「あいつは本当に……」
厄介に思って距離を置いていた奴が突然仕事場に訪ねて来た
「この野郎、俺が逃げ回っているから来や がったか」
そう言うとニヤリと笑いながら
「やっぱり!」
「俺のブログを読んで浅草にいると知りやがったな」
ブログを読んですぐに新幹線に乗ったという……
「相変わらずだな」
そして腹を割った単純明快な会話……
"生き方の違い"
なんて枠で考えたり、小面倒くさく考えたりせずに
「単純な男だ」
と俺は思ったし、向こうもそう感じただろう。
解り合えたとかそんなことでもなくそんなことを求めてもいない、顔を合わせさえすればそれですべて簡単だと解っている者同士が顔を合わせた。
ただそれだけのことだ。
「これでわだかまりがなくなったな」
と、握手をして気持ちよく見送った。
「しかしよくまた、ここまで来たもんだ」
その背中を見ながら俺が今度はニヤリと笑えてきた。
その顔を見せに来てくれたことを有り難く思うと正直に言う。
「俺も変わろうと思うんすよ」
「もうその歳だし、そのままいけよ」
するとまたニヤリと笑いながら
「これからっすよ」
憎めない奴とはこういう奴を言うのだろう。