてきます。

 

私は時々思うのです。「Prestigeには、夜の匂いがある。」と。

 

 

1950年代、ニュージャージー。

 

一人の若者が、小さなレコード会社を立ち上げました。

 

その名は、 ボブ・ワインストック。

まだ20代。

 

若く、無鉄砲で。しかし、ジャズを愛していました。

 

彼は、細かいことを気にしませんでした。

リハーサルもほどほど。

 

録音も短時間。

 

時には、数時間でアルバム一本を録り終えてしまうことさえありました。

しかし、不思議なことに、その「ゆるさ」が奇跡を生みます。

 

ミュージシャンたちは、Prestigeで自由でした。

まるで、深夜のジャムセッションのように。

 

そこには、こんな男たちがいました。

 

* マイルス・デイヴィス

* ソニー・ロリンズ

* ジョン・コルトレーン

* エリック・ドルフィー

* ハンク・モブレー

* スタン・ゲッツ

 

彼らはPrestigeで、「素顔の自分。」を残したのです。

 

 

Blue Noteが「最高の一枚」を目指したのなら。

Prestigeは、「今、この瞬間。」を刻みました。

 

だからでしょうか、Prestigeを聴いていると、演奏の隙間から、人の気配が聞こえてきます。

 

息遣い。

椅子の軋み。

 

少し走ってしまったテンポ、そして、演奏者たちの笑顔。

完璧ではありません。

 

しかし、人生もまた、完璧ではありません。

 

だから、Prestigeは心に沁みるのです。

私は、歳を重ねてからPrestigeが好きになりました。

 

若い頃はBlue Noteばかり追いかけていました。

 

Lexington   47West63rd  Earマーク。

 

しかし、人生の後半になると、少しずつ分かってくるのです。

 

「人は、完璧さより、温もりを求める。」と。

 

Prestigeは、まるで古い友人のようです。

何十年会わなくても。

 

久しぶりに会えば、昨日の続きのように話せる、そんな音楽です。

 

 Prestigeが教えてくれた七つのこと

 

1. 人生は、少し肩の力を抜いていい。

2. 完璧でなくても、人は感動する。

3. 本音は、深夜に顔を出す。

4. 自由は、時に奇跡を生む。

5. 音楽は、人間臭いほど美しい。

6. 良い友人は、一生の宝である。

7. 人生には、Prestigeが似合う夜がある。

 

 

Prestigeの名盤たち

 

 

* Miles Davis「Walkin'」

* Saxophone Colossus

 

* Tenor Madness

* Relaxin'

* Cookin'

* Workin'

* Steamin'

 

どれも、夜更けに聴くべき一枚です。

 

最後の一文 「Prestigeは、レコード会社ではない。」「深夜にだけ開く、大人たちの隠れ家なのである。」

 

 次回予告

 

 第3話 「ビル・エヴァンスとRiverside。」~なぜ、その音は人を静かにさせるのか~